「ウェディングドレスを着たすみれが見たいです。いえ、それで結婚式をしてくれますか?」
―里緒菜ちゃんが風邪を引いちゃった翌日、あの子の熱は無事に下がってて、そこで彼女はそうお願いをしてきたの。
「すみれは人気ありますから、私、内心誰かに取られちゃったりしないか心配なんですよ? もちろん私もすみれも、想いは一緒だって解ってはいますけど…でもそれでも、すみれはずっと私のものだっていう証を、見せたくって」
それは私の台詞だったんだけど、彼女も同じ気持ちを持っていたんだって解って、何だか嬉しくもなっちゃった。
それにしてもウェディングドレスに結婚式だなんて、またずいぶん唐突…一緒に暮らせるのは彼女が学校を卒業してからになるしそこまでするのはまだ少しはやい気もしたけど、約束は約束でそれにもちろん私も自分がウェディングドレスを着るのはともかく彼女との結婚式は嫌じゃなかったから、うなずいてあげたの。
「すみれちゃんは、里緒菜ちゃんのことをこれからもずっと愛し続けると、誓うかしら?」
―ウェディングドレスを着て、そして手を繋いでゆっくり歩く私たち二人の先にいたのは、美亜さん…足を止めた私たちを見て、笑顔でそうたずねてくる。
美亜さん、私がそんなお願いされたことを知って、こうやってお店を使わせてくれたの…本人も好きでやってるみたいなんだけど、とにかくありがと。
誓いの言葉、それの答えはお互いもちろん決まってて、返事をするごとにみんなが歓声をあげてきちゃう。
「では、お互いに想いの証を交換してね」
ここで交換するのは指輪じゃなくって、チョコレートだったりする。
今日が二月十四日ってこともあって、手作りチョコレートを渡しあうのがいい、ってあの子が提案してきたの。
「えっと、里緒菜ちゃん、これ…あんまり上手じゃないかもだけど、里緒菜ちゃんのこと想って作ったから、受け取って」
「いえ、すみれの手作りというだけでもう…私のもどうぞ」
「うん…ありがと、里緒菜ちゃん」
お互いに向かい合って、チョコレートを交換…チョコレートを差し出すウェディングドレス姿の里緒菜ちゃん、なんてもう本当に夢の中みたいな光景。
彼女の手作りチョコレートも嬉しいけど、結婚式っていったらやっぱり本来は指輪だよね…それはクリスマスのときにも考えた様に、またいずれ、ね?
「うふふっ、それでは…誓いの口づけをどうぞ」
美亜さんのその言葉に、見守るみんなの視線がさらに集中してくるのが解る。
うぅ、そういえば前にもここで、さらに他の子が見てる中で口づけしたことあったけど、今の状況はそのときよりずっと緊張してきちゃう…。
「さ、すみれ…お願いします」
一歩こちらへ歩み寄った里緒菜ちゃんがゆっくり目を閉じる。
その姿はもう本当にまぶしすぎて、私なんかにはもったいなくも感じられるんだけど…ううん、私たちはこうやって結婚するほど強く想いあってるんだから、大丈夫。
お仕事でも、あのアニメのキャラソンを一緒に歌う、その収録がもうすぐだし、これからも一緒にお仕事できる様に頑張ろうね。
もちろん、お仕事以外でも里緒菜ちゃんと一緒に歩んでいきたい…これからもずっと大切にするから、ずっと一緒にいようね。
「里緒菜ちゃん、大好き…愛してるよ。んっ…」
大きな拍手や歓声があがる中、私たちはお互いの想いを乗せた、あつい口づけ…誓いの口づけを交わしたの。
-fin-
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