まだ日の高いうちにスーパーへ、もちろん二人一緒にお買い物へ向かう。
「…思ったより人多いですね。少しだけ後悔してしまったかもしれません」
スーパーに入ってあの子がため息ついちゃったけど、その言葉のとおり結構お客さん多い。
「こんな日くらい、家でのんびりすればいいのに」
まぁ、これからそうするために今から食材とか買っておくっていう、私たちと同じ考えなんじゃないかな。
「まぁまぁ、そんなこと言ってもしょうがないし、気にしないでお買い物してこ?」
「はぁ、しょうがないですね…」
かごを持って促す私に、彼女もため息つきながらも一緒にきてくれる。
「さて…と、夕ごはんは何にしますか? 考えるのめんどくさいですし、センパイが食べたいものにしますよ?」
そこで私が大変なものお願いしたらもっと面倒なことになるのに…でも里緒菜ちゃんは本当にお料理上手だから何でも作れちゃいそう。
「…何です? にやにやしたりしてないで、食べたいもの教えてくれませんか?」
「あ、ごめんごめん」
いけないいけない、そんな素敵な子が恋人だっていうことが幸せすぎて、つい…。
「ん〜、そうだね、やっぱりクリスマスらしいお料理がいいかな」
「クリスマスらしい…七面鳥の丸焼きとかですか?」
「…いやいや、そこまではさすがに」
「まぁ、そんなめんどくさいものはこちらからも願い下げです。そもそもセンパイの部屋にはオーブンとかありませんし」
小さなアパートだしキッチンももちろんそれなりのものしかない。
「じゃあ、あんまりめんどくさくないものでいくつか用意しましょうか」
そうして里緒菜ちゃんが食材を選んでかごに入れてくから、私はそれを持ってついていく。
「こういうのってあれだよね、何だか夫婦みたいな感じかも」
「ふふっ、そうですね…おかえりなさいのキスもしましたし、新婚気分ですか?」
「そ、そうだね」
ちょっと恥ずかしくなるけど、それ以上に嬉しくなってきちゃう。
「そういえばこの間、麻美さんにいいお嫁さんになれる、なんて言いましたっけ。あの二人はどちらもいいお嫁さんになれそうですけど、私たちの場合は明らかに…」
「…あはは、そうだね、里緒菜ちゃんはいいお嫁さんになれると思うよ」
里緒菜ちゃんと麻美ちゃんがそんな話してた、っていうのも彼女が周囲と仲良くなってきてることが感じられて嬉しいんだけど、料理上手な彼女はその麻美ちゃんにも負けないいいお嫁さんになれるよね。
対する私はっていえば、今の立ち位置で解るとおり…ってとこになるかも。
「…えぇ〜、そんなこと私に期待されても困ります」
と、当の彼女はあからさまに嫌そうな表情しちゃった?
「わっ、どうして?」
「私みたいなめんどくさがりやな女がいいお嫁さんになれるとか、あり得ないと思いませんか?」
「そうかなぁ? 少なくても私はなれる、って思ってるんだけど…うん、私に較べたら全然」
「まぁ、確かにそれはそうかもしれませんね」
うぅ、何かそこで納得されるとちょっとだけ複雑な気分かも。
「ぶぅ、いいもん、私はそんな里緒菜ちゃんをお嫁さんとして迎えるんだから」
「ふふっ、こんなかわいいすみれでしたら、私も大歓迎です」
ちょっとむくれる私にあの子はそんなこと言ってきて…かわいいとか、こっちの台詞だし。
「…まぁ、でも、まわりの人たちから見れば、私とすみれはきっと姉妹か友人にしか見えないんでしょうけど」
里緒菜ちゃんと姉妹、か…いつか私たちの関係ってそういうものだよね、って思ったこともあったっけ。
そして、今の彼女の言葉を聞いて、この間の夏梛ちゃんとの会話を思い出した。
「…大丈夫大丈夫、まわりがどう見てようが、私は里緒菜ちゃんのこと、結婚したいって本気で思ってるくらい大好きなんだから」
この間、夏梛ちゃんが似たことでちょっと不安そうにしてたから、彼女も同じ様な不安があるのかな…っていいうことでそんなこと言ってみたの。
「…何です、急に恥ずかしいこと言って」
でも、当の彼女は相変わらずのクールな視線を向けてきちゃう?
「あれっ、え〜と、てっきり私たちの関係ってちょっと特殊だから、まわりからどう見られたりするのか不安なのかな、って思ったんだけど…」
「ふぅ…すみれ、私がそういうの気にする人に見えるんですか?」
「え〜と、それは…見えない、かも?」
「それはそうです、そんなことで周りを気にするなんて、めんどくさいです」
もう、じゃあさっきの私たちが周りから見たら、っていうのはただの冷やかしだったのか…そうだよね、里緒菜ちゃんはこういう子だっていうの解ってるのに。
「…でも、こんな人がたくさんいるところで堂々と結婚したい、と言ってくれたのは嬉しかったですよ?」
と、悪戯っぽい微笑を浮かべてそんなこと言って…もう、里緒菜ちゃんはそういうこと言う子だって解ってるよ、ぶぅ。
「ふふっ、そんなむくれないでください、かわいいんですから…それに、私も同じ想いですしね?」
最後は耳元でささやくかの様にあんなこと言ってきて…はぅ、本当、敵わないなぁ。
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