で、その言葉通り、翌日には残ってた宿題、全部終わらせちゃってた。
「さぁ、これで約束通り、一緒に海へ行ってくれますよね?」
「わ、解ったわよ、全く…」
疲れた様子もない彼女、感心しちゃうけど同時に呆れもしちゃう…勉強については完全にやる気の問題よね、これ。
「で、海へ行くっていうけど、具体的にどうするのよ? 一応、休みはあと四日残ってるけど」
彼女の残してた宿題、その四日かけてようやく終わるくらいだって思ってたんだけど…ま、終わってよかったとしておこう。
「ん〜、そうですね…四日もありますし、海へは明日行くとして、今日はそのための水着を買いに行きましょう」
「水着? そんなの、学校の授業で着てるので…」
「そんなのダメですっ」
ものすごく強い口調で言い切られちゃった。
「確かにあれはあれでいいものですけど、でももっと色んなの着てみないともったいないですっ。それに、学校の外でティナさんがスク水着たりすると、あれですし…」
ま、今までの彼女からして前半みたいなこと言ってくるってのは解ってたし、それはいいんだけど…。
「あれって何よ?」
「それは、その、ティナさんみたいな大人なスタイルの人があれ着てると、こう違和感がすごいというか、でもそこがよかったりもするんだけど…」
よく解んないうえにはっきりしないわね。
「…ま、別にいいけど。で、わざわざ新しい水着ってのを買いにいくわけ?」
閃那がそうしたいってならそれでいいから、よく解んないことは気にしないでおくことにした。
「はい、そうしましょう」
授業以外で泳ぐ機会、ってのがこの先どのくらいあるのか疑問もあったりするけど…ま、あの子があんな嬉しそうにしてるんだし、いいか。
で、その水着なんだけど、あたしたちの暮らしてる町は山あいにあるってこともあっていい品揃えの店がないらしく、わざわざ電車に乗って少し遠くの、海沿いで大きな町まで出かけることになった。
移動だけで結構時間かかったし、飛んでいったほうがずっとはやいわけだけど、この前の旅行といい、こういうのんびりしたのもいいか。
「この町、私たちの通ってる学校の分校があるって繋がりがあるんです。しかも、今の時代だと里緒菜さんが通ってて、そしてその里緒菜さんやすみれさん、アサミーナとかなさまの所属する事務所もこの町にあるんですよ」
あたしたちの町よりずっと大きな駅を出て、大きな建物が建ち並んでて人通りも多い街中へ出ながらあの子がそんなこと言ってくる。
要するに、彼女の好きな声優って仕事の人たちがいる町、ってことね…ま、今まで結構話を聞かされたりもしたから、さすがに名前は覚えた。
「皆さんがよく行く神社とかもありますし、藤枝先生のお姉さまのいる喫茶店もあったりしますし、行ってみます?」
神社、ってのは気にならなくもない…けど。
「全く、あたしたちがここにきた理由、忘れたの? 暑いんだし、まずは用件すませちゃいましょ」
今日もよく晴れてて、正直に言ってこんな中であんまり外にいたくはない。
「あっ、そうでしたそうでした。ティナさんの水着を選ぶっていいう重要イベントが待ってるんでした、さっそく行きましょう!」
よっぽど楽しみなのか、あの子はあたしの手を取って引っ張ってきちゃうのだった。
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