夏梛ちゃんと麻美ちゃんが今日この学園祭でライブをする、ってことは秘密になってる…サプライズゲスト、ってやつだね。
 だから、そのこと知ってるのはお客さんの中では私たち二人だけ、ってことになるのかも。
 そんなわけだからもちろんパンフレットにある講堂で行われる催し物のスケジュールにも書かれてないんだけど、あの二人に聞いた話だと最後に行われるっていうから、スケジュールに書かれた最後の催し物がはじまる少し前に講堂へ入っておいた。
「うわ、講堂の中も広い…けど、もういっぱいだね…」
「…あ、でもあそこ、まだ席が空いてますよ?」
 里緒菜ちゃんが見つけてくれた席へ二人並んで座って、まずはそのスケジュール上で最後になってる催し物を待つ。
「学園祭の最後を飾りますのは、皆さんお待ちかね、明翠女学園の歌姫こと草鹿彩菜さんと明翠・燈星両学園の生徒会によるスペシャルライブですぅ!」
 かわいらしい司会の子によって進行されるそれは、ここの学校の前生徒会長さんだっていうかっこいい子が歌うライブ…だったんだけど。
「うわ、すごい…」「この草鹿彩菜って人、ちょっと上手すぎですね…」
 その圧倒的っていえるほどの歌唱力にびっくりしちゃった…会場が歓声に包まれるのもよく解る。
 でも、これじゃ次の二人、特に麻美ちゃんはものすごく緊張しちゃうんじゃ、って心配にもなる…けど、大丈夫か。
 だって、想いあう二人で一緒に舞台へ立つんだもん…それはもう無敵だよね。

「これで草鹿彩菜さんと明翠・燈星両生徒会によるスペシャルライブを終了します」
 大歓声のうちにライブは終わって、司会の女の子の声が会場に届く。
「では、本日の演目は…って、あれっ? 次のページがありますけど、こんなの予定に…え、ふぇっ!?」
 と、そのアナウンスが戸惑った声あげるものだから、会場のみんなもざわつきはじめた…司会の子も知らされてなかったんだ。
「え、えっと…つ、次はスペシャルゲスト『かなさまとアサミーナ』のライブですぅ!」
 叫ぶかの様なその子の声とともに、舞台上に手を繋いだ二人の女の子が躍り出てきた。
 一人はゴスいおよーふく姿の、もう一人はここの学校の制服姿…会場のみんなもそれが誰なのか解ったみたいで歓声が沸きあがるの。
「み、皆さん、今日は私と夏梛ちゃんのライブ、楽しんでくださいね?」
 さらに一歩前に出て挨拶をするのは、ちょっと緊張した様子の麻美ちゃん…こういうときっていつもは夏梛ちゃんから挨拶してるっていうけど、ここは麻美ちゃんの母校だものね。

 麻美ちゃんにとってはまさに凱旋ライブになったこのライブ。
 あの美紗さんが麻美ちゃんのお友達だったみたいで舞台に上がってきたり、夏梛ちゃんがその美紗さんのことを小学生に間違えちゃったりしてた。
 さらにその美紗さんに関係をたずねられた夏梛ちゃんと麻美ちゃん、みんなの前で口づけしちゃったりして、会場は大盛り上がり。
 そんな中でいよいよ二人が曲を披露してくけど、二人の晴れ姿をこうやってしっかり見るの、あの夏祭りの日以来になるのか。
「二人とも、この前よりずっと動きがよくなってますね…」
「ん、そうだよね、ものすごく生き生きしてるのが、こっちにも伝わってくるよ」
 あの日の二人もよかったんだけど、今日の二人は完全にそれ以上。
 あれからさらに練習とかした、ってことももちろんあるだろうって思うけど、これはやっぱり、二人の想いが前よりもさらに強く結びついてるんだって感じるよ。
 そういえば、前のライブの頃は二人、まだ恋人ってわけじゃなかったんだっけ…。
「…羨ましいかも、やっぱ」
「え…センパイ、何か言いましたか?」
「う、ううん、何でもないよ?」
 思わず出た言葉…里緒菜ちゃんにはああ答えたけど、二人のライブ見て一番感じちゃったのはまさにそのこと。
 やっぱり、想いあう二人が一緒になってああしてるのを見ると、心まで一つになってるみたいで…私たちも、って思っちゃうの。


    (第5章・完/第6章へ)

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