〜松永いちごのスマイル・ギャ○グ〜

 ―ここは、私立天姫学園。
 少し…いえ、ずいぶん特殊な力を持った人たちが集う学校。
「では、三時間めは特殊技能の授業をする…全員外へ、ね」
 だからそういう授業もあって、みんな魔法とかを使ったりしてすごいんですけど…。
「…ふぅ、今日も見学にしておきましょう」
 私は木の下に座って、そんなクラスメイトたちを見てるんです。
 えっ、ちゃんと授業を受けなさい、ですか?
 う〜ん、そういわれても私の能力というのはみんなとはまたちょっと違った、あまりに非力なものですし、それにこういうところで使うのは…ちょっと、恥ずかしいというか…。
「…あら、ダメよ、きちんと授業を受けなきゃ」
「は、はうっ!?」
 突然耳元で声をかけられて、びくっとしちゃいました。
 も、もう、この声、それにこんなことするのは…!
「も、もうっ、流々先輩、驚かせないでくださいっ!」
「あら、私はそんなつもりはなかったのだけれど…」
 やっぱりそこにいたのは、生徒会役員もしていらっしゃる真意流々先輩。
 ただでさえ大人っぽい雰囲気を漂わせた素敵な人なんですけど、今の服装が何と体操着で、その見事なスタイルがさらに際立ってて…。
「どうしたのかしら、そんな目で見て…うふふっ」
 って、は、はわわっ?
「なっ、何でもないです、それより先輩こそ、こんなとこで何してるんですか…しかも、そんな格好でっ」
「あら、私は体育の授業よ?」
 目を向けると、確かに向こうにあるグラウンドでは上級生たちがソフトボールをしていた。
「も、もうっ、それでしたらそっちに戻ってくださいっ」
「あら、つれないのね…」
 は、はぅ、先輩がいるとどきどきしちゃうんですから…。

 私は松永いちご…この学園の高等部一年生です。
 成績もよくって運動もできますけど、こんな不思議な力を持った人が集う学園では目立たない存在です。
 今は特に正式にある部活などにも入ってないですし…でも、放課後は直接帰ったりはせず、ある場所へ向かいます。
「…って、あれっ?」
 その途中、教室棟から特別棟へ向かうために外を歩いてますと、どこからか歌声が聞こえてきた気がしました。
 ほんのかすかなものだったんですけど、それは聞き覚えのあるもので…思わず、そっちに足が向きます。
 歌声がはっきり耳に届くにつれて、晴れてますのにあたりが霧に包まれてきました…これはもう、間違いありません。
 たどり着いたのは、霧でよく見えないながらも、体育館…歌声は、その中から聞こえます。
 この霧じゃ入口を見つけるのは難しいですし、私はその場で耳を澄ませます。
「はぅ、奈々穂先輩の歌声は、やっぱり素敵ですぅ…」
 聞こえる歌声は、『霧の歌姫』といわれる瑞木奈々穂先輩のもの…とっても素敵な歌声で、はじめて聴いたときに一目惚れしちゃいました。
 でも、その先輩の歌は、この学園のもう一人の歌姫、『精霊の歌姫』なフィリアさんのものともども、滅多に聴けるものじゃなくって…それが聴けた今日は、運がいいです。
 その二人の歌姫さんは実はお付き合いしてて、奈々穂さんファンクラブ会員番号1番な身としてはちょっと複雑な気持ちにならないこともないですけど、いいんです。
 私が憧れてるのは、先輩の歌声や演技力…私も、ちょっとでも近づきたいものです。
「じゃあ、こうしてる場合じゃないですよね」

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