「…はぁ、何です、やっぱり私の嫌な予感、当たっちゃったんですね」
 地元から帰ってきた、月曜日の夜…私は自分の部屋で里緒菜ちゃんへ地元であったことを話したんだけど、それを聞いてたあの子はそう言ってため息ついちゃった。
 ちなみにそんな私と彼女との間には、すでにお料理はおいしくいただいた後の空の食器の乗ったテーブル…あの子、夕ごはんの用意して待っててくれたの。
「え〜と、里緒菜ちゃん? 嫌な予感って?」
「現実に起こったんですよね? 久しぶりに会った同級生に告白される、ってやつです」
「…あ、あぁ、そういうことかぁ…」
 そう、つい今しがた彼女に話した様に、あの日私はミーミーに告白されたの。
 ミーミーは高校時代から私のことが好きで、そのときは一時の気の迷いだってことで自分を納得させようとしてたけど卒業してからも気持ちが変わらなかったから、成人式の日に再会できたら告白しようって決めてたそう…彼女がそんな想い抱いてたなんて、全然気づかなかった。
「え〜と、里緒菜ちゃんはこういうことがあるかも、って予測してたんだ…」
「センパイは年上から見ても年下から見ても魅力的ですけど、同い年から見てもとっても接しやすそうな人ですからね…まぁ低くはないかと思って」
 いや、それは言いすぎ…って言いかけるけど、でも実際に里緒菜ちゃんの予測は当たっちゃったわけだもんね…。
「告白されるなら女の子から、とも思ってました…けど、ちょっとだけ予測が外れました」
「いやいや、ミーミーは女の子だから外れてないって」
 どうして告白されるなら女の子から、って考えたのかも気になるけど、そこは本人のために強調。
「それは解ってますよ。私が言いたかったのは、告白してきた人のタイプです…てっきり大人しい子とかかと思ってましたのに、センパイと同じタイプの人だったみたいですね」
私と同じ…う〜ん、どうなのかなぁ。
 そこは自分じゃちょっと比較できないけど、気の合う子ってのは間違いないかな。
「でも里緒菜ちゃん、土曜日は私が他の人から告白されたりしないか心配してたんだね」
 はっきり言えばこの点は私のほうが心配になるところだよ…里緒菜ちゃんは魅力的すぎるもん。
 それはともかく、理由が解ればあのときの彼女の態度も納得できて、それにかわいいって感じたりもしちゃう。
「いえ、別に心配してません。ただ嫌な予感がした、ってだけで」
 でもあの子はいたってクールにそう返してきたの。
「えぇ〜、ほんとに?」
「はい、私はすみれの気持ち、信じてますし。現にすみれ、告白されたなんて黙っていれば気づかないかもしれないことを隠さずしっかり報告してくれましたしね」
 その割には、土曜日はずいぶん念を押してきてた様な…いやいや、彼女が信じてるって言ってくれるのは嬉しいしよしとしよう。
「まぁ、里緒菜ちゃんには隠し事したくないしね。でも、他の人から告白された、なんて話を聞いたりして里緒菜ちゃんは気分悪くなったりしなかった?」
「いえ、むしろ嬉しかったですよ。私のすみれはやっぱり他の子が放っておかないほど魅力的なんですね、って」
「あ、あはは、そっか…」
 私が逆の立場なら、あんな余裕でいられるかなぁ…。
「それに、その三葉さんって人も、私のこと認めてくれたんですよね?」
「あっ、うん、一応ね?」
 ミーミーの告白に私はもう恋人がいる、ってお断りのお返事したの。
 するとミーミー、もしかして学園祭ライブのとき一緒に出てた子のことなの、って見事に当ててきて…さらにあの子ならしょうがないね、と諦めるだけじゃなくって応援するとまで言ってくれたの。
 女の子な里緒菜ちゃんと今付き合ってるって知って、ミーミーは高校時代に勇気を出して告白しとけばよかったかも、なんて言ってきたけど、そうされてたら私は何て答えてただろう…。
