第三章

 ―大好きな、愛しい人と、心も身体も重ね合って。
 恥ずかしいって気持ちはやっぱりあるけど、それ以上に幸せでいっぱいになる。
 その幸せに包まれたまま眠ると、心地よくてそのまま翌朝目が覚めないんじゃ、そんなことを気にしちゃうんだけど…。

「ん…朝、か。しかも、いつもの時間…ふぁ」
 ―目を覚ましたあたし、まずは壁にかかった時計へ目をやるんだけど、いつも起きるのと同じ時間。
 次いですぐ隣へ目をやると、同じベッドで気持ちよさそうに眠ってる閃那の姿。
 一応、ちゃんといつもの時間に起きられるのね…はじめにこの子とここで一緒になった翌日はちょっと起きるの遅くなっちゃったんだけども。
 で、これからどうするか、ね…剣の練習したいけど、昨日は黙って行ったら彼女を怒らせてしまった。
 かといってこんな気持ちよさそうに眠ってるのを、はやい時間に起こすってのも気が引けるし、だからって毎朝の日課な剣の練習をやめるってのもちょっと…。
「…ごめん、閃那。やっぱり行ってくる」
 で、そんな結論になっちゃう…また怒られるかもしれないけど、ちゃんと謝れば解ってもらえるはず。
「別に閃那のこと怒らせたいとか、そんなわけじゃないんだからね…んっ」
 その気持ちを伝えるって意味も込めて、眠ってる彼女へそっと口づけをしてからベッドを出たの。

「あっ、ティナさん、お帰りなさい。それにおはようございます」
 昨日みたいに空の上で剣の練習して、それから部屋へ戻ると閃那はもう起きてて出迎えてくれた。
「う、うん、ただいま。それにおはよ」
 昨日のことがあったからちょっと慎重に彼女のこと見るけど、怒った様子はなくってむしろ機嫌がよさそうにすら見える。
「えと、ごめん、今朝も黙って剣の練習行っちゃって」
 でもやっぱり見ただけじゃ解んないから素直に謝っておくことにした。
「そんな、大丈夫ですよ。私、怒ったりしてませんし…だってティナさん、黙って行ったったわけじゃないって解ってますから」
「…へ? どういうことよ?」
「ティナさん、出ていく前に口づけしていってくれましたよね。私にはそれでもう十分伝わりましたから…」
 何だ、ちゃんと気持ちが伝わってたのか…。
「…って、んなっ? あ、あんた、あのとき起きてたのっ?」
「いえ、寝てましたよ? でも何となく伝わるんです」
  そ、そんなもの、なのかしらね…そうだっていうなら、恥ずかしいけど嬉しいかもしれない。
「ティナさんのその魔法少女みたいな服装を朝から見られるのも眼福ですし、剣のお稽古はしてきていいですよ」
 彼女の言う通りあの服に着替えていってるんだけど、何なのかしらねそれ…彼女が満足してるなら、いいけど。
「う、うん、ありがと」
「ただし、です。あまり無理はしないことと、起きるときは今日みたいに私に口づけしていってくださいね…ちゃんと解るんですから」
「わ、解ったわよ…」
 恥ずかしいけど、でも彼女に納得してもらうためだものね…それに、あたしからしちゃったことだし。

 ちょっと恥ずかしいことはしなきゃいけないけど剣の練習をすることは認めてもらえた。
 気分も軽く食事も終えて、学校行く準備…しようとするんだけど。
「あ、ティナさん、ちょっと待ってくれませんか? 下着は私が用意したこっちを使ってください」
 服を脱いで制服へ着替えようとしたところでそんな声かけられた。
「は? 何でよ…まさか、今つけてる下着で昨日みたいなことするつもりじゃないでしょうね?」
「わっ、そんなことしません。そんなのしようと思えばお風呂のときとか…あはは、本当にしてませんよー?」
 あたしの視線に反応して途中で誤魔化すみたいな素ぶりされたんだけど。
「ま、それは置いといてあげるけど、とにかく何でよ?」
「はい、先日からずっと気になってたんですけど、ティナさんの今の下着、地味すぎです。ねころさんが用意したものでしょうからしょうがないといえばそうなんですけど、でもそれじゃティナさんの魅力を十分引き出せないと思うんです」
「…はぁ、そうなの?」
 またよく解んないことを…下着とか、こっちくる前はもっと簡素だったし、気にすることないって思うんだけど。
「そうなんですっ。ですから今日はこれを使ってください、昨日買ってきました」
「…はぁ、まぁ、いいけど」
 ものすごく力説されちゃって、あたしとしては気にすることないって思うわけで、ならあの子がああまで言うならいいかってことで差し出された袋を受け取る。
 閃那があたしのために何か用意してくれた、ってのは悪い気しないしね…ってことでさっそく着替える。
「ふわ、ティナさんやっぱり…おぉ〜…」
 じ〜っと見られ続けてしかも声上げられたりして、さすがに恥ずかしいんだけど…ともかく下着を付け替える。
「ほら、これでいいんでしょ? 何か、布地の面積とかが減った気がするんだけど」
「はい、いいですっ、やっぱり想像通りよく似合ってますっ」
 彼女が用意してくれたのは黒い下着…地味、ではないわね。
「サイズは大丈夫ですか?」
「そう、ね…上も下も、ちょうどいいくらい」
「よかったです…えへへっ」
「でもよくぴったりなサイズ用意できたわね。ねころ姉さんが用意してくれたときはしっかりサイズ測ってだったし、それを教えてもないのに」
「そんなの当たり前です、抱きしめたり触ったりしたティナさんの身体を思い出せば…」
「そ、そうなの…」
 何か、ちょっと寒気がしたんだけど…。


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