第五章

「そう…やっぱりお正月は二人で過ごしたのね」
 ―私がアルバイトをしてる喫茶店もお正月休みが終わって通常営業。
 今年初の出勤となったその日、お正月をどう過ごしたのかを美亜さんが当然の様にたずねてきて、お客さんもいないしそれに隠すものでもないから話してあげたの。
 で、一通り話し終えると、それを聞いてた美亜さんは満足そうな表情。
 ちなみに、里緒菜ちゃんは今はちょうどお仕事に行ってるからここにはいないの。
「そういう美亜さんは、お正月はどうしてたの?」
 美亜さんはいつもここにいる印象があるけど、昨日まではお休みだったものね。
「ええ、私は地元へ戻って家族と過ごしたわ」
 あっ、普通の過ごしかた…。
「美紗ちゃんの書いた新作の百合なお話をたくさん読むことができたし、よかったわ」
 …って、そうだった、美亜さんの妹さんも百合好きなうえにそういう物語まで書いてるんだっけ…私たちのものまで書かれたし。
「それに、元日は百合に御利益のある神社へお参りもしてきたし」
「…えっ? それってもしかして、麻美ちゃんの地元にあるっていう?」
 初詣のときに聞いた竜さんの言葉を思い出してそうたずねちゃう。
「あら、すみれちゃんも知ってたの? あそこは知る人ぞ知る、っていうところなのだけれども」
「まぁ、ちょっと話に聞いただけで、実際には行ったことないけど…」
「それは残念ね…すみれちゃんと里緒菜ちゃんならぜひ行くべき場所なのに」
 う〜ん、本当は私も行ってみたい、って気持ちはあったんだけどなぁ…。
「そういえば、アサミーナちゃんとかなさまもきていたわよ」
「あっ、そうだったんだ」
 やっぱり竜さんの予想通りだった、ってことか。
「うふふっ、でも、お参りしていなくっても大丈夫よ。私がこの世界にいる全ての百合な子たちへの幸せを願ってきたもの」
「そ、そうなんですか…あはは」
 そして美亜さんもやっぱり相変わらずだなぁ。
「来週にもう一度行く機会があるから、そのときにもお祈りしてきてあげるわね」
「はぁ、それはどうも…って、来週何かあるの?」
「ええ、地元の成人式に出ることにしているの。だから、その日はお店をお休みにするから、アルバイトもないわよ」
 美亜さんがいないとお店をお休みにするとか、やっぱり彼女が店長さんなんじゃ、って感じるけど…とにかく。
「あ、大丈夫だよ、私もその日はお休みもらう予定だったから」
「あら、そうだったの? お仕事でもあったかしら?」
「ううん、美亜さんと同じ理由、ってことで」


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