「女の子同士だったりするのに、私に恋人がいる、って言っただけでライブで一緒だった里緒菜ちゃんのこと思い浮かべるなんて、あのときの私たちってそんな解りやすかったのかなぁ?」
「さぁ、どうなんでしょう? でも、あれを見ただけで同人誌送ってきた人もいましたね?」
「はぅっ、そ、それは…!」
 内容思い出してちょっとあたふた。
「ふふっ、すみれはかわいいんですから。そんなすみれが私のものだって見ればすぐ解るなら、それはいいことじゃないですか」
「ぶぅ、だから私はかわいくなんて…」
「…そんなことより、成人式行ってきたんでしたら写真、見せてください」
「…へ? 写真って、何の?」
 それを出してと彼女が手を差し出してきたけど、私には何のことやらさっぱり。
「センパイの振袖姿を撮った写真です。もちろん、撮ってきましたよね?」
「いや、そんなの撮ってないけど」
「…え。信じられません」
 私の返事にあの子は固まり、そしてため息ついちゃった。
「どうして、写真撮ってないんです」
 うっ、じと目でこっち見てきてる…。
「い、いや、私って元々写真撮る習慣ないし、それに私の振袖姿なんて似合ってないに決まってるからなおさら撮って残すなんて気にならなくって」
 習慣ない、っていうのは本当…現に、今までの里緒菜ちゃんとのことも、想い出の中にあればいいよねってことで写真撮ったりしてないし。
「はぁ…それじゃ、私はすみれの特別な姿、見れないじゃないですか…」
「あぅ、ご、ごめんね?」
 いくら自分では似合わないって思ってても、好きな人の特別な姿は見たいって思うよね…うぅ、全然気が利かないなぁ、私って。
「そ、そうだ、誰か撮ってくれてたりするかもっ。特にミーミーとか…」
「…まぁいいです、そこまでしなくっても。それ以上に気になることができましたから」
 里緒菜ちゃん、そんなこと言いながらゆっくり立ち上がってこっちに歩み寄ってくる。
「気になること、って?」
「その三葉さんって人だけが、すみれのことスミスミって呼ぶんですよね。じゃあ、その人のことをミーミーって呼ぶのは、すみれの他にもいるんですか?」
「え〜と、ううん、多分いないはず」
 すぐ隣へ腰掛けてくる彼女へそうお返事…ミーミーからの提案でお互いのことをああ呼ぶことにしたんだっけ。
「何か、特別な関係って感じがしちゃいますね…」
「えっ、そ、そんなことないって思うけど」
 わっ、里緒菜ちゃん、またじと目でこっち見て…しかも今度は近い。
「私も、何か特別な呼ばれかたしたいかも」
「…え? そ、そうだなぁ…」
 何だか里緒菜ちゃんの言葉がちょっと棒読みにも聞こえたけど、でも確かに名前にちゃん付けっていうのは結構たくさんの子にしてるし、あの子がそれに不満持っててもおかしくないか…。
「じゃあ、りおっちとか」
「…安直ですね」
 あぅ、冷ややかな視線で切り捨てられちゃった!
「う〜ん、じゃあどうしよ…」
「…ふふっ」
 ちょっと真剣に考え出す私を見てか、あの子が吹き出しちゃう?
「冗談です、三葉さんの話を聞いてちょっとからかってみただけです」
「…へ、そ、そうなの?」
 でも、特別な呼ばれかたしたい、っていうのは…。
「はい、別に今のままでもいいです。私、すみれに名前で呼んでもらうの、好きですし」
 そう言って私へ身を寄せてきた彼女は穏やかに微笑んで。
「そっか…うん、里緒菜ちゃん」
「ふふっ…はい、すみれ」
 私も微笑み返して…センパイって呼んでもらうのもいいけど、名前で呼んでもらうのもちょっとどきどきするけど嬉しい。


    (第5章・完/第6章へ)

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