翌日から里緒菜ちゃんは学校の期末試験。
 中間試験のときもそうしたんだけど、この期間は里緒菜ちゃんに会うのを我慢してる。
 『センパイは真面目ですね…』って呆れられちゃったし、そもそもあの子が午後とかちゃんと勉強してるのかはものすごく怪しいところなんだけど、それでも、ね?
 会えないのはちょっとさみしいけど、お仕事あるときも会えないんだし、学業も学生な彼女にとっては大事なお仕事なんだから、そこは我慢しなきゃ。
 もちろん私のほうはいつも通りの日常で特にお仕事の予定も入ってないから、午後はアルバイトへ向かう…んだけど。
「あれっ、麻美ちゃんだ…こんにちはっ」
 商店街を歩いてると、雑貨屋さんの前で見覚えるのある人影…一人でいるけど何だかとっても幸せそうな雰囲気を感じる子の姿を見つけたから声をかけてみたの。
「…きゃっ?」
「あっ、ごめんごめん、びっくりさせちゃったみたいだね。はいっ、じゃあこれ、お詫びの印…サクサク」
 びくってしちゃったその子…麻美ちゃんにチョコバーを渡してあげながら、自分も一つ食べちゃう。
「いえ、そんな、謝られることではありませんけれど…あ、ありがとうございます、山城さん」
「ううん、いいっていいって…でも、私のことはああ呼んでくれると嬉しいなぁ」
「あっ、ごめんなさい…えと、山城センパイ」
 麻美ちゃんはふとしたときに普通のさん付けに戻っちゃう…人を呼ぶときはそうって習慣づいてるんだろうけど。
「うん、それで私はアルバイトに行く途中だったんだけど、麻美ちゃんはお買い物? 何だかとっても幸せそうな顔してたけど…サクサクサク」
「えっ、私…そんな表情していましたか?」
「うん、まるで夏梛ちゃんと一緒にいるときみたいだったよ」
 今の彼女のそばにその恋人さんの姿はないんだけど、その子のことを考えたりしてたのかな。
「はい、あの…もうすぐクリスマスですから、夏梛ちゃんへのプレゼントを考えていて…」
「…クリスマス?」
 あの子のこと考えてたのは合ってたけど、不意な単語にちょっと首をかしげちゃう…って。
「あっ、そっか、クリスマスか…私には縁のない日だからすっかり忘れちゃってたよ」
 町を歩いたりしてたら普通に気づきそうなものなんだけど、そこまで意識が回ってなかったよ。
「山城センパイは、里緒菜さんとご一緒に過ごされないのですか?」
 と、今度は麻美ちゃんが首をかしげちゃった。
「ううん、もちろんそうしたいけど…そっかそっか、クリスマスか…」
 今年は大好きな人だけじゃなくって麻美ちゃんたち後輩もできたし、今までとは違う過ごしかたができるね。
「…あっ、みんなでパーティするのもいいかも。麻美ちゃんはどう思う?」
 こういう機会だし、梓センパイとか睦月さんとかも呼んでそうするのも楽しそう。
「えっと、私と夏梛ちゃんは、クリスマスの日にお仕事が入ってまして…」
 でも、麻美ちゃんはちょっと申し訳なさそうにそう言ってくるの。
「あっ、そうだったんだ…やっぱり二人はアイドルやってるし、そういう日はライブとかあるのかな?」
「はい…」
 夏梛ちゃんと麻美ちゃんのクリスマスライブかぁ…それはそれで気になるけど、会場遠そうだし行くのはちょっと難しいかな。
「それに、その…山城センパイは、里緒菜さんと二人きりで過ごしたいとは思わないんでしょうか…?」
 と、麻美ちゃん、少し言いづらそうにそう続けてきた。
「…へ? うん、私もそうしたいって思うけど、その前にパーティとかしてもいいんじゃないかな、って…」
 そこまで言ったところで今更ながらあることに気づく。
「…あ、でも里緒菜ちゃんは騒がしいの好きじゃないし、やめといたほうがいいのかな。梓センパイだって睦月さんと過ごしたいだろうし」
 私は里緒菜ちゃんにもっと色んな人とたくさん交流を持ってもらいたいって思ってるんだけど、でもあんまり無理させちゃいけないかな。
 それに、私たちにとってはじめてのクリスマスにもなるわけだし…うん、パーティとかはまたいつかの機会に、かな。
「それで、麻美ちゃんは夏梛ちゃんへのプレゼントを考えてたんだ。どう、決まった?」
 思い直したところで、改めてそうたずねてみた。
「いえ、それはまだ…何を贈れば夏梛ちゃんに喜んでもらえるかな、って思うととっても悩ましくって…」
 なるほど、お店の前で立ち止まってたのはこれについて考えてたのか。
 麻美ちゃんたちにとっても恋人になって迎えるはじめてのクリスマスになるんだし、悩むのも当たり前かな。
「そっか、でも麻美ちゃんからのプレゼントなら何でも喜んでくれるって思うよ。今の麻美ちゃん見てたら、気持ちがこもってるのはとっても伝わってくるし、なおさらだよ」
「そうでしょうか…ありがとうございます。でも、そうだとしても少しでも喜んでもらいたいですから…」
「好きな子へのプレゼントだもんね、そう思うのは当たり前か」
 うんうん、とうなずいてあげる。
 麻美ちゃん、ちょっと難しく考えすぎてる気もするけど、そういうことだししょうがないか。
「あの、山城センパイ…何を贈れば、夏梛ちゃんは一番喜んでくれるでしょうか」
 その印象は間違ってなかったみたいで、真剣な面持ちでそうたずねられちゃった。
「う〜ん、それは私には解んないかな…私より麻美ちゃんのほうが夏梛ちゃんのことよく知ってるって思うし」
「そ、そうですよね…うん」
 あぁ、麻美ちゃん、ちょっとしゅんとしちゃった。
「ごめんね、私も好きな人にプレゼント、なんて経験ないからいいアドバイスできなくって」
「そんな、こちらこそおかしなことを聞いてしまって…」
「ううん、何にもおかしいことなんてないって。でもね、さっき言ったとおり、麻美ちゃんの気持ちがこもってるものだったら大丈夫だって思うよっ」
 うん、これは間違いないし、だからあんまり難しく考えないで元気出してほしいな。
「あ、ありがとうございます」
 と、麻美ちゃんは少し微笑んできて…うん、大丈夫そうかな。
「私も里緒菜ちゃんへのプレゼント考えなきゃ…」
 試験勉強に対するものを用意しようって思ってたんだけど、ちょっとこっちをしっかり考えなきゃ…と。
「…って、そろそろアルバイト行かなきゃ。じゃ、麻美ちゃん、またねっ」
 そのことを思い出して、手を振って麻美ちゃんとお別れしたの。


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