「もうっ、里緒菜ちゃんはずるいんだから…ぶぅぶぅ」
「そうですか? 何がずるいのか、私にはよく解りませんけど」
 私が元の服に着替えて、それから里緒菜ちゃんが試着してみることになったんだけど…彼女が着替え終わったところで私はついあんな声をあげちゃった。
「そうだよ、里緒菜ちゃんはちゃっかり自分が似合うもの選んじゃって…」
「それは、私なら何でも似合うから好きなの選んでいい、ってすみれが言ったからじゃないですか」
「う、まぁ、それはそうなんだけど…ぶぅ」
 私はてっきり彼女もゴシック・ロリータな服を着るのかなって思ってたんだけど、このお店には他にも落ち着いたゴシック系の服もあって、あの子はそっちを着たの。
 まぁ、それを着たあの子はかわいくありながらかっこよくも感じられて、つまりとってもよく似合ってたからそれはそれでいいんだけど…。
「私も、こういう感じのもののほうがまだましだったんじゃないかなぁ…」
 似合う、とはさすがに言えないけど、少なくてもあんなかわいらしさを前面に押し出した服よりは、ねぇ。
「そうですね、確かにこういう服もよく似合いそうです。でも、さっきの服のほうがさらによく似合ってたって思いますけど」
「はぅ、それはさすがに言いすぎ…って、もうもうっ、だからそんなのあり得ないってば」
「そうでしょうか…ふふっ」
 もう、やっぱり私のことからかって楽しんでそう…ぶぅ。
 でも、それでも里緒菜ちゃんの笑顔を見ると幸せな気持ちになってどきどきしてきちゃうんだよね…。
「…すみれ、どうかしましたか? もしかして、私に見とれちゃいましたか?」
「はぅっ、そ、そんなこと…ある、けど」
 もう、あんな服装で、上目遣いで見つめられたりしたら、そうなっちゃうに決まってるじゃない…。
「ふふっ、やっぱりすみれはかわいいですね…私の着せ替えも楽しんでいたみたいですし」
「…へっ? も、もうっ、な、何言ってるのっ?」
 そりゃ、こんなきれいで大好きな子の服を着せ替えするのって…あぅ、確かに楽しんじゃってたかも。
「ほら、隠さなくってもいいんですよ?」
「べ、別に何にも隠してないって…!」
 でも、何だかとっても恥ずかしくって、思わずそう誤魔化しちゃったの。

「つまらないですね、結局買わないなんて」
 お店を出た里緒菜ちゃんの言葉通り、私は結局あの服を買わずに終わったの。
 ちなみに彼女も何も買ってないけど、それはあの服がちょっと高かったから…でも似合ってたのは間違いないし、いつかプレゼントしようかな。
「まぁ、いいんですけどね。写真は撮りましたし、それに…私以外の人にすみれのあの格好を見せるの、嫌かもですし」
「そ、そうだね、私も嫌かな…」
 というより恥ずかしくって絶対無理…でも、うん、里緒菜ちゃんにだけなら、いい、かも?

    -fin-

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