魔法って閃那が呼ぶ力を本格的に使うってなると万が一ってことがあるから、あたしたちの周囲…社殿とか森とかに被害が出ない様に障壁を、まぁこれも魔法で張って。
 あたしが学校にいるとき一人で稽古するときみたいに空中でやれればよかったかもしれないけど、閃那は空を飛べないから…力を使えば飛べそうなものだけど、誰にでも苦手はあるってことみたい。
「では、ティナさん…本気できてくださいね」
 あたしと少し距離を取って立つ彼女、そう言うと何もない空間から彼女の身長とそう変わらない大きな剣を取り出し、すると彼女の服の上に軽装ながら鎧みたいなのが重なる。
 これはあれか、あたしが叡那さんからもらったのと同じ感じなのかもね…あれ以来使ってなかったけど、閃那の本気ってのも気になるし、使ってみるか。
 ってことで、その宝玉を手に出し握りしめ、そして力を込めると、巫女の服から元いた世界で着てたのに着替えてたあたしの服の上に軽い鎧みたいなのが重なる。
 これ、防御力も案外あるみたいだけど、力をかなり増幅するって効果もあるみたいで、あたしがあの再戦で勝てたのはこれの力も大きい。
「わぁ…」
 で、閃那のほうも臨戦態勢…かと思いきや、それとは程遠い顔してあたしのこと見てた。
 何かぼーっとしてるみたいな、とにかくずいぶん緊張感ない様子…やっぱ口ではああ言ってても余裕ある、ってことか。
 ま、とにかくあたしはあたしの力を出すだけだから…左手に、力で発生させた光の件を出す。
 これを光の矢として相手に放つこともできるけど、基本はこうして剣としてかたちを持たせてる…出してる間力は使いっぱなしになるけど、このくらいどうってことない。
「じゃ…いくわよ、閃那っ」
 光の剣を構えて、あの子へ向け駆け出した。

「ふぅ、ふぅ…やっぱり、ティナさんとっても強いです」
「はぁ、はぁ…な、何言ってんのよ、閃那こそやっぱ強いじゃない」
 手合わせを終えたあたしたち、互いに息を切らせて社殿前の階段へ座り込む。
 結果はまぁ、引き分けってとこだけど、こんなに力を出して誰かと戦ったりしたのって、あの化け物と以外じゃはじめてってくらいだったかも。
 それくらいのものだったからやっぱりしんどくって、何とか息を整えてく。
「ティナさん、そんな汗かいちゃって…ふいてあげますね」
「ん、あ、ありがと」
 彼女があたしの汗をハンカチで拭ってくれる。
「でも、やっぱりあたしより閃那のほうが強いかしらね。あたしのほうがずいぶん汗かいちゃったし」
「えぇ〜、それはただ単にティナさんが私より暑がりなだけだと思いますよ?」
「そう、なのかしらね? でも、それを置いとくにしても、閃那は本気出してないっていうか、余裕あったでしょ?」
「えっ、そ、そうですか? 私、結構いっぱいいっぱいでしたけど」
「ええ、だって閃那、戦ってるときもときどきよく解んないことで手を止めたり、何か緊張感ない顔になったりしてたじゃない」
「…あ〜、あれはティナさんが悪いんですよっ? ティナさんが猫耳魔法少女みたいな姿になって魔法使ったりするんですから、あんなの見とれないわけないです」
「…は?」
 強い口調にこっちは言葉を失っちゃうけど…また意味解んないことを。
「それにティナさんこそ、本気出してませんでしたよね?」
「…へ? そ、そりゃ、まぁ…閃那の実力なら大丈夫だって解ってたけど、でも万が一怪我とかさせちゃうとか、そんなの絶対ダメだから」
 そこはどうしても力を抑えちゃうけど、これはしょうがないわよね?
「そんな気遣いができるティナさんも素敵ですっ。私はティナさんを斬るつもりで戦ってましたよ?」
「…んなっ」
 にっこり微笑んでとんでもないこと言われたけど、さすがに冗談よね?
「まぁ、お互い完全な本気じゃなくってもそれに近い力を出して引き分けだったんですから、私とティナさんは同じくらい強い、でいいんじゃないですかね」
「ん…ま、そうね」
 毎日稽古してるあたしに対して彼女のほうは…とか言いたいことがないわけじゃなかったけど、あんまり向きになってもしょうがないから素直にうなずいた。
「でも、こんなしんどくてめんどくさいことはもういいです…あ、今の里緒菜さんっぽかったかも」
「誰よ、それは…ま、今日はそんなしんどくてめんどくさいことしてくれて、ありがと」
「あ、里緒菜さんっていうのはですね…っと、この話は長くなりそうですからまた今度にしましょう。とにかく、確かにしんどかったですけど眼福でしたし、それにいいことも思い出しましたからよかったです」
「何よ、いいことって」
「それはですね…明日になってのお楽しみ、です」
 満面の笑顔されたけど、何だろ…全然思いつかない。


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