「里緒菜ちゃん、午前中はずっとぼ〜っとしてるつもりだったんだ…むぅ」
「いいじゃないですか、皆さんがそうしてていい、って言ってくれたんですから」
私がきてもあの子が出場する種目はない、ってことで、午前中は結局あの木の下で一緒に見学しながらお話ししてるうちに終わっちゃった。
で、お昼を迎えたんだけど、今日はお弁当とかないから、そんなこと話しながら高等部の学食へ向かってるの。
「でも、私も学食で食事しても大丈夫なのかな?」
「しょうがないじゃないですか、センパイがくるなんて思ってませんでしたからお弁当も作ってないんですし」
ってことは、私がくるって解ってたらお弁当作ってくれてたってことになって、嬉しい…じゃなくって。
「いや、私ってここの生徒じゃないから、なのにいいのかな、って」
ここの学食ってお金がいらないってことだから、なおさら気になっちゃう。
「あぁ、そういうことでしたか。普段はどうか知りませんけど、今日はセンパイ以外にも外部の人きてますし問題ありませんよ」
「そっか、ならよかった」
保護者な見学の人なら大抵お弁当持ってきてそうだけど、とにかくそういうことなら安心。
そうしてやってきた高等部の学食は、実はこれまでにも何度かきたことのあった場所。
あれは夏休み、秘密の場所で彼女と一緒に練習してたとき…お昼のお弁当は、この学食で食べてたの。
あのときは私とあの子以外に誰もいなかったんだけど、今日はたくさんの子の姿があって賑やか。
しかもみんな体操服姿だから何ていうかちょっと不思議な光景…私、それに他にもちょっとだけ私服姿の人や制服な子もいて、そっちはちょっと浮いてるかも。
学食のメニューはさすがっていうか、レストラン並になってて、私とあの子は同じランチセットを取って空いてる席に着く。
「…ふぅ、疲れました」
「って、里緒菜ちゃん、何もしてないのに」
「立ってるだけで十分だるいですって」
「…ふふっ、そうかもね。じゃ、ごはんにしよっか…いただきます」
「はい、いただきます」
椅子が二つな丸いテーブル、お互い向かい合うかたちで座って食事をはじめる。
うん、味のほうもおいしいけど、やっぱり里緒菜ちゃんの作ってくれるお弁当のほうがもっとおいしいかな。
「センパイはぼ〜っとしてるの苦手だって思いますけど、午前中はよく我慢できましたね」
と、のんびり食事をしながらあの子がそんなこと言ってきた。
「ぶぅ、私はぼ〜っとなんてしてなかったから。競技ちゃんと見てたし、それに里緒菜ちゃんとも色々お話ししたじゃない」
「あれっ、そうでしたっけ?」
「そうだよっ、もう…ぶぅぶぅ!」
もしかして里緒菜ちゃん、あのときのって生返事とかそんなのだったんじゃ…。
「ふふっ、それは冗談ですけど、何かセンパイって自分が参加したそうにしてましたよね。よくあんなめんどくさいことを自分からしたいとか思えますね…」
「えぇ〜、そんなにおかしいことかなぁ?」
というより、私ってそんな風に見えてたんだ…いや、実際そうだったんだけども。
「はい、おかしいですし、それに残念ですけどセンパイが参加できる競技はありませんよ」
うぅ、断言されちゃった…と、それはまぁそれとして。
「う〜ん、それは残念…だけど、いいかな。今日はあくまで里緒菜ちゃんの応援だから」
参加できるならしたかったけど、そうじゃなくってもそれで十分。
「応援する様なことも何もしてませんけどね?」
「あぅ、確かに午前中は何もなかったけど、午後には出る種目あるんだよね?」
「まぁ、一つだけですけど」
それってやっぱりさみしくも感じるけど、何も出ないよりはいい。
「それでそれで、何に出るの? いつくらいから?」
「…一番最後、でしょうか」
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