夏休み明け初日な今日は始業式とホームルームだけ。
 閃那がものすごい勢いで終わらせた宿題も無事に提出して、これでもう完全に夏休みが終わったってとこかしらね。
 午前中で放課後を迎えて、朝よりさらに暑くなっちゃった外を歩いてあたしたちが向かうのは、学校の敷地内にあるとある建物。
「いらっしゃいませ…あら、閃那さん、お久しぶり。今日は恋人さんも同伴なのね」
 落ち着いた雰囲気なそこへ入ると、ねころ姉さんの普段着にちょっと似た服を着た女の人に出迎えられたけど、恋人って…い、いや、間違ってないしいいけども…!
「店長さん、お久しぶりです。今日からまたよろしくお願いします」
 閃那がそう挨拶する通り、ここはカフェテリアっていう軽い食事とかするお店で、その人はここの店長を務めてる人。
「それじゃティナさん、お昼ごはんを食べてきましょう」
「ん、あんたのアルバイトはその後からってことね」
 まだ誰も他にお客さんのいない中で席につかせてもらうけど、閃那は以前…あたしたちが学校へ入学数る前からここでアルバイトってやつとして働いてる。
 夏休みの間はここもお休みだったわけだけど、今日からまた開くってことで彼女も働くことに…と、その前にここでお昼ごはんを取るってことで、あたしも一緒にってなったわけ。
「にしても、毎日放課後はここでアルバイトしてるわけよね、閃那ってば…大変じゃない?」
 出された食事を取りつつ、ふと改めて思ったことを言ってみた。
「そんなこと言って、ティナさんだって毎日お社のお仕事してるじゃないですか。それとそう変わらないと思いますよ?」
「そうかしらね、あたしの場合本当に手伝い程度だし、全然そんなことないと思うけど。こっちの方が全然忙しいでしょ」
「う〜ん、それはまぁ…あっ、ティナさん、よく私がこんなめんどくさそうなこと続けられてるわね、とか思ったんでしょ?」
「…へ? そ、そんなことないってば」
 ちょっと言葉を詰まらせちゃう…いや、勉強とかめんどくさがってるとこ見てるから、そう思わないこともなかったりするけども…。
「いいですいいです、ティナさんの私へのイメージってめんどくさがり、ってなってそうですもん…あ、里緒菜さんと同じになりますしそれはそれでありかも」
「そ、そんなことないってば…」
 うん、ほんの少しだけ、そう感じてるくらいだし。
「でも、本当にそんな大変じゃないんですよ? 店長さんもお客さんも皆さんいい人ばかりですし、そんな人たちと接するのは結構楽しいです」
「ふぅん、そっか」
 何ていうか、教室での様子といい、ちょっと意外よね。
「わっ、何です、ティナさんったら、そんなやさしいまなざしで見つめてきて…照れちゃいます」
 そ、そんな目向けてたかしらね…。
「いや、うーん、閃那がみんなと仲良くできててよかった、とか思ってね。だってあんた、元いた時代じゃ友達いないとか何とか言ってたけど…うん、今の様子見てるとちょっとそんなの想像できないかしらね」
 あっちの時代だと叡那さんの娘ってことで特別視されてるとこもあって、とか言ってたけど、それは妹ってことになってる今だってそう条件変わんないはずだものね。
「それは…きっとティナさんのおかげです」
「…へ、あたし? でも、あたしは何にもしてないけど」
「そんなことないです、私と一緒にいて、恋人にまでなってくれて…これ以上のことはないです。そんなティナさんが支えになってくださっているから、私も前より余裕ができて積極的になれたりしてるんだと思います」
「そ、そっか」
 あたしの存在が閃那にとっていい方向へ働いてるっていうなら…うん、とっても嬉しい。
「本当にありがとうございます、ティナ」
「べ、別に、だからあたしは何にもしてないってば…!」
 とはいえ、やっぱり眩しいくらいの微笑み向けられてまっすぐな言葉かけられると照れくさくなっちゃう。


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