そうして迎えた日曜日はよく晴れて絶好のお出かけ日和。
「どうも、お待たせしました」
「ううん、時間ぴったりだし、今日はよろしくね」
 あの子の暮らす学生寮が敷地の中にあるってことで、その学校の正門前で待ち合わせ。
「はい、本当はこのままセンパイの部屋に行ってだらだらしたいんですけどね」
「もう、そんなこと言って…行きたいところ、あるんじゃないの?」
「はぁ、そうでしたね…しょうがありませんし、行きますか」
 あんまり気乗りしない様子で彼女が歩き出すから私も隣についてくけど、もちろんあの本気で面倒くさがってるわけじゃなくってキャラ付けみたいなもの…少なくても半分は。
「もう、里緒菜ちゃんったら…ほら、チョコバー食べて元気出して?」
「はぁ、ありがとうございます」
 あの子にチョコバーを差し出して、それから改めて自分の分も手にする。
「サクサクサク…こんないいお天気だし、外を歩くのも気持ちいいでしょ?」
「サクサク…まぁ、悪くはないです」
 うんうん、春先にも一緒にお散歩したけど、こうやって歩いてるだけで幸せを感じちゃう。
「それで、今日はどこに行くのかな…サクサクサク」
 特に今日はあの子からのお誘い、ってことで、より楽しみになってきちゃう。
「あぁ、そういえば言ってませんでしたっけ」
「うんうん、結局当日を楽しみに、ってことにされちゃって」
「ん〜、まぁ、あれです、夏梛さんに教えてもらったお店へ行こうと思いまして」
「…夏梛ちゃんに?」
「はい、夏梛さん行きつけのお店で、この前麻美さんを連れていった、という話を聞きまして…」
「それで里緒菜ちゃんも行ってみたい、って思ったわけ?」
「まぁ、そんなところです」
「そっか…ふふっ」
「…何ですか」
 思わず微笑んじゃった私にあの子はちょっと怪訝な表情になる。
「ううん、何でもないっ」
「はぁ…まぁいいですけど。センパイがよく解らないことでにこにこするのはいつものことですし」
「わっ、ひどいよ〜…ぶぅ」
 私が笑顔になるのは、里緒菜ちゃんと一緒にいるからっていうのももちろんあるけど、他にもちゃんと理由あるのに。
 今のだって、里緒菜ちゃんが夏梛ちゃんたちと仲良くなってるのが感じられて微笑ましくなったからだし。
 そう、あんまり他の子と接しようとしない里緒菜ちゃんにはもっとみんなと仲良くなってほしい、って思ってるのに、この間みたいに何ともいえない気持ちになっちゃうこともあるんだよね…何だろ。
「…センパイ、どうかしましたか?」
「あっ、ううん、何でもないよ」
 今は里緒菜ちゃんとのお出かけを楽しむことだけを考えようかな…夏梛ちゃん行きつけのお店ってどんなとこなんだろ。

「…って、きたかったお店って、ここ?」
「はい、そうですよ?」
 目的地にたどり着いて、そのお店の中へ入ったところで私は固まっちゃった。
「え、え〜と…」
 何とか何かを言おうとするんだけど、うまく言葉が出てこない…。
 それはもちろん、こうしてやってきたお店が原因で…いや、服のお店なんだけど、ちょっと特殊っていっていい服が並んでる。
「…か、夏梛ちゃん行きつけのお店って、こういうことかぁ…」
「はい、そういうことでした」
 呆然とする私を見るあの子は何だか楽しそう…ぶぅ、私がこういう反応するのを見たいと思って黙ってたみたい。
 で、そんな落ち着いた雰囲気のこのお店は、いつも夏梛ちゃんが着てる様な…ゴシック・ロリータって服を売ってるお店だったの。
 こういうのって夏梛ちゃんみたいな子には確かに似合うんだけど、私には場違いすぎる…。
「…あっ、なるほど、里緒菜ちゃんが着るものを探しにきたんだ」
 うんうん、それなら納得…彼女にならとってもよく似合いそう。
「まぁ、センパイが着てほしいっていうなら私も着ますけど、センパイに着てもらおうと思ってきたんですよ?」
「え…えぇ〜っ!」
 お店の中に私の声が響き渡っちゃった。
「…もう、センパイったら、静かにしてくださいよね」
「あぅ…ご、ごめん」
 ただでさえ静かな店内、気をつけなきゃ…と、それはそのとおりなんだけど。
「で、でも、里緒菜ちゃんも悪いんだよ? あんな冗談言うから…」
「はい? 私は何も冗談を言った覚えはないんですけど」
 そう答える彼女の表情はいたって真面目…なんだけど。
「そんなこと言って…私にこのお店の服を着せるなんて、からかってるでしょ」
「いえいえ、そんなことはありません。私はいたって真面目です」
 さらに自分からもあんなこと言ってきたけど、やっぱり信じられない。
 だって…ねぇ?
「じゃあ…私にこういう服装が似合う、って本気で思ってたりするの?」
「はい、もちろんです。それが見たくて今日はここにきたんですから」
「…本当に本気なの? 私なんて女の子らしくないって自分でも解ってるし、背だってちょっと高いし…そんな私にこんなかわいい服、似合うわけないって思うんだけど」
 うん、普通に考えたらそうに決まってるんだよね…。
「何を言うかと思えば…センパイは本当、解ってませんね」
 って、あれっ、ため息つかれちゃった?
「すみれはとっても女の子らしくってかわいいですよ?」
「…へ? ちょっ、り、里緒菜ちゃんったら何言って…へ、変な冗談言わないでよねっ?」
 あまりな言葉に赤くなってあたふたしちゃう。
「ですから、私は冗談なんて言ってないって何度言ったら解るんですか…。そんなに、私のことが信じられませんか?」
「…うっ。え、え〜と、それは…」
 ちょっと上目遣いに見つめられちゃいながらあんなこと言われて、思わず言葉を詰まらせちゃう。
「…どうなんですか?」
「うぅ…そ、そんなことない、里緒菜ちゃんがそう言うんなら、信じるよ」
 そんな風にされちゃったら、疑問が残っててもうなずくしかなくなっちゃうよね…。
「それならよかったです。じゃあ、さっそくすみれに似合いそうなものを選んであげますね」
「う、うん…」
 里緒菜ちゃんが私のために何かを選んでくれる、っていうことなんだから喜ぶべき、かな。

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