「ごちそうさまでした…ケーキもおいしかったね」
「そうですね、さすがセンパイがわざわざあんな遠くまで行って買ってきただけのことはある、ってとこですか」
 あの子が作ってくれた夕ごはんをおいしくいただいて。
 その後は、私が買ってきたクリスマスケーキを一緒に食べて、彼女も満足してくれたみたい。
 美亜さんのお店には美亜さん手作りのケーキがメニューにあってそれもとってもおいしいのに、それを作ってる美亜さんがお勧めしてくれたケーキだもんね…意外な出会いがあったことも含め、とっても満足。
「うんうん、よかった」
 里緒菜ちゃんにも喜んでもらえたし、ちょっと遠回りにはなったけど行ってよかった。
「…あ、センパイ、少しそのままでいてもらえますか?」
 と、その彼女はそんなこと言いながら私のすぐ隣へ腰掛けてきた。
「ん、どうしたの?」
「はい、ちょっと…ちゅっ」
 頬にやわらかい感触…って!
「わ、わっ、里緒菜ちゃんっ?」
 突然あの子がキスしてきたものだから、とってもびっくりしちゃう…あぅ。
「頬にクリームがついてましたから取ってあげただけなのに…そんなに慌てたりして、すみれは本当にかわいいんですから」
 そんなこと言って悪戯っぽく微笑む彼女。
「うぅ、な、何言ってるの、里緒菜ちゃんのほうがずっとかわいいのに…!」
「そんなことないんですけど…すみれは自分のかわいさをもっと自覚したほうがいいですね」
「それはこっちの台詞だよ…ぶぅぶぅ!」
 さっきのキスから微笑んでくるまでの流れ、本当にどきどきが収まらなくなるくらいかわいかったっていうのに…。
 うぅ〜、何かもう色々と我慢できなくなってきちゃう…けど、いけないいけない、まだ肝心なことが残ってる。
「え、え〜と…こほんっ。里緒菜ちゃんに渡したいものがあるの」
「渡したいもの、って…また唐突ですけど、チョコバーですか?」
「うんうん、こういうときはチョコバー…って、違うよ、そうじゃないよ〜!」
 確かにいつもの私ならチョコバー渡してる様なとこなんだけど…ぶぅ。
「もう、こんなすみれがかわいくないとか、どういう冗談なんだか…」
「里緒菜ちゃん、何か言った?」
「いえ、何でも…それじゃ、何を渡してくれるっていうんです?」
「うん、今日はクリスマスなんだから、もちろんクリスマスプレゼントを、だよ?」
「…まぁ、クリスマスは明日なんですけどね」
 あぅ、そうだった、今日は二十四日か。
「…ま、そんなことは別にどうでもいいとして、そんなもの用意してくれてたんですか」
「うんうん、そういうことだから、ちょっと待ってね」
 そういうことで席を立って、棚の中からきれいにラッピングされた箱を取り出す。
「はいこれ、そういうことで里緒菜ちゃんへのクリスマスプレゼントだよ。受け取ってっ」
「ありがとうございます、ではありがたく受け取らせていただきますけど、さっそく開けてみていいですか?」
「うん、もちろんっ」
 プレゼントを受け取ってくれた彼女に笑顔でうなずく。
「ではさっそく…って、これって、あれですか?」
「うん、先日出たばかりの最新の携帯ゲーム機だよ。里緒菜ちゃん、ゲーム好きだし、それにこれはさすがに持ってなかったって思うから…どう、かな?」
 そう、プレゼントは結局それにしたの…無難なとこにした、って感じだけど、でもあの子の好きなものっていうのは確かだもの。
「これはもう少し安くなってから買おうって思っていたんですけど、嬉しいです…ありがとうございます」
「ううん、いいっていいって」
 うん、喜んでもらえたみたいで、まずは一安心。
「それに、センパイらしいプレゼントでちょっと安心しました」
「…へ? それってどういうこと?」
 ちょっとよく解らないこと言われちゃって首をかしげちゃう。
「はい、クリスマスプレゼント、っていうことでセンパイらしくない重いものとか用意してたらどうしようかな、って思ったんですけどそんなことありませんでしたから」
「…うっ」
 危ない危ない、そんな風に思ってたんだ…これは、ゲーム機にしといて本当によかったみたい。
「…何か今、言葉を詰まらせちゃったみたいですけど、何かありましたか?」
「う、ううん、何でもないよ?」
「とっても怪しいんですけど…まぁ、今日のところはプレゼントをくれたんですし、見逃してあげます」
 …ふぅ、実はこの間の夏梛ちゃんの言葉を聞いて、私も指輪にしようかな、なんて考えちゃってたんだよね。
 でも里緒菜ちゃんも感じたみたいに私が指輪を、なんてちょっと重いし似合わないかな、っていうことでやめておいたの…そしてそれで正解だったみたい。
 そうはいっても、いつかは指輪を贈りたい…彼女が高校を卒業したら、くらいのタイミングかな。
「…ところでセンパイ? これ、本体だけでソフトはないんですね」
「…あ」
 そうだよ、そう言われると…そういうことになってる。
「あぅ、ごめんね、ちょっと忘れてた…」
 私ってやっぱり肝心なところでちょっと抜けちゃってるのかなぁ…しゅんってなっちゃう。
「いえ、別に謝ったりしゅんとしたりしなくっても…こんなお高い本体をプレゼントしてもらえただけで十分ですし、それにソフトはダウンロードでも買えますし」
「うぅ、そんなのさみしいし、今度一緒にソフト買いに行こう、ねっ?」
 何かダウンロードとかって物足りないっていうか、好きじゃないんだよね…私が古い考えなだけかもだけど。
「そうですね、そうしましょうか」
 あの子はうなずいてくれたけど、そこでなぜか笑ってきちゃう?
「もうもうっ、何がおかしいのっ?」
「いえ、何でも…やっぱりすみれはかわいすぎますね、って思っただけです」
 そんなこと言ってまた悪戯っぽく微笑まれちゃう。
「うぅ〜…ぶぅぶぅ、またそんなこと言って!」
「本当のことなんですから仕方ありません。そんなかわいいすみれに、私からもクリスマスプレゼントがあるんですけど…受け取って、もらえますか?」
 だから、私はかわいくなんて…って言いたいところだったんだけど、あんなこと言われてじっと見つめられてはうなずくしかない。
「ふふっ、よかった。では…」
 里緒菜ちゃん、どきっとする雰囲気で笑うと、ゲーム機をテーブルの上に置いて、改めて私の前に立つと…。
「大好きですよ、すみれ…んっ」
 そのまま、あつい口づけをしてきちゃったの…!
 こ、これって、プレゼントは里緒菜ちゃん自身、ってこと…!?
 でも、私自身ももう彼女への想いを抑えることなんて、できないよ。
「里緒菜ちゃん、私も大好き、だよ…ん、んっ」
 だから、私からもぎゅって抱きしめ返して、さらにあつく口づけを交わしたの。


    (第3章・完/第4章へ)

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