まぁ、何とか翌日に疲れを持ち越さないくらいには休めて。
「うふふっ、ティナさん、昨日はとってもかわいかったです。思い出しただけで、もう…」
「う、うっさい! そんなこと、こんなとこで言わないでよね…忘れちゃいなさいっ」
「えぇ〜、忘れられるわけないですし、忘れたくありません。ティナさんは…忘れたいんですか?」
「そ、それは…もうっ、はやく教室行くわよっ」
 今日からは、同室になった彼女と一緒に登校…でも、そんなこと言い合っちゃってあたしはあの子を置いて少し早歩きで教室へ向かう。
 もうっ、大好きな人との幸せな記憶、あたしも忘れたいわけない…けど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいの。
 あんな会話して、他の人に聞かれでもしたら…って、アーニャってあたしのあんなとこまで見守ったりしてないわよ、ね…?
 うぅ、まずい、ひとまず席について落ち着こう。
 やっぱ早足で教室へ入り、そのままそばにある席へ着こうとした…んだけど。
「あっ、雪乃さん、おはようございます」「お待ちしておりましたわ」
 教室にいた他の子たちがあたしのまわりに集まってきちゃう?
「え、えと、おはよ…何か、用?」
「はい、雪乃さんと色々お話ししたくって」「昨日はすぐに帰られてしまいましたけれど、その分今日はお付き合いしてくださいましね」
 あたしと話したいとか、閃那と間違ったりしてない、これ?
「雪乃さん、ティナってお名前といい、お顔立ちも日本人離れしてますよね、かっこいいです」「雪乃、って苗字はあの雪乃先輩と同じですけれど、何か繋がりはあるんですか?」
「い、いや、ちょっと待っててば…!」
 一気に色々言われるものだから戸惑っちゃう…と。
「も、もう、皆さん、ティナさんから離れてくださいっ」
 そんな声を上げながら人ごみをかき分けあたしの隣へきたのは閃那。
「ティナさんがかっこよくって気になるのは解りますけど、彼女は私の恋人ですからもう少し遠慮してくださいっ」
「…って、せ、閃那っ? いきなり何言い出してるのよっ?」
 まさかたくさんの初対面に等しい人たちの前であんなこと言い出すとは思ってなくって驚いちゃう。
「わぁ、そうなのですか?」「お似合いのお二人です…素敵です」「九条先輩と雪乃先輩にも負けていないかも…姉妹揃って、いいものですわ」
 しかも、まわりの子たち、妙に盛り上がってきちゃってるし。
「ちょっ、せ、閃那、どういうつもりなのよ…」
「だって、ティナさんが…他の子に人気出るとは思ってましたけど、目の前で見せられると複雑なんです」
 いや、あたしなんてそんなことになるとは思えないけど…でも、これって、昨日のあたしと同じなのか。
 やきもちやいちゃう閃那…うん、確かにかわいいかも。
「しょ、しょうがないわね…でも、あたしはこれからも閃那と一緒にいるから、そんなことで不安になったりしないでよね?」
「ティナ…はいっ」
 素敵な笑顔になる彼女…瞬間、まわりから歓声が響く。
 げっ、しまった、こんなたくさんの人の前であたしは何してんのよ…は、恥ずかしい。


    (第7章・完/終章へ)

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