そのゲームは基本的に物語を読み進めてくだけでときどき選択肢があるってくらいだったから、閃那の言う通り難しいってことはなくって。
 ただ…内容のほうで引っかかっちゃって、進めてくうちに何とも言えない気持ちになってきちゃった。
「ティナさん、どこまで進みました?」
 っと、どのくらいの時間がたったのかしらね、閃那が声かけてきた。
「どこまで、って…どうなのかしらね? まだ終わってはないけど」
「どれどれ…あっ、なるほど、ちょうど中盤くらいですね。それでそれで、キャラクターとかストーリーとかイラストとか雰囲気とか、どうでした?」
 何だかわくわくした様子ですぐ隣へ椅子を持ってこられて座られちゃった。
「何よ全く、整理は終わったのかしらね…そうね、登場人物ならちょうど今の画面に出てる大人しいお嬢さまっぽい子がいいんじゃない?」
 けなげに主人公の子を想ってる感じが伝わってくるのよね。
「あっ、さすがお目が高いです。そのキャラの声優さんがアサミーナなんですよ」
 ちなみに同時に名前の上がったかなさまって人は主人公の役をしてるそう。
「この作品がアサミーナとかなさまのデビュー作なわけですけど、アサミーナはこの役が一番の当たり役だってよく言われるんです」
 ま、先日会った本人とかなり雰囲気似てるものね…。
「後にこの子を主役にしたドラマCDが出たり、この子のルートを追加したバージョンも出るんですけど、ただ残念ながらこのソフトだと攻略不可能です」
 と、あたしがしてたこのゲーム、主人公の女の子になって他の女の子と恋をするっていう、閃那が言ってた百合っていう内容な恋愛のゲームなんだけど、攻略って…何か嫌な表現ね。
「ティナさんもこれを機にアサミーナやかなさまに興味を持ってくれると嬉しいです」
「そ、そうね、とりあえず覚えとくわ」
 あっちの世界の歴史は置いといても、アサミーナって人とは直接会ったんだし、もう忘れることはないかしらね。
「はい、それでゲームの内容はどうでしたか?」
「…へ? え、えっと…う〜ん」
 続いての質問に言葉を詰まらせてしまった。
「えっ、どうしたんですか?」
 あたしの反応に首を傾げられたけど、ちょっと否定的な返事になるかも…いや、それでも彼女への隠しごとはよくない、か。
「いや、その、話は悪くないと思うんだけど、やってるうちにちょっと…胸が痛くなってきたわ」
「…えっ? そんな鬱展開とかなかったと思うんですけど…」
「いや、そういうわけじゃなくって、女の子と親しい仲になってくと閃那を裏切ってる感じがしちゃって、ね?」
 …あれっ、これって否定的っていうより、恥ずかしいこと言ってない?
「ティナさん…」
 気づいたときにはもう遅く、すぐ隣にいる彼女はものすごく嬉しそうにこっち見つめてきてた。
「ティナさんったら、恋をしてるのはあくまでゲームの主人公なのにそんなこと思って胸を痛めちゃうなんて、かわいいです」
「う、うっさいっ」
 やっぱりものすごく恥ずかしくなってきて、顔が赤くなってくのが解っちゃう。
「しかも、私のことを想って、だなんて…あぁ、もう気持ちが抑えられません。いいですよね、ティナ…?」
 あたしが何か言い返す前に、椅子から身を乗り出してきた彼女の唇があたしの口をふさいでしまった。
 も、もう、帰ってきてすぐ、しかもこれからお社の家に戻るのに、こんな…そう思いながらも、彼女を抱き寄せて受け入れちゃう。
 ゲームであんな気持ちになっちゃうほどに、あたしは閃那のこと…大好き、なんだから。


    -fin-

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