どっと疲れが出ちゃったけど、幸いにも今日はその身体測定して終わりでもう放課後。
「ティナさん、お昼ごはん食べに行きましょう」
 ちょうどお昼時ってこともあって、あたしの席へやってきた彼女はそう声をかけてきた。
「そうね、でもどこ行くの?」
 入学式の日はお社に戻ってそこで食べて、昨日は学食ってとこに行ったんだったわね。
 学食はたくさんの人が入れるだけの席のある大きな建物で、そこでは色んな料理を選んで食べることができたの。
 午後の授業がまだないから自宅から通ってる人は帰ってる人もいるわけだけど、それでも結構な人数がいたわね。
「ん〜、そうですね、今日は購買に行ってみましょうか」
 だからてっきり今日もそこに行くのかと思ったんだけど、あの子は別の場所をあげてきた。
「何よそこ、昨日の学食とは違うの?」
「はい、軽いものをお持ち帰りで買えるんです。売ってるのは食べ物だけじゃないですけど…あ、ちなみに他にもカフェテリアとか、別のお食事できるところもありますけど、どうします?」
「あたしにはよく解んないし、閃那に任せるわ」
「はい、任されました」
 彼女は未来のここ…とはいっても中等部だったみたいだけど、とにかく通ってたことがあるからある程度詳しいみたい。

「今日はお天気もいいですし、ここで食べましょう」
 購買でパンとか飲み物を買って、あたしたちは校舎の外へ…その校舎のまわりを包む、お社にもあった桜の木による林の一角であの子がそう提案してくる。
 この学校、広い敷地のほとんどがこの林みたいなことになってる…花はもうだいぶ散っちゃってるけど、あの子の言う通り今日はいい日和ってこともあり、大きめな木の下へ腰かけてそこで食事することにした。
「購買でお昼を買うメリットはやっぱりこうやって好きなところで食べられることです。お弁当用意してもいいんですけど…まぁ、それは、作れませんし…」
 お弁当か…ねころ姉さんが作ってもいいって言ってくれたんだけどそこまでしてもらうわけにもってことで遠慮したんだっけ。
「学食の料理はおいしいですけど、どうしても人の多い中で、になっちゃいますし…ティナさんと二人きりで、ならこっちのほうがいいかなって」
 人の多いとこはあたしもちょっと苦手かもね…。
「そうね、じゃあ購買でいいんじゃないかしらね、お昼は。雨が降ったりしても教室とかで食べればいいんだし」
「はい、じゃあそう決まったらさっそく食べましょう、もうおなかすいちゃって…いただきます」
「ええ、いただきます」
 パンの種類も多くてよく解んなかったからあの子に選んでもらったんだけど、一口…まぁまぁね。
 そのあの子は本当におなかがすいてたみたいでずいぶん勢いよく食べて…。
「そんな空腹になるなら朝にもっと食べれば…特に今朝って妙に少なくしてなかった?」
 今思えば、ちょっと引っかかる…と。
「もうもうっ、身体測定の直前にそんな食べられるわけないじゃないですかっ」
 げっ、そこに繋がってくるのか…。
「いや、だから別にそんな気にしなくっても…」
「ティナさんや叡那ままみたいならそうかもしれませんけど、普通の女の子は気にするものなんですっ」
 まぁ、あたしは明らかに普通じゃない生きかたしてきたし、こればっかりは…そういうもの、なのかしらね。
「そ、そっか…えっと、それより、ごはん食べたら閃那はどうするの? あたしはお社に行くつもりだけど」
 やっぱりちょっと解んない上に閃那の機嫌が悪くなりそうだから話を逸らす。
「あっ、私は用事がありますので…夕方になったら、私もそっちに行きますね
」  ちょっと意外な返事…てっきりずっとあたしといる、とか言うと思ってたから。
 でも、閃那も自分で何かすることがあるっていうなら、それはいいことよね。
「じゃ、また夕方にね」
 だから、食事が終わってあの子と一時別れることにした…だけど。
「えぇーっ、そんな急がなくってもいいじゃないですか。少しいちゃいちゃしてからにしましょうよ」
 彼女はそんな声を上げながら、立ち上がろうとしたあたしの腕にしがみついてきちゃう。
「ちょっ、い、いちゃいちゃって、何するつもりよ?」
「そんなの…決まってるじゃないですか。ティナさんが好きで好きでしょうがないですから…いいですよね?」
 あの子の顔がゆっくりあたしの顔へ迫ってきてどきどきしちゃう…って!
「そんなの、ダメに決まってるでしょっ!」
 何とか気持ちを抑えて彼女を引きはがす。
「えぇーっ、どうしてですか…ティナさん、私のこと嫌いなんですか?」
「そ、そんなわけないでしょ? ただ学校の、しかもこんな外でそんな…ダメに決まってるでしょっ?」
「もう、ティナさんは真面目ですねぇ。お外でっていうのも…はひっ、何でもないです」
 強く睨んじゃったからかびくってされて態度を改められた…全く。
 あたしだって、閃那とそういうこと、したくないわけじゃないんだから…なんて、こんなことここじゃ絶対に言えないけど。


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