そういうわけで、お互い力を使って服装を変えて。
「わぁ、やっぱりとってもかっこいいですねぇ。ゲームでも極力再現できる様に頑張ってますけど、でもやっぱり実物には及びません」
 例によってあの子はあたしのことをまじまじと観察するかの様に見てくるものだからちょっと落ち着かない。
 ちなみに、彼女の言ってるゲームっていうのは、主人公の外見とかを自分の好みに設定できるってもので…まぁ、つまり、彼女はそこであたしのこと再現してるってわけで、それも恥ずかしい気がしちゃうわけだけど、そのくらいは好きにさせとくべきなのかしらね。
「こうやって見ると、ティナさんはやっぱりお姫さまを護る騎士さんですねぇ…うんうん、画になります」
「べ、別に、そういうの意識してこういう格好になったわけじゃないんだけど…そもそも、今の格好ってあたしが決めたものじゃないし」
 どういうことかっていうと、今の格好ってのは叡那さんとエリスさんが用意してくれた宝玉にあたしの力を込めることで力が増幅された状態、っていうのかしら…とにかくそういうことしたとき勝手に変化するものなの。
「あ、それってその人に最適、一番よく似合ってかつ実用的な格好になるってものですから、やっぱりそれがティナさんのイメージぴったりってことなんですよ」
「ふ、ふぅん、そうなの…」
 まぁ、あたし自身も悪くはないって感じてるから、いいんだけども。
「今の格好のティナさんと一緒に冒険とかして、敵とかから護ってもらいたいものですねぇ」
「な、何言ってんのよ、そんな物騒なのはこの前のことくらいで十分でしょ」
「それはそうなんですけど…」
 残念そうにされたりして…そういうの抑えるってことで、ゲームであたしのこと再現したりしてるってのもありそう。
「…ま、まぁ、何かもしものときがあったら、そのときはあたしが護ってみせるから、安心しなさいよね」
「わぁ…はい、ありがとうございますっ」
 で、一転してものすごく嬉しそうにされたりして、大げさなんだから。
 大切な彼女を絶対護ってみせる、これはもちろんこころの底から思ってること…なんだけど。
「…でも、閃那ならあたしが護ったりしなくってもいい気がするわね」
 思わず口に出ちゃった言葉、でもこれも確かに感じてること。
「えぇ〜っ、どうしてそんな酷いこと言うんです? やっぱりお姫さまじゃないと護ってくれないんですね…」
 案の定しゅんとされちゃって、彼女の言葉も相まってこっちも胸が痛くなった…けど。
「そんなわけないでしょ。ただ、ね…閃那って強いじゃない、それこそあたしよりってくらいに。だから、あたしが何かしなくっても自分で対処できるでしょ、って」
「えぇ〜っ、そんなことないです、ティナさんがいないとダメです」
 あんなこと言う彼女だけど、その実力はあのときの戦いで見てるし、さらにこの前実際に手合わせもしたものね。
「…ま、もしも何かあったときは、二人一緒に乗り切りましょ、ってことよ。それじゃ不満?」
「ティナさんと一緒に、力を合わせて…それはそれでとってもいいです。私たちは、ずっと一緒ですものねっ」
 あたしと閃那の二人なら、何だって乗り越えていける気がする…もちろん、何もない、今みたいな日々が続いてくのが一番なわけだけども。
 とにかく、彼女も納得、満足したみたいで、それはよかったんだけど…。
「…ティナさん、どうしました? こっちをじっと見たりして…照れちゃいます」
 こっちの視線に気づいたあの子、わざとらしく身体をくねらせたりする。
「ん、いや…閃那ってあたしのことばっか色々言ってくるけど、そんなこと言う閃那自身がかっこいいわよね、って思って」
「…ふぇ?」
 あ、動きが止まった…っていうより固まっちゃった。
「も、もうっ、ティナさんがそんな冗談言うなんて、らしくないですよっ」
 と思ったら顔を赤くして慌てふためかれちゃったりして…かわいいわね。
「いや、冗談じゃないんだけど。その格好で大きな剣持ってる閃那って、画になってると思うわよ」
 彼女もまた力を使う際に服装を変化させてるわけだけど、あたしのが白を基調にしてるのに対し彼女は黒になってたりして…ん、やっぱ似合ってるって感じる。
「うぅ〜、恥ずかしいですって…嬉しいですけども…!」
「全く…色んな格好させられてあんたにそんなあ目で見られてるあたしの気持ち、少しは解った?」
「ティナさんは本当に素敵でかっこいいですから見とれるのもしょうがないんですけども…わ、解りました〜」
 ま、かくいうあたしも、閃那があたしに色んな格好させてくる気持ちが、ちょっとは解ったかもね。
「…うぅ、ティナさんにコスプレしてもらうの、今後は控えたほうがいいですか?」
「別に、ほどほどにならいいわよ」
 だから、しゅんとしちゃう彼女にそう言ってあげる。
「わぁ…ティナ、大好きですっ」
「ちょっ…もう、しょうがないんだから」
 そんなに嬉しかったのか抱きついてきちゃったりして、本当、かわいいわね。


    (第3章・完/第4章へ)

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