〜この想い、届けたい…?〜
「…あら、すみれちゃん?」
―十二月も半分を過ぎちゃったある日、ふと美亜さんにアルバイト先じゃない場所で偶然出会って声をかけられた。
「ね、すみれちゃん、クリスマスの日は何か予定とかあるのかしら?」
そしてそんなことたずねられたの。
「えっ、う〜ん、その日はお仕事ないし、里緒菜ちゃんを誘ってお出かけしようかな、なんて…」
そう答える私に美亜さんは笑顔で同意してくれたの。
「クリスマス、かぁ…」
美亜さんと別れ、一人になったところでふとそうつぶやいちゃう。
去年までは特に意識しなかった日なんだけど、今年はちょっと違う…私に、好きな人ができたから。
でも、その子にはまだこの想いを伝えられていなくって…ちゃんと伝えたい、とは思ってる。
なら…その日こそ、ちゃんと伝えるのにはいい日なのかも。
「あ、あのっ、里緒菜ちゃん…!」
そうと決まったら、っていうことで、事務所で会えたあの子へ声をかけるけど…うぅ〜、緊張する。
「…センパイ? どうしたんです、何だか声が上ずってますけど」
その彼女…片桐里緒菜ちゃんはちょっと不思議そうに私を見てくる。
「う、うん、えっとね、今月の二十四日とか二十五日とか、何か予定なんてある?」
「いえ、その日はお仕事はないですし、学校も冬休みに入りますけど…それはセンパイも知ってますよね?」
「ま、まぁ、そうなんだけど…それじゃ、よかったらその日に一緒にお出かけしたりしない?」
「…えぇ〜、気が進みません」
「そ、そんなぁ…どうして?」
うぅ、即答されちゃったし、かなりショックかも…。
「だって、もうものすごく寒いですし、そんな中わざわざ外出とか…あり得ない気がします」
「そ、そっか…」
そういうことか…誰か他の人との予定がある、ってわけじゃないみたいで、そこは安心しちゃった。
でも…う〜ん、彼女らしい理由といえばそうなんだけど、じゃあどうしたらいいのかな…。
「でも…外に出ない、っていうのなら考えないこともないです」
「…へ? それって、どういう…」
意味が理解できなくって、ちょっと固まっちゃった。
「ですから、私の部屋でいいっていうんでしたら、考えます」
「え…り、里緒菜ちゃんの部屋っ? わ、わわわ…!」
「何です、そんな慌てて…この前も勝手に押しかけてきたじゃないですか」
「そ、それはそうなんだけど…」
ちょっと今回は状況が違いすぎるから…うぅ、緊張しちゃう。
「それで…どうするんですか? やめておきますか?」
「う、ううんっ、里緒菜ちゃんがいいっていうなら…お願いするよ」
うん、彼女がああ言うんだから…迷う理由は何もない。
「解りました、じゃあ楽しみにしておきますね」
「う、うん」
よかった、まずは無事に約束できた…。
「…もう、センパイったらかわいすぎます。こんな姿を見れるなら、待ち続けるのもありですね」
と、あの子が小声で何かつぶやいた様な気がした?
しかも、意味深そうな笑顔も浮かべられちゃったし、もしかして私の考えてることみんな見透かされちゃってる、なんてことは…。
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