第6.05章
―もうすぐ十月も終わり、お昼でもだいぶ涼しくなってきた街を歩いてく。
今日はお仕事があるからアルバイトはお休み、さらに里緒菜ちゃんは別のところでお仕事やってるから会えないんだけど、それでも私の足取りは軽い。
それはもう、ここ最近はあの子とアニメで共演できてるばかりじゃなく、さらに一緒のステージに立てるってなったからで、一緒にいられるときはそれへの向けての練習したりしてる。
そんな毎日がとっても楽しくって、幸せで…だから、少し会えないくらい我慢できる。
ん〜っ、そんな私の気持ちに合わせてか、街も何だかいつもよりにぎやかに感じられるねっ。
事務所で打ち合わせとかして、一息ついたところでスタジオに行ってみるとそこには見知った子たちの姿。
「あっ、夏梛ちゃんに麻美ちゃん、こんにちはっ」
「すみれセンパイ…ですです、こんにちはです」「こんにちは」
そこにいたのは、最近は私と里緒菜ちゃんのステージのためにダンスとかを教えてくれたりしてる後輩な二人。
「うん、でも…二人とも、何してるの?」
麻美ちゃんが夏梛ちゃんの後ろに立って、彼女の長くていつもはツインテールにしてる髪をいじってたの。
それに、夏梛ちゃんはいつものゴシック・ロリータなものとは違う、でもあんまり普段歩いてて見る様なものじゃない服を着てるし…う〜ん?
「あっ、えと、夏梛ちゃんに似合う格好や髪形は何かな、って着せ替えしてて…」
「そうなんだ? じゃあ私はお邪魔だったかな」
「わわっ、そんなことないですし、麻美も説明が悪い悪いです! それじゃあただ楽しんでこんなことしてるだけに聞こえます」
「ご、ごめんね、夏梛ちゃん…楽しんでたのも事実だけど…」
麻美ちゃん、最後に小声でそんなこと付け加えちゃう。
「ん〜と、そうじゃないの?」
「ち、違います違います、あくまであくまでお仕事でそういうのがあって…」
そうして説明してくれる夏梛ちゃんの言うところによると、二人は月末にイベントに出るお仕事があるそうなんだけど、その際の衣装を自分たちで考える、ってことになってるそう。
「それなら、夏梛ちゃんはいつものでいい気もするけど…」
彼女といえばゴシック・ロリータな服装、ってイメージが完全についてるものね。
「でもでも、そのイベントはハロウィンですから…」
「…ハロウィン?」
何やら聞き慣れぬ単語に一瞬戸惑っちゃうけど…。
「…あぁ、なるほど、そっかそっか、うん、納得」
そういえばここ数年、ずいぶん盛んになってきたよね、って思い出す。
それなら今の仮装っぽく見える夏梛ちゃんの服装も解る…いや、仮装そのものだもんね。
「ですから、夏梛ちゃんに一番似合う、かわいい格好を考えなきゃいけないんです」
そんなこと言う麻美ちゃんはちょっと気合いが入った様子。
「でも、二人で出るイベントだっていうんなら、麻美ちゃんの衣装も用意しなきゃいけないんじゃないの?」
「ですです、私の次は麻美に似合うものを用意用意してあげますから、覚悟覚悟しておいてくださいね?」
「わっ、か、夏梛ちゃん、何だか怖いんだけど…」
二人のやり取りは微笑ましくって見ててこっちもほんわかした気持ちになってくる。
それにしても、ハロウィンか…町がにぎやかだったのもそれの影響だったのかな、全然気がつかなかったけど。
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