いくら外から人がこないだろうってことで元いた世界の服装になったからっていって、お社自体に誰もいないわけじゃないんだし、そもそもそんな場所であんなことするわけにもいかないから何とか閃那を落ち着けて。
「全く、この格好は別にあんたを誘惑したりするためにしてるんじゃないんだからね…そもそもあたしにとっては普通の服装なわけだし」
 一度紐をほどいて社殿前の階段に戻って、そこに座りながらため息ついちゃう。
「そうですね、ティナの存在そのものが誘惑に等しいですから、どんな格好してても同じかもしれません…そんなティナと密着するんですから、我慢するというのが無理な相談なんです!」
 まるで開き直ったかの様なこと言ってきたりして…これ、閃那が二人三脚あそこまで張り切ってたのってやっぱこういう思惑でって考えてよさそう、よね。 「いや、そこは我慢しなさいよね…」
「あぅ〜、ティナさんがいじめます…そういうティナさんは、私と密着してどきどきしたり我慢できなくなったりしないんですか?」
 隣に座ったあの子にじっと見つめられちゃう。
「そ、それは…大丈夫、よ」
「そうですよね、ティナさんと較べて私は全然魅力ないですからそうなりますよね…すんすん」
 泣き真似されちゃったりして、そういうとこかわいくてそれこそ我慢できなくなっちゃいそうだけど、そういうわけにはいかない。
「もうっ、そういうことじゃなくって、練習は練習としてちゃんとしなさいって言ってるだけでしょっ?」
「は、はひっ!」
「特にさっきの転倒といい、案外難しいってことが解ったんだから、本番までに形になる様にしとかないと…でないと、えっと、あたしと閃那の息が合ってないってみんなに思われるわよ? それでもいいの?」
 ちょっと恥ずかしい表現になっちゃったけど、でもあの子と一緒にすることならしっかりしときたいものね。
「わわっ、そんなのダメです! そうですよね、頑張りましょう!」
「解ったらいいのよ。それに、その…ふ、二人で色々するのは、他の時間にしてあげるから…」
「ティナ…えへへっ、大好きですっ」
 こっちだって閃那と色々するのが嫌なわけじゃないから何とか恥ずかしさを抑えつつ声をかけると、あの子は嬉しそうに抱きついてきちゃった。
「も、もう、と、とにかく、今は練習なんだからねっ?」
「えへへっ、はい、ティナさん」
 本当幸せそうな顔しちゃって、そんなの見てるとこっちもそれこそ我慢できなくなりそうになっちゃう。
「…相変わらず仲いいけど、場所考えてほどほどにしておきなさいよ?」
 って、突然少し離れたところからそんな声がかかってきちゃう。
「んなっ…え、えと、そ、そうね」「は、はひっ、こここれはただ体育祭の練習してるだけで…!」
「いいわよ別に、解ってるから。ふぅん、二人で二人三脚の競技に出るのね、いいんじゃない?」
 突然のことに慌ててしまうあたしたちを家の前でちょっと呆れた様子で見てくるのはエリスさん。
「他の競技なら適当に済ませればいいと思うけど二人三脚はあんたたちみたいな子にとってはちゃんとしたいものでしょうしね、でも今日はもう夕食の時間だからそこまでにしておきなさい?」
 彼女はそう伝えてくるとさっさと家の中に戻っていった。
「…ま、今日はこのくらいにしておこうかしらね」
「そ、そうですね、また明日からよろしくお願いします」
 閃那もやる気はあるみたいだし、体育祭まで日はあるから毎日少しずつやってけばいいわよね。


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