「…はぁ。やきもち、か…やいちゃってるのよね、きっと」
夜になって学校…学生寮の部屋へ戻ってきたけど、ついため息が出ちゃう。
明日からもあんな調子が続いたら、とか考えると…やっぱりやきもちやいちゃいそうで憂鬱になってくるの。
本当なら、あの子と同じ学校、それに同じクラスで嬉しいはずなのにね…。
「…気晴らしに、剣の稽古でもしようかしら」
毎朝の日課な剣の稽古、今朝ももちろんしたわけだけど、いかに学校が森みたいになってるとはいえ、力のことは知られないほうがいいから誰かに見られる可能性のある場所でするわけにはいかなくって、結局空の上でしたの。
夜空で稽古するのも悪くなさそうね…なんて考えてたら、部屋の扉がノックされた?
しかも、こっちが反応する間もなく鍵が解除されて扉を開かれちゃった。
「あっ、ティナさん、こんばんは」
「んなっ…せ、閃那さん? な、何の用よ?」
中へ入ってきて嬉しそうにしながら扉を閉じたのはあの子で…突然のことにちょっと戸惑っちゃう。
「何の用だなんてひどいです、もちろんティナさんに会いにきたんです」
「そ、そう、それはあたしも嬉しい…じゃなくって! あんた、部屋の鍵を開けてきたでしょ、どういうことよ?」
「あっ、私、ティナさんと同じ部屋になったんです。これからよろしくお願いしますね」
「…は? な、何よそれ、そんなの聞いてないんだけど」
「はい、かなり急なことでしたから」
何しろ学校に入るって決まったこと自体がつい先日、ってことで昨日はその手続きが間に合わず、今日こうして一人部屋になってたあたしのとこへくることが決まったっていうの。
「ティナさんと一緒のお部屋だなんて、嬉しいです」
「そ、そう…」
あたしもそうなったらいいな、とか思ったりしたけど、ちょっと急すぎでしょ…!
「クラスまでティナさんと同じになれましたし、本当に幸せです」
「そ、そっか…」
まっすぐ見つめられながらあんなこと堂々と言われると恥ずかしくなってくるわ…。
「でも、今日は放課後気がついたらもうティナさんがいなくて残念でした…。せっかく、お昼をご一緒したりしたかったのに」
「そ、そう…でも、閃那さんはずいぶん人気あるみたいだし、その人たちと一緒に…とかはダメだったの?」
あぁもう、あたしは何を言ってるんだろう…。
「ぶぅ、あの子たちは、私のこと叡那ままの娘…じゃなくて妹としてしか見てないと思いますよ。そんなことで特別扱いされても…」
叡那さんのこと、そんな風に呼ぶのね…。
それはそうと、彼女のこの反応、もしかすると元の時代でも似た思いをしてるのかもしれない…先日、友達について触れたときも微妙な反応だったし。
「そうかしらね…閃那さんと叡那さんの関係知る前から気になってたって言ってた人もいたし、やっぱりあんた自身が気にされてる気がするけどね」
「むぅ、私は他の子なんて別にどうでもよくって、ティナさんといたいだけなのに、どうしてそんなこと言うんです…」
しゅんとしかけた彼女だけど、そこまで言ったところではっとした表情を見せる。
「あっ、もしかしてティナさん、嫉妬ですか?」
「…んなっ! べっ、別に、そんなこと…!」
図星を突かれて、でも認めるのが恥ずかしくって顔を背けちゃう。
「そんなティナさんもかわいいです…けど、せっかく二人きりなんです、もっと素直になってください」
「何よ、あたしは十分素直だってば…!」
「本当ですか? だったらこっちを見てください」
顔を向けると、あの子はあたしのすぐ目の前にまできちゃってた。
「ティナさん…私のこと、好きですか?」
で、間近で見つめてきながらそんなことたずねてくる。
「そ、それは…こ、この前言ったでしょっ?」
「何度でもティナさんの口から聞きたいんです…ダメ、ですか?」
「ダ、ダメじゃないけど…!」
ちょっ、近いってば…思わずゆっくり後ずさっちゃうけど、あの子はその分だけ近づいてきちゃう。
「じゃあ、聞かせてください」
間近に迫られて色んな気持ちが入り混じってどきどきが収まらないけど、あたしの気持ちは…やっぱり、そうだから。
「す…好きよ、閃那」
まっすぐ見つめ返して言葉をかける。
「わっ…ティ、ティナ、さん…!」
って、あの子の顔が真っ赤になっちゃった!
「な、何よ、どうしたの?」
「そんな、好きって言われただけで十分すごいのに、さらに呼び捨てにまでされたら…!」
「されたら、どうなるって…んっ!」
今の関係なら呼び捨てでいいわよね、って思ったわけだけど…あたしは言葉を続けることができなかったの。
だって、あの子に抱き寄せられたかと思ったら、そのまま彼女の唇があたしの唇に重なってきたから…!
えっ、これって…あたし、口づけされた…?
「んっ、ティナ、さん…んんっ」
「せ、せん…んっ」
しかも、あの子はあたしの口へ舌まで入れてきちゃう…!
いや、お互い想い合ってるんだし、おかしくはないけど、いきなりすぎて…ううん、でも、これってとっても気持ちよくって、それに心が満たされてく…。
だから、あたしも抱きしめ返して、それに彼女と舌を絡めあっちゃう。
あたしの、ファーストキス…こんなに、幸せな気持ちになるなんて。
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