またちょっと脱線しちゃったけど、ともかく彼女を落ち着かせて。
「ではではティナさん、まずは…これを着てみてください」
 そっからようやく本題ってことで、彼女が出す衣装をあたしが着てくことになった。
 出されたのは、あたしにはよく解んないんだけど…まぁ、普通に生活してる中じゃ見ない様な、着付けもちょっと大変だったりする服とか。
「これ、本当に閃那が作ったの? ずいぶん手が込んでる感じよね」
「はい、頑張りましたから。それをティナさんが着てくれるなんて…もう感激ですっ」
 正直に言って恥ずかしいって気持ちも大きいんだけど、あの子の喜びようを見るとまぁいいかな、とも思える。
 そう、思えたんだけども…。
「ちょっ、これ…どういう衣装なのよ。ずいぶん、露出が多いというか…」
 下着姿とそう変わらない気のするもの着させられたらさすがに恥ずかしさのほうが勝ってくる。
「ファンタジーな作品ってこういう格好多いんですよね。そしてティナさんみたいなスタイルいい人も多いですから…うんうん、やっぱり素敵ですっ」
 微笑まれてもこれはちょっと、嬉しくないかもね…。
「も、もう、こんなのまで作るとか…」
「あ、それ作ったのはエリスままですよ? ままのお気に入りの一つです」
「…へ? そ、そうなの…えっと、これ。、エリスさんが着たりするの?」
 戸惑うあたしに彼女はうなずいてきちゃったりして、言われるままに着ちゃったあたしが言うのも何だけど…う〜ん。
「…こんなの着たりして、よく叡那さんは何にも言わないわね」
「いえ、叡那ままは止めてますよ? でも、そんな叡那ままの気を引くため…って意味もあるみたいですね」
 何か前にそういう話聞いた気もするけど、そんなものなのかしらね…今のエリスさんからはちょっと想像できないけれども。
「エリスままの気持ち、解ります…こんな格好されたら、やっぱりとっても気になっちゃいますっ」
 じ〜っと見つめられちゃったりして…うぅ、落ち着かない。
「…ちょっ、ちょっと、あたしばっかりこんな格好させられるのって、不公平じゃない?」
 あの子が嬉しそうならいいかな、とは思ってたんだけど…恥ずかしさが勝ってそんな言葉が出ちゃう。
「えっ、それって…私のコスプレ見たい、ってことですか? 私のなんて見てもしょうがないですよ?」
「いや、見たいとかじゃなくって不公平だって思ったんだけど…でも、閃那の見てもしょうがないとか、そんなのそっちじゃなくってこっちが決めることでしょ。閃那のほうがきれいでかわいいんだから、アニメとかそういう格好もよく似合うんじゃないの?」
 …あ、いけない、また勢いで恥ずかしいこと言っちゃったかも。
「はぅ、ティナさん…」
 案の定、彼女は顔を赤くしちゃったけど、でもあんなの、閃那が自分の魅力を解ってないのがいけないんだから。
「うふふっ、解りました。とってもいいこと思いつきましたし、一緒にコスプレしましょう、ティナさん」
「ま、まぁ、いいけど…」

「…で、これはどういう状況なのよ」
 あたしはまた別の衣装へ着替えて、閃那も着替えたわけだけど、着替え終えたと同時にあの子がぎゅっとあたしと腕を組んできたものだからそう声かけちゃう。
「もう、ティナさん、忘れたんですか? この格好、この前一緒に観たアニメのお二人のなんですよ?」
 言われて互いの衣装をよく見てみると…あぁ、確か魔法少女って呼ばれる女の子のお話だっけ。
「…はぁ、で、それとあんたがぎゅっとしてくるのと、何か関係あるの?」
「あっ、いいですね、その反応。やっぱりティナさん、あの子にそっくりです…この衣装が一番ぴったりかも」
「…は? 意味解んないんだけど」
「ほら、ですから、あのアニメで今のティナさんが着てる衣装の子ですよ。外見もそうですし、それに性格も頑張り屋さんなツンデレで、ティナさんに色々似てるんです」
「何よ、ツンデレって…」
 アニメのこと思い出してみるけど…似てた、のかしらね、そう言われると、ちょっと自分に重なるところ、感じてた気がする。
「あの子は猫耳じゃないですけど、でもこれはこれで…やっぱりいいですねぇ、猫耳」
「だから、あたしのは…全く」
 猫耳ってやつじゃないんだけど、これを強く否定するのはねころ姉さんに悪い気がして、最近はあんまり気にしないことにしてる。
「で、とにかく、そのキャラクターとあんたが腕を組んできたこと、何の関係があるっていうのよ?」
「もう、ティナさん、あの作品ちゃんと観てましたか? あのお二人、ベストパートナーでしたよね?」
「え〜と…うん、まぁ、そうだったかしらね」
 そこまで詳細には覚えてないんだけど、基本的に二人で一緒に行動してて息も合ってたわよね。
「まっすぐな子とツンデレな子の関係が微笑ましくって…あのお二人、きっと両想いですよっ。それで、あれから私たちみたいにお付き合いしてるんです…こんな風にっ」
 さらにぎゅって腕にしがみつかれちゃった。
「ちょっ、で、でもそれってあんたの想像とかじゃないの?」
「いいえ、きっとそうですっ。あのお二人のラブラブな関係を描いた同人誌もいっぱい出てますし」
「そ、そう…まぁいいけど」
 あのアニメでもいい関係ってのは伝わってきたし、強く否定することもないか。
「あっ、そうです、せっかくお互いにこんな格好になったんですし、今からあのお二人になり切ってみませんか?」
「…は? い、いや、そんなの無理でしょ」
「大丈夫です、ティナさんは普段通りの態度でも十分そっくりですから」
 それならなり切るとかしなくってもいい気がするんだけど…。
「…ま、いいけど」
 でも、あの子のとっても楽しそうな様子見ると、別にいいかなって思っちゃうのだった。


    (第1章・完/第2章へ)

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