〜盛夏の一コマ(アサミーナとかな様編)〜

 ―季節はもう長い夏休み…といってもそんなものがあるのは学生さんだけですから、私たちには関係ありません。
「…暑い暑いです」
 でも、お休みじゃなくっても真夏の暑さは容赦がなくって、私…石川麻美の隣を歩く夏梛ちゃんがだるそうにそんなことを口にします。
「この格好で外に出るのも、一苦労です」
 さらにそんなことを言いますけど、そんな夏梛ちゃんの服装はゴスいおよーふく。
 一応夏物ではあるんですけど、でも私の服よりはやっぱり暑そう。
 特に今年の暑さは例年より厳しくって熱中症になる人も続出していますし、お外を歩くだけで一苦労です。
「…暑くて溶けそうです」
「まぁ、夏梛ちゃんったら…」
 夏らしいお名前をしててさらに持っている特殊な能力も熱の発生するものな彼女ですけど、暑さにはあまり強くないみたい…そんなところもかわいらしいですけど。
「ほら、もうちょっとこっちに寄って?」
 私は手にしました日傘を差して、そんな彼女に寄り添いました。
「はぅ…麻美? 近い、です…」
「あら、でもこうしないと日傘に入れないよ?」
「あぅ…でも、恥ずかしいです」
「もう、何がそんなに恥ずかしいの? 私は嬉しいのに…」
 でも、そんな夏梛ちゃんもやっぱりかわいくって大好きです。
「わ、私だって…でもでも、恥ずかしいんです」
「う〜ん、夏梛ちゃんったら…」
 思わず抱きしめたくなっちゃいましたけど、何とかこらえて…あっ、いいことが思い浮かびました。
「それなら、日傘がなくっても涼しければいいのかな?」
「う、うん、でも無理じゃない?」
「そんなことないよ。夏梛ちゃん、今日はこれから何か予定ってあったっけ?」
「今日は特にお仕事入ってないですけど…どうしたんです?」
「うん、それじゃ…およーふくのお店と水着のお店、どっちがいいですか?」
 これならこの暑さ対策にもなるし、さらに夏梛ちゃんのあんな姿も見れちゃうし…うん、我ながら名案。
「そ…その二択じゃないとダメですか?」
 でも、当の彼女はあんまり乗り気じゃなさそう?
「あら、夏梛ちゃんが他にどうしてもって場所があるならいいけど…」
「別にないですけど…麻美、何を企んでるんですか?」
「えっ、どうして? 私、何も企んでなんていないよ?」
 ちょっと意外な言葉に首をかしげちゃいます。
「わ、私の考えすぎですかね…」
「私は、夏梛ちゃんに涼しくなってもらいたいだけだよ?」
 まだちょっと釈然としない様子の彼女に微笑みかけますけど…。
「もしかして、夏梛ちゃん…」
 ちょっとあんまりよくない想像が頭に浮かんじゃって、表情がこわばってしまいました。
「な、何ですか?」
 夏梛ちゃん、あんなにあたふたしちゃって…もしかして、この想像が本当に…?
「…私のこと、黒い人だって思ったりしてるのかな…?」
「…たまに、そういうこともあるかも?」
「がーん、そんな…」
 本当にそう思われちゃってたなんて…ものすごくショックです。
「落ち込まないでください、全く…もう」
「だって、私はただ夏梛ちゃんのことを想っているだけなのに、黒い人だなんて…くすん」
「全く、冗談じゃないですか…本気にしないでください」
 …えっ?
「も、もう、夏梛ちゃんったら…」
 危うく本気にして、泣きはらしちゃうところでした。
「あっ、それでおよーふくか水着か、どっちにする?」
 冗談と解れば一安心で、笑顔になってたずねます。
「それじゃ、水着で…麻美の選んであげますよ?」
「うん、それじゃ水着で…って、えっ?」
 彼女が続けた意外な言葉に、こちらは言葉を詰まらせてしまいました。
「覚悟しておいてくださいね、麻美?」
「う、うん、私が選んであげようと思ったんだけど、私のも選んでくれるんだ…お、お手柔らかにね?」
 夏梛ちゃんの迫力がちょっと怖いけど…でも、嬉しいことよね。
 一緒に着せ替えっこしたり…あっ、数日後のライブが終わったら、二人っきりで私の別荘で過ごそうかな?
 今日買った水着で一緒に過ごしたり…うふふっ、とっても楽しみ。


    -fin-

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