久しぶりとなる学校の校舎、そして教室へ入るとエアコンがかかってるからひとまず暑さからは解放されて。
「あっ、閃那さま、ティナさま、おはようございます」「お久しぶりです、またお二人にお会いできて嬉しいです」
「はい、おはようございます、皆さん」「ん、おはよ」
 教室にはすでにほとんどのクラスメイトが挨拶を交わしてくんだけど、あたしと閃那はちょっと特別視されてるっていうか…もう気にしないことにしてるけども。
「お二人は夏休み、いかがお過ごしになられたのですか?」「どこかご旅行など行かれたのでしょうか…よろしければ聞かせてくださいませ」
 で、長い休みが明けた初日ってこともあって、クラスメイトに取り囲まれてそんなことをたずねられたりして。
「はい、大きなお出かけとしては、二人で東京へ行ったり、あと二人で南の島へ行ったりもしました」
 こういう内容の会話は閃那が積極的に話してくから任せといていいわね…二人で、ってのをちょっと強調しすぎな気もするけども。
「まぁ、お二人で旅行、しかも南の島へですか?」「それはとてもよろしいですわね」
「はい、しかも二人きりで他に誰もいない場所でしたから、思いっきり二人だけの時間を堪能、満喫できました」
 さらに二人だけってのを強調した彼女の言葉にクラスメイトたちは歓声を上げる。
「素晴らしい、素敵な時間ですわね、それは」「お二人だけの世界だなんて、本当いいですね…どんなことをされて過ごされたのですか?」
「えへへ、えっとですね、二人でお揃いの水着を着て、一緒に砂浜で遊んだり、澄み切った海の中を泳いで景色を楽しんだりしたんですよ」
 少し照れた様な、そして嬉しげにあの日のことを話す彼女…ほんの数日前のことではあるんだけど、遠い夢の中みたいな風に感じられちゃう。
「それでですね、夜にはティナさんと肌を重ね合わせて…」
「…って、ちょっ、せ、閃那っ? そ、それ以上はやめなさいっ」
 思い出に浸ってて危うく聞き流しそうになったけど、とでもないことまで説明しようとしてたものだから慌てて止めに入る。
「もう、ティナさん、どうして止めるんです?」
「は? どうしてもこうしてもないでしょ、何でも話していいってものじゃないし…は、恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいだなんて、むしろ私はもっとティナさんとの深い深い関係を知ってもらいたいくらいです」
「んなっ…や、やめてってば、もう」
 どうにも彼女にはそのあたり恥ずかしいって気持ちはないらしい…えっと、これ、あたしの感覚がおかしいっていうの?
「しょうがないですね…ティナさんがそう言うなら、この先のことは私たち二人の中だけにしまっておきます。あ、こういうのもいいですね」
「あ、ありがと…はぁ」
 無邪気に微笑むあの子だけど、こっちは疲れて力が抜けちゃったわよ、もう。
「大丈夫ですわ、閃那さま。今のだけで十分に伝わりましたから」「ええ、お二人は身も心も完全に結ばれているんですね…あぁ、素敵です」
 しかも、クラスメイトたちはうっとりした様子になっちゃってるし…。
「…ほ、ほら、閃那、もうすぐホームルームはじまるんだから、そろそろ席につきなさいよね。あたしはもうそうするから…!」
 これ以上話を続けられるのがつらくなっちゃって、その場から抜け出しちゃうのだった。
 まぁ、あたしたちの関係はすでに有名になっちゃってるから、今更ではあるんだけども…いやいや、それでも恥ずかしいものは恥ずかしいんだってば。


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