〜もっと未来からやってきた少女〜

「う〜ん、まずいすとしたら、ここだと思うんだけど…」
 ―無事にこの世界にたどり着くことができて、ゆっくりと降り立った場所。
 そこは今も昔も変わらないお社だけど、やっぱり何だか懐かしい空気を感じる…って、懐かしんでる場合じゃないっけ。
「この時間軸で間違いないはずなんだけど…セニア…」
 元々いる時間とは別の時間へ行ったっきり戻ってこなくなっちゃった双子の妹のことを思って、心配になります。
 時間移動…それはもちろん無闇に使っちゃいけないものなんですけど…。
「迷子、かな…遅いから、迎えにきたけど…」
 うん、大切な妹のためだもの、今回は…いいよね?
「…あれっ?」
 と、そのとき、お社の境内に不自然に置いてあるダンボールに気づいたの。
 なぜだか、その中から視線を感じる気が…。
「…はっ、これってもしかして…」
 そういえばこの時間軸って、ちょうどまだ子供だった頃にきたときと同じ…。
 そして、その頃の妹はダンボールの中に入るのが好きで…つまり、今この目の前にあるのって…。
「ど、どうしよう、え〜と…お、お会いして、いいのかな…?」
 こういう事態について考えていませんでしたから、おろおろしてしまいます。
「…ふにゅー。道場破りにゃの…名を名乗るにょ」
 ダンボールの中からかわいい声が…あ、やっぱり、間違いない…。
「ん、んしょ…!」
 ダンボールを持ち上げると、そこには小さな女の子の姿。
 ちょっと縦に長めの猫耳や、独特なオッドアイとか、間違いなく探している妹…の、幼い頃の姿です。
「こ、ここ、こんにちは…。ティ…ううん、わたしは、えっと…」
 まさか自分が誰なのか言うわけにもいかず、言葉を詰まらせてしまいながらもどきどきしてしまいます。
「ふにゅっ!? セニアに気がつくにゃんて…ただものじゃないにゃ?」
 ダンボールを持ち上げたことに驚かれちゃいましたけど…。
「わ…小さいときのセニア、かわいい…」
 ますますどきどきしちゃって、そんなことつぶやいちゃいます。
「ふにゃっ!? か、かわいくにゃんかにゃいもん!」
 あ、真っ赤になっちゃった。
「ううん、セニアはとってもかわいいよっ? 昔から、ずっとそう思ってたもん…」
「ふ、ふにゅ! あんまり言うと叩くにょ!」
 照れたみたいにぺしぺしと叩いてきますけど、痛くはないですしむしろ…。
「わっ、セニアったら…うん、かわいい…」
 ほわんってしちゃって、思わずしゃがみこんでなでなでしちゃいます。
「は、はうぅ…」
 セニアも気持ちよさそう…だけど。
「セ、セニア子供じゃにゃいもん!」
 はっとした様子になってあたふたとそう言われちゃいます。
「あっ、えっと、ご、ごめんね…?」
 でもなでなでする手が止められません。
「うにゅ〜…」
 じぃ〜っと見つめられちゃったりして…。
「え、えっと、どうしたの…?」
「うにゅ〜…」
 何だか不満そう…なでなでされるの、そんな嫌だったかな…?

 思わぬ出会いに和んじゃったけど、ここへきた目的は幼い頃の妹に会うためじゃありません。
「そうだ、ちょっと聞きたいことがあるの。ティ…わたしと同い年くらいで、あなたと同じ耳をした人、見ませんでしたか?」
 この時間軸なのは確かみたいですから、一応聞いておくことにしました。
「ふにゅ? そういえばティナおねーにゃんと一緒にいたおねえちゃんが、セニアとお揃いだった気がするにゃ」
「ティナお姉さん、と…そうなんだ。やっぱりきてるみたい…もう少し探してみよう…」
 でも、ティナお姉さんと何してたのかな…?
「…猫耳流行ってるのかにゃー?」
 と、こちらの頭上を見てそんなこと言われます。
「え、えっと、これは…流行ってる、のかな…?」
「そういえあ、おねえちゃんもおねーにゃんとお揃いにゃ?」
 じぃ〜っと見られちゃいますけど、そういえばティナお姉さんのことだけは「おねーにゃん」って呼んでる…。
「ふにゅ、まねっこにゃの…」
 と、何だか不満げにされちゃいました。
「えっ、ど、どうしたの、そんな不満そうになって…」
 もしかして、ティナお姉さんの真似をしていると思って…?
 猫耳なかたって他にも少なからずいますのに、ああ思うなんて、セニアはやっぱりこの頃からティナお姉さんのことが好きなんですね…。
 微笑ましく、かわいくもあって…ほんの少し、さみしくもなりました。
「う、ううん、そんなことないから…これは元々、なんだよ?」
 昔のあの子でも大好きなあの子なのは同じで、そんな彼女にそんな顔してもらいたくなくって、やさしくなでなでしてあげるのでした。


    -fin-

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