翌日、学校の中心部にある講堂でいよいよ入学式。
 あたし、それに閃那さんやエリスさんも、いつも学校行くときに叡那さんとねころ姉さんが着てたのと同じ制服を着てそこへ集まる。
 式典は身が引き締まるけど、閃那さんのことが気になって…あぁもうっ、もっとしっかりしなきゃ。
 それが終わると、これから勉強をすることになる教室って場所へ向かうことになるけど、同じ学年の生徒全員が同じ場所で学ぶわけじゃなくって、いくつかのクラスに分けられちゃう。
 木造でちょっと古さを感じさせる校舎って建物、その一階にある指定された教室へ行くと、そのクラス人数分の机と椅子が並べられてて…あたしの席は、一番後ろかつ端っこ。
 エリスさんは別のクラスになっちゃったみたいで姿がないけど…
「はじめまして、九条閃那です。よろしくお願いします」
 一人ずつ自己紹介をするってなった中でそんな声が耳に届く様に、同じクラスにあの子もいた…いや、入学式のときにもいたけど、本当に入れたのね…。
 それにしても、こうやって大人数で集まって、って経験が今までないから新鮮なのと同時にちょっと緊張する。
「えと、雪乃ティナです…よろしく」
 自分の番が回ってくるとみんなの視線が集まってきて、はやく終わらせたくってそんなそっけない挨拶になっちゃった。

 今日は初日ってこともあって、自己紹介と短い話くらいで放課後になる。
 少し席の離れた閃那さんに声でもかけようかしらね、って思ったんだけど…
「あの、九条さんってもしかすると九条先輩の…妹さん、とかですか?」「お名前も似てらっしゃいますし、雰囲気もどことなく…」
 教室の中ほどに席のある彼女はそんな声をかけられながらたちまち他の子たちに囲まれちゃった。
「えっと…は、はい、そう、なりますね」
「わぁ、やっぱり」「あの九条先輩の妹さまがクラスにきてくださるなんて、光栄です」
 どうも叡那さんは学校ではかなりの有名人、人気者っぽいわね…かなりきれいな人だし、解んなくはないけど。
「そういえば、九条さんって最近カフェテリアで働いていらっしゃいませんでした?」「そうです、お近づきになれたらって思っていたんですけど、同じクラスにいらっしゃるなんて…」
「えーと、ありがとうございます…」
 あの子を中心に会話はずいぶん盛り上がってて…何だろ、見てられない。
「あの、雪乃さんってもしかして…」
「…何よ、あたしのことはほっといて」
 だから、隣の席の子が声をかけてきても、そう突っぱねて教室を後にしちゃったの。

「そっか、あの子…閃那、に声かけられなかったのね。叡那は人気あるから、その妹ってなるとね…しょうがないのかもね」
 お昼、学食を後にしお社へやってきたあたしは装束に着替えて境内の掃除をはじめるんだけど、同じく入学式だったエリスさんと学校での話をして、そんなこと言われた。
「本当は私…は置いといて、叡那の娘、だものね。性格も叡那に似たら…あんた、苦労するかもね」
 エリスさん、片想いの人と別の世界では結ばれて子供まで、ってことについては吹っ切れたみたい?
「苦労…って、どういうこと?」
 閃那さん、第一印象こそ叡那さんっぽくも感じられたけど、その後はその印象もなくなって、外見に面影あること以外似てるって感じしないのよね…。
「叡那ってまわりから人気あるとか、そういうのに鈍感っていうか、無頓着だから…それでいて魅力的でやさしいし。あの子も叡那とはタイプ違うけど人気出ておかしくないし、ティナは今どころじゃないやきもちやくかもね」
「…は? あたしはやきもちなんてやいてないってば!」
「どうかしらね〜。でも、ティナもねころさんの妹、って知れたらどうなるのかしら…」
 他人事みたいに…いや、実際他人事なわけだけど、楽しそうに笑われちゃった。


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