〜盛夏の一コマ(いちごさん編)〜

 ―学校も夏休みに入って、ほとんどの生徒さんは帰省とか旅行とか色んな理由で学生寮を後にしちゃいました。
 でも、私…松永いちごは夏休みに入ってからも人のめっきり少なくなった学園で過ごしてます。
 もちろん夜に眠ったりするのは学生寮の自分のお部屋ですけど、日中のほとんどの時間を過ごしているのは、やっぱりあの場所です。
「さてと、今日も練習を頑張りましょう」
 ひと気のない校舎の一室、上映室の隣のスタジオに入って気合を入れます。
 外は今日もものすごく暑いですけど、スタジオを含めてほとんどの教室にエアコンがついているのはありがたいです…特にスタジオは防音の関係とかから窓もない密閉された空間ですし、エアコンがなかったら使い物にならないですよね。
「ん〜、こほんっ」
 現在声優さん、それにアイドルとしても活動してますアサミーナこと石川麻美先輩もかつて使っていたというこのスタジオで私が一人するのは、もちろんその先輩と同じ道を歩むための練習です。
 この夏休み、お姉さまに近づくために錬金術の練習とかもしてますけど、やっぱりメインはこっちです。
 そういえば、錬金術をするときに着る服、今まで使っていたのはどうも悪しき錬金術士のものだったみたいなんですよね…他のものにしたいんですけど、どうしましょうか。
 やっぱり、こういうのはお姉さまにご相談するのが一番でしょうか…着せ替え人形にされちゃいそうな気もしますけど。
「…は、はわっ、練習に集中しましょう!」

 午前中からずっと練習ですけど、さすがにそれじゃ疲れますし喉も痛めちゃいます。
「ふぅ…今期のアニメはやっぱり『スト魔女』の第二期に限るでしょうか」
 ですから、お昼時はスタジオの隣の上映室でアニメとか吹き替えな洋画を観ながら、自分で作ってきたお弁当を食べます。
 それからはちょっとまったりした時間…副ヘッドさんがよく読んでます声優さんの雑誌でも読みましょうか。
「って、これはもともと私が読んでたのを副ヘッドさんに見せてあげたんですよ?」
 お部屋から持ってきた鞄から最新号を取り出しながらそんなことを言っちゃいますけど、そういえば最近副ヘッドさんにも会わないです…帰省でもしてるんでしょうか。
「…あれっ、でも確か副ヘッドさんってただの人間じゃなくって…」
 う〜ん、気になりましたけど考えてもしょうがないですし、考えないでおきましょう。
「なるほどです、かな様の公式ファンクラブが発足したんですね…」
 雑誌を読み進めていきますと、そんな記事が目に留まりました。
 かな様こと灯月夏椰さんはアサミーナとユニットを組んでる声優さんなんですけど、前にここで実際にお会いできたんですよね…夢みたいなことです。
 かな様のファンクラブでしたら、私も入ってみていいかもですね…あれっ、でもアサミーナのファンクラブはないんですね。
 確かにかな様のほうが活躍してますし知名度ありそうですけど、ちょっとさみしいですぅ…。
「…って、ふぇっ?」
 雑誌を読んでますと突然上映室に重大な異変が発生しまして、思わずきょろきょろしちゃいました。
 何が起きたかっていいますと、突然照明が消え、エアコンも止まっちゃったんです。
 まさか、副ヘッドさんあたりの悪戯…とも思ったんですけど、あたりを見回しても誰かがいる様子はありません。
 さらに照明のスイッチを見ましても、ちゃんと「入」の状態になってました。
「う〜ん、じゃあ…停電?」
 外は相変わらず晴れてるのに…と、そういえば、夏休みの中の一日だけ、設備点検のために数時間の停電がある、という話がありましたっけ。
 正確な日にちは忘れちゃってましたけど、今日だったんですか…。
「…はぅ、暑くなってきました」
 エアコンの止まった数時間をここで過ごすのはきつそうですし、ならいっそのこと…。

「…誰もいないですね」
 校舎を出ました私がやってきましたのはプールです。
 もちろん更衣室で着替えまして、今の私は学校指定の水着である紺色のスクール水着…指定のものとはいえちょっと恥ずかしいんですけど、誰もいなくてよかったです。
「それにしても…」
 プールサイドがちょっと汚い気がしちゃいます…お休み前にお掃除したんですけど、あの後一時的な大雨があったりしましたし、しょうがないでしょうか。
 …ちなみに、私は「ゲリラ豪雨」って表現はちょっと好きになれません。
「しょうがないですね、せっかくの機会ですからお掃除しちゃいましょう」
 ということで、モップを手にしてプールサイドのお掃除です。
「んしょ、んしょ…」
 照りつける日の光が厳しいですけど、こんな格好ですし、いざとなったら水に入っちゃえばいいですね。
「あらあら、かぁわいい…」
「…って、ふ、ふぇっ?」
 突然そう離れていないところから声がしてびくっとしちゃいましたけど、今の声って…!
「おっ、おおおお姉さまっ、い、いつからそこに…!」
 声のしましたほうを向きますとそこには本当にいつの間にいらしたのか、とっても見知った人の姿があって、あたふたしちゃいました。
「あら、さっきからよ?」
 そう言って微笑みながらゆっくりこちらへ歩み寄ってくるのは、私の一番大好きな人…真意流々お姉さま。
 夏休みに入ってからお姿が見えませんでしたからてっきり帰省でもされていらしたのかと思っていたんですけど…。
「は、はぅ、そんな、全然気付かなかったですけど…ちょっと、恥ずかしいですぅ」
 いきなりこんな格好を見られちゃうなんて…って、よく見なくっても、こっちに近づいてくるお姉さまも羽織ったワイシャツの下が同じ水着になってます…!
 しかも、私とは違ってお姉さまはスタイルがすごいですから…は、はわわっ。
「もう、そんなかわいい格好して…」
 ただでさえどきどきしちゃうんですけど…私の目の前にまでやってきたお姉さま、そのまま私を抱きしめちゃいました…!
「は、はわわっ、お、お姉さま、いきなり何して…!」
 お、お姉さまの、大きなお胸が密着して…!
「…いちごちゃんが、いっぱいほしいのよ」
「…はぅっ」
 さらに、耳元でささやかれて力が抜けちゃいました…けどですっ。
「は、はわ、で、でも、今はお掃除中ですし…!」
 このまま流されると大変なことになっちゃいそうですし、何とかしっかりしないとです。
「そうねぇ…でも、いちごちゃんはどっちがいいかしら」
「ふぇ、どっちって…何がです…?」
「お掃除してからと、お掃除しながら」
 悪戯っぽく微笑まれますけど、そうやって微笑まれたら、私…。
「ふふっ、どうしようかしらねぇ…?」
「は、はぅっ」
 さらにぎゅっと抱きしめられちゃって…そんなことされたら、もう我慢できなくなっちゃいます…!
「お、お姉さま、そんな…お、お胸が…」
「ふふっ、どう、もっと触ってみたいかしら…?」
「は、はぅ…はい、ですぅ」
「じゃあ、それなら…」
 完全にとろけちゃった私は、そのまま更衣室に連れてかれちゃいました。


    -fin-

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