それからも二人でのんびり校舎の中を回ってみて。
「わぁ、ここが里緒菜ちゃんのクラスなんだね」
「そうですけど、別に普通の教室ですよ」
 彼女が普段授業を受けてる教室へやってきた。
「それはそうだけど、でもやっぱり里緒菜ちゃんがいつもいる場所にこれたってだけで嬉しいの」
「そんなものですかね…」
 彼女は私から手を離すと、窓際の一番後ろな席へ座る。
「あ、もしかしてそこが里緒菜ちゃんの席?」
「まぁ、そうですね」
「うん、そっかそっか、イメージ通りかも」
「どういうイメージですか…」
 どういうって、窓の外をクールな表情で眺めてる、ってとこ?
 で、今の彼女もまさにそんな感じ…さらに夕焼けってことで、とっても画になってる。
「…センパイ、どうしました? ぼーっとしたりして…もしかして、私に見とれてました?」
「…へっ? あ、え〜と…うん、そうだね」
「そ、そうですか、ありがとうございます」
 うん、ちょっと顔を赤らめる彼女もやっぱりきれいで見とれちゃう…とともに、ある気持ちが浮かんじゃう。
「…里緒菜ちゃんと一緒の学校通えたら、楽しそうだなぁ」
「いきなりですね…センパイの学校生活、楽しくなかったんですか?」
「ううん、そんなことない、楽しかったよ。でもほら、好きな子と一緒の、ってなるとまた違うじゃない」
「そう、ですね…。センパイと一緒の学校生活、ですか…」
 今みたいに先輩後輩でも、同級生でも、やっぱり毎日楽しくて幸せそう。
「…めんどくさそうですね。まぁ、悪くもなさそうですけど」
 あの子もそういう光景を想像してくれたみたい。
「ただ、実際私たちが同じ学校通ってたとしたら、何の接点もなく終わりそうですけどね」
「え…えぇ〜っ、そうかなぁ?」
「そりゃそうです、少し考えたら解りそうなものですけど」
 そう言われると…う〜ん、確かに何か大きなきっかけがないとそうなっちゃうのかも。
「なら、今こうして一緒にいられる関係になってるってことに感謝しなきゃ、だね」
「そうですね…ふふっ」
 夕焼けの教室、制服姿で微笑むあの子…ちょっと、ううんとっても魅力的でどきどきしちゃう。
「…こうやって恋人と二人、誰もいない教室にいると、不思議な気持ちになってきますね」
 と、私の心を読んだかの様に、彼女は席を立って私へ歩み寄ってきた。
「ふふっ、センパイ…」
「わっ…里緒菜、ちゃん」
 そっと抱きついてくる彼女を抱きとめる。
「センパイ…好きです」
「うん、私も…大好き、だよ」
 見つめてくる彼女の顔に吸い寄せられる様に…唇を重ねる。
 幸せでとろけちゃいそうになって、さらにぎゅって彼女を抱きしめ…って!
「わっ、だ、ダメだよっ、教室でこんなことしちゃ!」
 何とか我に返って、慌てて彼女を引きはがす。
「えぇ〜、いいじゃないですか。ゲームとかだとよくあることですよ」
「も、もう、ダメだってば、誰かくるかもしれないし…!」
「もう…しょうがないですね。じゃあ、そろそろ帰りましょうか」
 ふぅ、里緒菜ちゃんも解ってくれたみたいでよかったよかった。
「まぁ、センパイのそんな真面目なところも、好きですよ」
「…はうっ」
 もうっ、そんなこと言われて微笑まれちゃうと、またどきどきが大きくなっちゃう。
「それで、センパイ…今日は、泊っていきますか?」
 さらに見つめられながらあんなこと言われたりして…うぅ、この気持ち、抑えきれるかな。


    -fin-

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