里緒菜ちゃんの願いも空しく、日曜日は快晴で絶好の体育祭日和。
昨日は練習もお休みにしたし、あの子も体調は大丈夫だって思うけど、とっても嫌そうだったしちょっと心配。
「…うぅ、やっぱり気になっちゃう」
そういうわけで、お散歩がてらあの子の通う学校のそばにまできちゃう。
あの子にはかなり念を押されてこないで、って言われてるけど、これはただのお散歩で中にまで入るつもりはないから…。
ゆっくり歩きながら耳を澄ませてみると、学校の敷地内からは歓声とか聞こえてきて、どうやらもうはじまってるみたい。
さすがにあの子がどうしてるかまでは解んないけど、場の空気を感じてちょっとだけ安心できたかな。
うん、じゃあこのままお散歩して、一度帰ろうかな。
そう思って、正門の前を通り過ぎてその場を後にしよう…としたんだけど。
「…あっ、すみれさん?」「えっ…あ、本当です。どこへ行かれるんですか?」
正門のほうから私のことを呼ぶ声がしたから、足を止めてそっちを見てみる。
そこにはあの学校の制服着た女の子が数人いて…私のこと呼んできたし見覚えもあるし、あの喫茶店によくきてくれてる子たちみたい。
「えっと、おはよ。私は散歩してるだけだけど、みんなはどうしたの? 体育祭じゃなかったっけ」
その子たちへ歩み寄ってそう声をかけてみる。
「はい、ですからその受付係をしています」「けど…すみれさま、お散歩って、里緒菜さまのことを見にいらしたのではないのですか?」
「えっ、でもここって関係者以外は入れないんでしょ?」
「そんな、何をおっしゃって…すみれさんは関係者じゃありませんか」「そうです、里緒菜さまの恋人さんなんですもの」
あ、この子たち、あのとき喫茶店で私たちが口づけしたとこ見てたみたい。
「え〜と、でも…ほんとにいいの?」
「もちろんです…さぁ、どうぞ」
う〜ん、どうしよ…入れる様になるなんて思ってなかったよ。
あの子にはこない様に言われてたけど、やっぱり気になるし…。
「…うん、じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」
里緒菜ちゃんの通う学校の敷地の中、久しぶりに入った気がする。
夏休みの頃は頻繁にきてたけど、二学期に入ってからは遠慮してたものね…。
そんな場所で目指すのはもちろん体育祭の行われてるグラウンド…なんだけど。
「何か思ってた以上に盛り上がってるっていうか、賑やかだなぁ」
正門を抜けてすぐにそう感じたの。
保護者の人がメインなんだろうけど、思ったより生徒以外の人の姿も多いし、それに何か私の学校であった体育祭に較べて違和感があるんだよね…何だろ。
「…あ、そっか、この学校、小中高一貫のとこなんだっけ」
この間行った麻美ちゃんの学校の学園祭もそういうことで一緒にやってたみたいなんだけど、分校なこっちの学校もそういうことで一緒にやってるみたいで小さな子の姿とかあるの。
体育祭も合同か…それじゃどこでやってるのか気になったけど、そこはちゃんと案内図が出てて、それによると各学校のグラウンドの他に合同用のグラウンドもあるらしくってそこでやってるみたい。
さっそく向かってみたけど、そこはとっても広いグラウンドで、複数の競技を同時に何個もやっちゃってるほど。
その分見学してる子の姿も多くって賑やかなんだけど、この中からあの子を探すっていうのはちょっと大変そう…どうしようかな。
「…あれっ、そこにいるのって、山城さんですか?」
焦らず探そうかな、って考えてるとまた誰かが声をかけてきた。
見ると、今度は体操服姿な女の子…高校生くらいの見たことある子で、やっぱりまたあの喫茶店のお客さん。
「山城さんもいらしてたんですね…片桐さんの応援ですか?」
「うん、そんなとこ。里緒菜ちゃんってどこにいるか知ってる?」
私たちの関係も知ってるみたいで、ちょうどいいからそうたずねてみたの。
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