やっぱり島もほとんどない大海原の上空を飛びながら、あたしは閃那さんへアーニャのことを話す。
 あたしが今の時代へくる前のことはさっき…っていってももうずいぶん前のことに感じられちゃうけど、ともかく海の中へ入る前に話してて、ただアーニャのことを詳しく話したってわけじゃなかったものね。
「アーニャさん、素敵なお姫さまだったんですねぇ」
「ま、それはあたしも否定しないわ。あたしが国を出た後のことは解んないけど、でも…再会できた、大きくなった彼女は、本当にそう言っていい雰囲気感じたし」
 話してると切ない気持ちになる…かと思ったんだけど、さっきしっかり会って話せたからか、つらくなったりはしなくてすんだの。
「アーニャさんとティナさんなら、お姫さまと騎士、って雰囲気でお似合いでしたよね」
「…は? な、何よ、それは…そりゃ、あたしは彼女を守るって約束はしたけども」
 あ、今ちょっと胸が痛んだかも。
「それに較べて私はこんなですし…ティナさんと一緒にいるの、アーニャさんじゃなくて私なんかで本当にいいんでしょうか…」
 何を言い出すのかと思ったら…胸の痛みとは別の感情がわいてきちゃう。
「そんなこと言うなら、閃那さんこそ…あたしなんかでよかったの、って思うんだけど」
「え…えぇっ、どうしてそうなるんですかっ? ティナさんのこと大好きで大好きでしょうがないんですから、いいに決まってますっ」
「そ、そっか…な、なら、あたしだって、その、閃那さんのこと、そう思ってるんだから、あんなこと言わないでよね?」
「は、はい…えへへっ、ありがとうございます」
「べっ、別に、お礼言われることじゃ…!」
 もうっ、恥ずかしい…!
「って、ティナさん、落ち着いてくださいっ」
 と、空中でちょっとふらついちゃって、そんな声かけられちゃった。
 いや、今のは閃那さんの反応に慌てて、ってのも確かにないこともなかったけども…。
「あぁ、ごめん、ちょっと疲れてるみたい。今日は色々あったから…」
 特にあの化け物とは、力を全て使い切る覚悟で戦ったものね…。
「えっ、そ、それは大変ですっ。そういえばもう結構長い時間飛んでる気もしますし、今日はもう休みましょう!」
 あぁ、そっか、東から西へ移動し続けてるから日の長さじゃ時間が解んなくて感覚が狂っちゃってるのか。
「あっ、ほら、あそこに小島がありますから、そこに降りましょう」
 促されるままに、海原の中にぽつんとある小さな島に降りることになった。


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