どのくらい、唇を重ね合わせてたのかしら。
「ティナさんのせいで…我慢できなくなっちゃいました」
 少し顔を離したあの子が、うっとりした表情でそんなこと言ってきた。
「な、何よ、あたしのせいだっていうの…?」
「はい、ティナさんがかわいいのがいけないんです」
「お、おかしなこと言わないで、そっちのほうがずっとかわいいのに…」
「ありがとうございます…でも、やっぱりティナさんのほうがかわいいですし、もっとかわいがらせてください」
 あの子、あたしを抱きしめたままベッドへ倒れ込んじゃう。
 これって、あれよね…つまり、そういうことよね?
「いいですよね、ティナさん…?」
「そう、ね…閃那も、あたしのこと好きって言って、それに呼び捨てにしてくれたら、いいわ」
 恥ずかしくてどきどきが収まらない…けど、それ以上に、愛しい彼女ともっと重なり合いたい、って気持ちのほうが強い。
「もちろん、私も大好きです…ティナ」
「せん、な…あ、んっ」
 大好きって、それに呼び捨てされたのも嬉しかったけど、同時に彼女があたしの頭にある耳を触ってきてびくってなっちゃう。
「やっぱり、ティナはお耳が弱いんですね」
「弱いって、何言って…んぁっ」
 この変な感じ、いつかも感じたことある気が…あっ、あの旅の夜のこと、あれは夢じゃなかったってことなのね。
 でも、閃那に触ってもらうの、嫌いじゃないかも…ううん、むしろ…。
「閃那、もっと…もっと、ちょうだい」
 だから、そんなこと言いながら、また唇を重ね合わせちゃったの。

 あたしと彼女、お互いにお互いを激しく求めあって。
 それが落ち着くと、寄り添いあって色んな話をした。
 彼女がこっちの世界へやってきてからどう過ごしてたのか、ってのも聞けたけど、ここの学校内にあるカフェテリアでアルバイトしたりしながら、何と野宿してたっていうの。
 力であったかくしたり、食事は買ってきたとかいうから、こっちへくる前のあたしの生活よりかは随分ましだけれど、それにしたって…!
「もう、これからはそんなことしないでよね。食事は…そうよ、夕食はお社行ってあたしやみんなと一緒に食べない? それとも、叡那さんやエリスさんが一緒だと気まずい?」
「いえ、若い叡那ままとエリスお母さん、それにねころさんを見るのも新鮮で楽しいですし、それにティナさんの家族なんですから、そうさせてもらいますね」
 何か呼びかた引っかかるわね…あたしに対してもさん付けに戻ってるけど、それはまぁいいか。
「閃那の両親としてのあのお二人か…どんな感じなのかしらね。その、一度あたしも挨拶に行ったほうがいい?」
「挨拶、って…あっ、娘さんをください、ってやつですか?」
「そ、そうよ、悪いっ? あ、あたしは閃那とこれからもずっと一緒にいるつもりだし、そういうのはちゃんとしとかなきゃ、って…!」
「いいえ、とっても嬉しいです。じゃあ、またいずれ…あのお二人の未来については、そのときまで楽しみにしててくださいね」
「そ、そうね、とりあえずは、一緒に学校生活送ってきましょ」
「はい…あ、もう嫉妬とかしないでくださいね、私はティナ一筋なんですから」
 今度は呼び捨てにされてどきっとしちゃう…もう、何なの、使い分けるつもり?
「べっ、別に、あたしはやきもちとか…!」
「猫耳そんなに揺らしたりして、本当でしょうか…」
 リボンほどかれちゃったから耳がはっきり解る状態になってるけど、だから猫じゃないってば。
「でも、そんなティナもやっぱりかわいいです…また我慢できなくなってきちゃいましたけど、いいですよね」
「いや、ちょっと待ちなさ…ん、んんっ!」
 明日も学校あるしそろそろ休まなきゃ…そう思ったのに、あたしの口は彼女の唇でふさがれて、そしてあたしはそれを受け入れちゃうの。


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