そんなこと話したりしてるうちに食事も終わって。
「この格好も久しぶりです…ティナさん、どうですか? 似合ってますか?」
着替えるために一度お店の奥へ行った閃那、あたしのところへ戻ってくるなりそんなこと言ってきた。
「ん、そ、そうね、似合ってるんじゃない? 悪くないと、思うけど?」
「ありがとうございます…えへへっ」
照れた様子な彼女の今の服装はこのお店で働く際の制服で、ねころ姉さんの普段着…メイドっていうんだっけ、それにちょっと似た感じのもの。
悪くない、って答えたわけだけど実際のところはとってもかわいいって感じてたりする…ああやって照れられたりすると余計にね。
…あぁ、閃那があたしへ色んな格好させてくる気持ち、ちょっと解っちゃった気がする。
「…ティナさん? どうしました?」
あ、いけない、つい見とれて…いやいや、そういうわけじゃ…!
「べ、別に何でも…そ、それより、今からアルバイトってわけね、まぁ無理のない程度に頑張りなさいよね」
「はい、ありがとうございます。さっきも言いましたけど、結構楽しくやってるので大丈夫です…お金も必要なので頑張りますね」
張り切る彼女も微笑ましい…んだけど。
「お金、って叡那さんから毎月もらってるけど、それじゃ足りないの?」
あたしたちはそういう感じでお金を受け取ってたりする…家族だからってことで、閃那もこの世界じゃ妹扱いだものね。
「まぁ…そうですね。色々買いたいものが多いですから」
「ん…あぁ、まぁ、そっか」
言われて部屋の様子とか思い出すけど、彼女って本当色々買ってるものね…何にも買ってない気のするあたしとは対照的ともいえる。
「ティナさんはお社のお仕事してますからいいですけど、私は何にもしてませんから、これ以上叡那ま…こほん、姉さんに甘えるのもよくないですし」
そんなの気にしなくても、と言いそうになるし叡那さんもそう思ってそうだけど、たあだあたしが閃那の立場だったら絶対に同じこと思っちゃうか。
「ま、あんたの好きにしたらいいんじゃない? でも、まぁ、もしも何かあったりしたら、そのときは遠慮しないであたしに言いなさいよね」
そろそろ立ち去ろうかと席を立ちながらそう声をかける…と。
「わぁ…はい、ありがとうございます、ティナ、大好きですっ」
「んなっ、ちょっ?」
あの子、あんな声上げながらあたしへ抱きついてきちゃう。
しかも、あたしたちがきたときとは違ってお店には何人かのお客さんがきてて、こっち見て歓声あげてきちゃうし…もうっ。
「ちょっと、こんなとこで、落ち着きなさいよねっ?」
「はぅ、ごめんなさい、嬉しさのあまり、つい」
身体を離しながら微笑む彼女…かわいいけど、あたしは大したこと言ってないってのに大げさなんだから、全く。
「もう他にお客さんきてたりするんだから、気をつけなさいよね」
「でも、こちらとしては、お二人がいちゃいちゃしてくれているほうが、目の保養になっていいのだけれども」
「…へ?」
意外なこと言われて戸惑っちゃうけど、そんなこと言ってきたのはこっちへ歩み寄ってきてた店長さんだった。
「閃那さんお一人でも画になるけど、ティナさんが一緒だとさらにいいわね…いっそティナさんもここで閃那さんと一緒に働いてみたらどう?」
「へ? え、えーと…え、遠慮しておきます」
一瞬それも悪くないかも、って感じた気もするけど気のせいよね…あの子がちょっと残念そうにしてるけど、まぁ気のせいってことで。
「うーん、残念…だけど、閃那さんだけでも美亜さん以来なまさに看板娘になっているし、贅沢は言えないわね。ではティナさん、またいつでもきてちょうだいね」
店長さんはそんなこと言ってこの場を離れてく。
「美亜さん以来だなんて、畏れ多いですけど嬉しいです」
で、残された閃那はといえばそんなこと呟いてた。
「誰よ、それは…知ってる人なの?」
「あっ、えっとですね、美亜さんはあの藤枝美紗先生のお姉さんです。今はもうここを卒業してて、すみれさんがアルバイトしてる喫茶店の店長代理をしているはずです…あぁ、やっぱりこの前水着を買いにいったときに行ってみればよかったです」
よく解んないけど面識はない、ってことなのかしらね。
「あっ、それでですね、さっきの店長さんも提案してましたけど、ティナさんもここで働いてみたりしませんか? ティナさんのウェイトレス姿、見てみたいです」
「…は? そんな理由でとか、嫌なんだけど…お金にも困ってないし。まぁ、閃那が困ってるっていうなら、あたしも働いてお金あげてもいいけど」
「わっ、そ、そこまでしてもらうわけにはいきません! ウェイトレス姿のティナさんについては、何とかなりますし」
何だろ、ちょっと嫌な予感がするんだけど、これって…。
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