水着選びに時間かかったこともあってその日はそれからすぐ帰って、翌日。
「お二人とも、どうぞお気をつけていってらっしゃいまし」「この間の様なことはないでしょうけれど、ともあれいってらっしゃい」
「ん、ありがと、じゃ、いってきます」「はい、いってきます」
 朝ごはんの後、お社の境内でねころ姉さんと叡那さんに見送られて、あたしと閃那はそこから飛び立った。
 あたしの持ってる力で空はある程度自由に飛べて速度も出せるから、半年前みたいにそれで移動しようってわけ。
「はわわ、やっぱり高くて怖いです、ティナさんっ」
 わざとらしく慌てながらあたしの腕へぎゅっとしがみついてくるあの子…彼女は力はあるけど飛べなくって、あと高所恐怖症なとこがあるとかないとか、少なくても後者は冗談だと思う。
「全く、しょうがないんだから…少し飛ばすから、しっかりつかまってなさいよね」
「はい、離しませんっ」
 さらにぎゅっと、あたしの胸へ顔をうずめるみたいに抱きついてきちゃって…絶対、この状況楽しんでるわよね。
 まぁ、半年前と違ってそんなことされて恥ずかしさよりあの子がかわいいとかそういう気持ちが先にくるあたり、あたしもずいぶん変わったのかもしれない。
 とにかく、ある程度の高度を取ったら海へ向けて加速…すぐ海の上へ出るけど、今回の目的地にふさわしい場所へ向かうためにそのまま飛行を続ける。
「猫耳魔法少女ティナさんにこうやって空の旅へ連れてってもらえるなんて、幸せですねぇ」
「何言ってんのよ、全く…」
 こういう長い時間力を使うときは、何となく気分で元いた時代の服装するんだけど、それが彼女の好きなアニメの雰囲気に似てるとか何とか。
 ま、それはともかくとして、過去にはずっと一人で飛んでたりしてたし、こうして二人でってのは確かに悪くない…邪魔するものとかもないしね。
 途中、飛行機とすれ違っても特に気づかれたりはせず、嵐の中へ突っ込んでもその影響を受けないのは、力で周囲に張ってる膜のおかげ。
「本当、便利ですよね、これ。暑さも防げるんですから、普段から張っておいたらどうですか?」
「いや、それはやっぱずっとこの環境で生きてく中でこれに頼るのは、あれな気がするでしょ」
「真面目ですねぇ、ティナさんは」
 そうは言ってるけど、この膜はあの子も使えて、でも普段の生活じゃ使ってないし、やっぱそういうものでしょ。

 どのくらい飛んだかしらね、南東にずっと向かってたから日の高さが当てにならなくなっちゃうけど、普通にお昼な日の高さな中、あたしたちは東寄りの太平洋上空に到達する。
 半年前はこのあたりからさらにもう少し行った、大昔にあたしのいた国のあった場所が一つの目的地だったわけだけど、今回はそうじゃなくって。
「ん、いい天気ね…あの島でいいんじゃない?」
「はい、きれいな砂浜もありますし、周囲に何にもなくって人もいなさそうですし、いい場所そうです」
 空中で静止したあたしたちの下に見えるのは、大海原の中にぽつんとある小さい島…
あの子の言う通り砂浜、そのそばに森とかあるけど、人のいる様子はない無人島。
「じゃ、あそこでいいわね」
 っていうことでその島の砂浜へゆっくり降り立つ。
「うーん、気温も海へ入って大丈夫ですし、砂浜も海もとってもきれいでいいですねぇ。ここを私とティナさんの二人だけの世界にできちゃうなんて素敵すぎます」
 名残惜しそうにあたしから離れたあの子だけど、改めてあたりを見回すとっても満足した様子を見せる。
「ならよかったわ、わざわざきた甲斐があるわね」
「はいっ。でも、まっすぐ飛んだ先によくこんないい島ありましたね、すごい偶然です」
「偶然じゃないわよ、はじめからここにこようって決めてたから。まぁ、そうはいってもあたりに目印とかないしちゃんとたどり着けるか不安だったけど、こうしてこられてよかったわ」
「えっ、それってどうして…」
 不思議そうにあたりを見回す彼女だけど、少しするとはっとした表情になる。
「あっ、もしかしてここ、あの島ですか? 私とティナさんの想いが繋がってから、はじめて一夜をともにした…」
「…ま、まぁ、そうね」
 あの子も気づいたみたいで、でもちょっと恥ずかしい表現されたものだから言葉を詰まらせちゃった。
「わぁ、そうだったんですねっ。あのときの島をわざわざ選ぶなんて、ありがとうございます、ティナさんっ」
「んなっ、ちょっ…べ、別に、一からどっか探すよりは、って思っただけだし…!」
「そんな、照れなくっても…でも、そんなティナも大好きですっ」
 ぎゅって抱きつかれちゃった…もう、しょうがないんだから。


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