「如月さんはいませんでしたけど…何だか、結構祝福されちゃいましたね」
「うん、何だか嬉しいね」
 事務所を後にして学校への帰り道、そんな会話を交わす私たち。
 美亜さんや梓センパイ、それに事務所にいた他の人たちも私たちの関係を祝ってくれたの。
「正直なところ、女の子同士なのとか、ほんの少しだけ周りからどう見られるか不安だったんですけど…」
「私たちの周りにはすでに夏梛ちゃんと麻美ちゃん、っていうカップルがいるから、特に違和感なかったのかも」
 美亜さんは元々そういうの好きな人だし…梓センパイは、睦月さんのこと好きみたいだよね。
「…でも、全ての人が受け入れてくれるわけは、ないですよね。まぁ、他の人にどう思われようが、別にいいんですけど」
 うん、私もそう思う…彼女のことが好きっていうこの想いは、他の人に変えられたりできるほど弱いものじゃないもん。
「大丈夫、何かあったら私が守ってあげるもんっ」
「ありがとうございます…けど、無理しないでくださいね? センパイだって女の子なんですし、それに何か無茶しそうなイメージありますから」
「むぅ〜、それってどんなイメージかな…ぶぅぶぅ!」
 お互い笑いあっちゃうけど、そんなことしてる間に彼女の通う、そして学生寮のある学校の校門に着いちゃった。
「…センパイ、今日は帰っちゃうんですか?」
「うん、さすがに連日、それに準備なしで、ってのはね」
 門の前で足を止めるけど…うぅ、ただ自分の家へ帰るのがここまでつらく思えちゃうなんて…!
「センパイ…さみしい、って思ってます?」
「うぅ〜、そんなこと…里緒菜ちゃんこそ、そうなんじゃないの?」
「私は…まぁ…」
 あたりが真っ暗なこともあいまって、よりそんな、口にしなくっても解ってる気持ちが大きくなってきちゃう。
「う〜…今度はちゃんと準備してお泊りにくるし、逆に里緒菜ちゃんが私の家にくるのも大歓迎なんだよっ」
「あ、それいいですね…センパイのお部屋がどんななのか、気になります。何か面白いものもあったりして」
「面白いものって?」
「それはもう…口では言えない様な?」
「むぅ〜、何それっ。そんなのあるわけないよ…ぶぅぶぅ!」
「そうですね、センパイが変なもの持ってるなんて、イメージわきません」
 全く、変なものって何なのかな…でも、お互い笑いあったりして、空気がちょっと和んだ。
 よしっ、この楽しい気持ちのまま、明日を迎えよっ。
「じゃ、里緒菜ちゃん…今日は色々ありがとっ」
「い、いえ、こちらこそ…」
 …うぅ〜、やっぱりダメだ、どうしても名残惜しくなっちゃう。
「また明日くるから…」
 そう、また明日会うことができる…んだけど、やっぱり我慢できないっ。
「里緒菜ちゃん…んっ」
「えっ、センパ…んんっ」
 愛しい、離れたくないって想いがあふれちゃって、思わず彼女を抱き寄せて口づけしちゃう。
 彼女からも身を預けてきて、しばらくそのまま…うん、想いは一緒だから、少し離れるくらい、大丈夫っ。


    (第2章・完/第3章へ)

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