第二章

 ―新生活はまだまだはじまったばかり。
 想い合う人と一緒のクラス、そして一緒の部屋で日々を送ることになったから浮かれそうにもなるけど…それじゃいけない。
 あたしのことを遠くで見守ってくれてる親友に恥ずかしくない生きかたをこの世界でする、って決めたんだから、学校ではちゃんとすべきことをしなくちゃ、ね。

 ―学校生活がはじまって三日め。
 初日は入学式、昨日は実力を確認把握するためのテストと、まだ通常の授業ははじまってなくって、午前中で放課後を迎えてる。
 明日まではそんな流れが続くみたいで、今日は朝のホームルーム後、先日の実力テストの結果がさっそく返ってきた。
「ティナさん、結果どうでした?」
 で、そのすぐ後の休み時間、あの子があたしの席へやってきてそう声をかけてきた。
「どうって言われても、まぁ今のあたしの実力通りの結果ってことじゃないの?」
 それを見るためのテストだものね。
「もう、ティナさんは解ってないですね。こういうときはお互いの結果を見せ合ったりして盛り上がるものなんです」
「…へ? は、はぁ、そういうものなの?」
 ちょっと周りを見回してみると、確かにそんな会話してる人が結構いる、気がする。
「そういうものです。ですからティナさんの結果、教えてください」
「ふぅん、そういうものなのか…別にいいけど、はい」
 こういう経験ないからよく解んないけど見られてどうにかなるものでもないし素直に結果を渡してあげる。
「ありがとうございます、ではさっそく…ふむふむ、ほほぅ」
 …いや、でもあんなまじまじ見られると何か恥ずかしくなるんだけど。
「ティナさんって理系だったんですねぇ。数学とかほぼ満点じゃないですか、すごいです」
「いや、っていうか、国語とか歴史とかよりそっちのほうが取っつきやすいっていうか…」
「あ、そうですよね、ティナさんこっちにきてまだ間もないですし…そう考えたら国語とかもここまでできてるなんてすごいです」
「う、うっさい、別にすごくなんかないってば…」
 ちょっと前、ここへの受験のために一ヶ月勉強漬けになった成果がまだ残ってた、ってとこね…あの日々は大変だったけど、エリスさんに感謝ね。
「あたしの結果はそのくらいにして、閃那は…」
 さっきの彼女の言葉からして、あたしからも彼女の結果聞いても問題ないのよね…と。
「あの、雪乃さんがこっちにきてまだ間もないって、どういうことですか?」
 あたしたちの会話が聞こえてたみたいで、あたしの言葉を遮って隣の席の人が声をかけてきた。
「そういえば、少し気になってました…雪乃さん、雪乃先輩の妹なのに外部入学でしたよね?」「中学校はどこに通っていらしたのですか?」
 で、さらに他の人たちも集まってきちゃって、あたしの話を続けるどころじゃなくなっちゃった。
 でも、まぁ閃那ならあたしが気にしなくっても問題ない結果よね。
 それよりもこれ、何て答えたものかしらね…本当のこと言うわけにもいかないし。
「えーと…あ、そうです、ティナさんはここに入学するまでずっと海外で暮らしてたんです。そうですよね、ティナさん?」
 と、あの子がそんなこと言い出すものだから思わず顔を向けるんだけど、あの子は何か目配せして…。
「…あ、あぁ、うん、そう、そんなとこね」
 話を誤魔化してくれてる、ってのが伝わったからうなずいておく。
「なるほど、ですので国語などが少々苦手なのですね」「ティナ、というお名前…生まれも海外で?」
「ま、まぁ、そんなとこね」
 このあたりは間違ってないっていばそうなる。
「あっ、ではもしかして九条さんも雪乃さんとご一緒に海外暮らしだったんですか?」「そうです、九条さんも外部入学ですものね、気になりますわ」
「わ、私ですか? 私は…えぇと、そうです、ティナさんと一緒だったんです。そうですよね?」
「…へ? え、ええ、そうね」
 彼女も本当のこと言えないわけだし、うなずいておいてあげた。
「では、その頃からお付き合いしていらしたのですね」「素敵ですわ」
 みんな勝手に納得してくれたけど、あたしたちって実際は出会ってからまだそんなにたってないのよね…。


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