「…で、結局こうなるってわけね」
 後日、部屋へ戻ってきたところであの子があたしに着てもらいたい、って服を渡してきたからそれを着てあげたんだけど、そう呟いちゃったりして。
「でもティナさん、ちゃんと着てくれたじゃないですか」
「まぁ、こんなことくらいで閃那が喜ぶんなら別にいいか、って」
「えへへ、やさしいですね、ティナは」
「べ、別にそんなんじゃ…」
 あの子とそんなやり取りしてるあたしが着たのは、言うまでもなくあのお店であの子が着てたのと同じデザインなもの。
「うんうん、やっぱりとっても素敵です、お店から借りてきてよかったです」
「全く、わざわざそんなことまでして…そんなに、あたしがこの服着てるとこ見たかったの?」
「はい、それはもう…ものすごく」
 あの子は満足げにそう答えてきながらこっちをじっと観察するかの様に見つめてきて、さらにそんな様子のままあたしのまわりを一回りしたりして、こうもっじっと見られ続けるとさすがに恥ずかしくなってくるわね…。
「ツインテールティナさんもいいですけど、やっぱり今のストレートなティナさんのほうがもっといいですね。猫耳も際立ちますし」
 こうして他の人に見られる心配のない部屋の中でとかは髪をといてるわけだけど、今の時代にはもう基本的にはこういうのある人は存在しないっていう頭の耳に視線集中してきてるのが解って何ともむずがゆい。
「でも、今みたいに私だけが猫耳ティナさんを独り占めしてるって思うとそれはそれで…うんうん、いいです」
「な、何言ってんのよ、家でもこうしてるんだからねころ姉さんたちだって見てるでしょ」
「むぅ、それはそうですけど…でも、こんなにじっくり堪能するのは私だけですよね。あぁ、やっぱりいいですねぇ」
「…も、もうそろそろいいでしょ」
 さすがに恥ずかしさがだいぶ勝ってきた。
「えぇ〜っ、まだまだ物足りません。ティナさん本当に素敵なんですから何にも恥ずかしがったりすることなんて…あ、恥ずかしがるティナさんもかわいいんですけどね」
 全く、人の気も知らないで好き勝手言って…なんて考えるけど、ふとお昼のこと思い出した。
 だから閃那の気持ちも解んなくはないわけだけど、ならあたしだって…どうしたものかしらね。
「あれっ、ティナさん、どうしました?」
「ん、いや…だから、もうこの格好はいいでしょ?」
「いえいえ、まだまだ気持ちが収まりません、時間もありますし…じゃあ、その服はもういいですからあと一回何か目の保養になるもの着てもらえませんか? あ、どんな格好でも、むしろいつものティナさんでも十分目の保養になってますけどねっ」
 本当、相変わらず大げさなんだから…でも、これはかえっていい機会かもしれない。
「はぁ、まぁいいけど、何を着ればいいの?」
「そうですね、また着替えてもらったりするのも面倒かけちゃいますし、あれにしましょう…魔法少女ティナさんのフルパワーバージョン。コスプレじゃないからこそより似合っててかっこいいですし、それにあれなら魔法の力でさっと変身できますよね」
「何言って…まぁ解るけど、でも別にかっこいいとかそんなことはないわよ」
 彼女の言ってることがだいぶ理解できる様になってきたんだけど、これっていいことなのかしらね。
「そんなことないです、それじゃさっそくお願いします」
「…待って。あたしだけ、ってのもあれだから、閃那も力を本気で使うときの格好になりなさいよね」
「え、えっ、私も、ですか? でも、私がそんな格好になってもしょうがないと思うんですけど…」
 あたしの言葉がずいぶん意外だったみたいで戸惑われた。
「しょうがないか決めるのはこっちだから。それとも、あたしがあの格好するのはしょうがないと思うからやめとく?」
「わっ、いえ、そんな、解りました、私もしますからお願いします!」
 そこまで言うほど見たいのかしらね、って苦笑しそうになっちゃう。


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