もうすぐ一学期が終わるっていう七月に入ると、期末テストってのがある。
 前にあった中間テストみたいなもので、つまりまたしばらくの間勉強ばっかりの日々が続いて。
 その甲斐もあって特に何の問題もなくテストは終わったんだけど、意外と気が張ってたのか、そしてそこにさらに厳しくなった暑さが重なってのことか。
 テストが終わってようやく迎えたお休み、なのにあたしは熱を出しちゃったの。

「んっ…せん、な…?」
 目を覚ますと、叡那さんの家な自分の部屋、あたしの横になってる布団のすぐそばにあの子の姿。
「あっ、ティナさん、気がつきました? 調子はどうですか?」
「え、ええ、そう、ね…少しは、楽になった気がする」
「そうですか、よかったぁ…」
 心配げにあたしの顔をのぞいてた彼女、ほっとした様子になる。
「はぁ、情けないものね、暑さで体調崩しちゃうとか…今まで、こんなことなかったのに…」
「しょうがないですよ、ティナさんこういう高温多湿って環境はじめてなんですから。だから魔法使えばいいんじゃ、って思うんですけど」
「いや、これからずっとこっちで生きてくのに、それに頼るってのは、ね…」
「もう、真面目なんですから…そんなティナさんも好きですけど、でっも無理はしちゃダメですし、今日はゆっくり休んでくださいね」
 そんなことを言ってくる彼女だけど、あたしの右手に彼女のぬくもりが伝わってきてて…手を握ってくれてたみたい。
「閃那は…もしかして、朝からずっとそばにいてくれたの?」
「当たり前です、ティナさんが元気になるまでそばにいます」
 壁にかかった時計へ目をやってみると、ちょうどお昼を回ったくらいの時間…そんなにそばにいてくれたのか。
「あ、ありがと、それにごめん…」
「もう、何も謝ることなんてないです。今日は日曜日なんですし、それにティナさんの寝顔見てるだけで十分楽しかったですよ?」
「も、もう、何よそれ…」
 ちょっとほっとする…んだけど、あることを思い出した。
「でもそういえば、閃那って今日何か用事あるとか言ってなかった? そのためにアルバイト休むとか言ってたけど、その用事は…?」
「ティナさんが体調崩してるのにそんなこと言ってられませんっ」
「そ、そっか…」
 納得しかけるけど、そもそも彼女の用事って何だっけ…?
 昨日聞いてるんだけど、頭が上手く働かなくって、えっと…。
「元の時代にちょっとだけ帰るんだったか、確か…。今日はエリスさんの誕生日っていう特別な日だから、それをお祝いするって…」
 うん、毎年家族で祝ってて、だから今日も…って。
「ちょっ、ぜ、全然そんなこと、とかじゃないじゃない…閃那、今すぐ帰りなさいってば…」
「ぶぅ、こんなティナさんを放ってどこか行けるわけないじゃないですか」
「気持ちは嬉しいけど、あたしはこうして横になってるだけなんだし…それに、家族は大切にしなさいってば」
 特に、閃那はあたしと一緒にいるために家族と離れて生活してるわけだからなおさら。
「…うぅ、解りました。ままたちのことも大切ですし、ティナさんがそう言ってくれるんでしたら、行ってきますね」
 閃那も戻ってお祝いしたい、って気持ちはやっぱり強く持ってたみたい。
「ん、あたしはこのまま休んでるから、気をつけて行ってきなさいよね」
 だから、そんな彼女へ少し微笑んで見送ってあげるの。


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