ベッドへ横になった里緒菜ちゃんは、クリスマスプレゼントで私が上げたゲーム機を手にしてそれをはじめるの。
 っていっても、そのときは本体しか買ってなくって、ソフトはその後改めていくつか買ってきたんだけど、ね。
「そのゲーム機、使ってくれてて嬉しいな…何のゲームしてるの?」
 ベッドの端へ腰かけながらそうたずねてみる。
「キャラメイクできるRPGですよ、こういうのが一番のんびりできますしね」
 あぁ、あのゲームね…好きにキャラクターを作ってパーティ組めるやつだね。
「そっかそっか、どんなキャラを作ったの?」
「ん…気になります?」
「まぁ、そりゃね…よかったら見せてよ」
「しょうがないですね…」
 そう言ってあの子は身体を起こして壁にもたれかかるから、私もその隣に行ってゲーム画面をのぞかせてもらう。
 ステータス画面に映るのは、活発そうな女の子…。
「うんうん、なかなかかわいい子だねっ」
「…センパイ、本当にそう思いますか?」
「うん、本当だって。元気そうなかわいい女の子だよねっ」
 自分のしたキャラメイクに不安だったりしたのかな…あんな念を押さなくってもかわいいのに。
「そうですか、それはよかったです…ふふっ」
 あれっ、何だろ、最後のいたずらっぽく見える微笑みは…。
「う〜ん…あれっ? このキャラって…」
 引っかかりを覚えながらももうちょっと詳しく画面を見てみるんだけど、そのキャラクターの名前を見た瞬間固まっちゃった。
「すみれはいつも自分がかわいいって認めませんけど、やっと認めてくれましたね」
「えっ、ちょっと…これって、やっぱり私なの?」
「はい、自分でもかなり上手に再現できてるって思うんですけど、どうですか?」
 そう、そのキャラクターの名前は『すみれ』になってて…まぁ、そういうことみたいなの。
「ど、どうなのかな…ちょっとよく解んないかも」
「え〜、せっかくこんなに似せたのに…まぁ、声はセンパイそのものじゃないわけですけど、でもかなり似てるほうだと思うのに」
 あの子はそんなことを言ってゲームのキャラクターの台詞を再生するけど、明るくて元気な声で、私に似てる…かなぁ?
「でも、いくら似せてもセンパイそのものにはならないですよね…そうだセンパイ、この子の台詞しゃべってみてもらえませんか?」
「へ? う、うん、それはいいけど」
「ふふっ、ありがとうございます。じゃあさっそく…」
 まぁ、こんなことで喜んでもらえるなら、私も嬉しいかな。

「やっぱり、センパイがしゃべってくれたほうがしっくりきますね…この声優さんには悪いですけど」
「そ、そうかな、ありがと」
 あの子が私に似せてキャラメイクした子の台詞を色々しゃべってみたわけだけど、やっぱり演じるのは楽しい。
 そういえば麻美ちゃんがこういうゲームのオーディションを受けたんだっけ…私ももっと頑張って、そして里緒菜ちゃんにゲームで選んでもらえたりしたら嬉しいなぁ。
「ん〜、でも、その子って主人公キャラだよね? どうして私…をイメージしたキャラクターを主人公にしたの?」
 ふと気になって、ゲーム機を閉じたあの子にそうたずねる。
「えっ、だってセンパイって主人公向きじゃないですか、性格とか」
「そ、そうかな?」
「はい、少なくてもこういう冒険ものなら、私とかよりずっと似合いますよね」
 う〜ん、そう言われると否定はできない、かも。
「それに…すみれと一緒に旅してる気分になって、楽しいですし」
 里緒菜ちゃんったら…私をイメージしたキャラとか、はじめは恥ずかしく感じたけど、そんなこと言われると嬉しくなっちゃうよ。
「そっか…うん、ありがと」
 思わず彼女のことを抱き寄せちゃう。
「ん…どうしてすみれがお礼言うんですか」
 そんなこと言いながらもあの子も身体を寄せてくれる。
「ん〜、何だか幸せだよねって感じたから。そうだ、パーティメンバーに里緒菜ちゃんを入れたらもっと一緒にいる様に感じられるよ?」
「どうですかね、それは…まぁ、すみれが私以外の人と、っていうのは考えてみると確かにいやですけど」
「うふふっ、そっかそっか」
「でも、自分で自分をイメージしたキャラメイクをするっていうのは…」
 まぁ、何だか気が引けるっていうか、微妙な気持ちになるっていうのは解るかな。
「じゃあ、それは私がしてあげる。頑張って里緒菜ちゃんのイメージ通りにしてみせるから、ねっ」
「そんな張り切ることじゃないですけど…じゃ、お願いします」
「うんうん、任せて任せて」
 でも、あの子は手にしてたゲーム機を私の反対側に置いちゃった。
「まぁ、それは後でいいじゃないですか。今は…すみれと、こうしていたいです」
 そうしてさらに身を寄せられちゃって…。
「…うん、そうだね、里緒菜ちゃん」
 さらに幸せな気持ちに包まれて、彼女のことをぎゅってするの。


    -fin-

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