〜アサミーナとかなさまの写真集〜
―ちょっと寄り道をした後お家へ帰る私、石川麻美はとっても上機嫌。
「あっ、お帰りなさい、麻美」
「うん、夏梛ちゃん、ただいま…うふふっ」
「…麻美ってば何だかずいぶんずいぶん機嫌がよさそうですけど、どうしたんです?」
それはお家で私を出迎えてくれた、今日は先にお仕事が終わっていたあの子…私のとっても大好きな夏梛ちゃんにも解ったみたいで、そうたずねられました。
「うふふっ、私は夏梛ちゃんと一緒に過ごせるときはいつでも嬉しいですよ?」
「そ、それは確かにいつもそんなそんな感じですけど、でもでも今日は特に特に機嫌がよさそうに見えますよ?」
「さすが夏梛ちゃん、私のことは何でもお見通しなんだね」
「はわはわ、別に別にそんなこと…! それよりそれより、何かあったんです?」
もう、夏梛ちゃんは相変わらずかわいいんだから…思わずぎゅってしたくなります。
そんな夏梛ちゃん大好きな私ですから、こんなに機嫌がいいのももちろん彼女に関することのため。
「うん、さっきお仕事の帰りに…今日発売のこれを買ってきちゃった」
そうして私が袋から取り出すのは一冊の書籍です…と。
「これって…はわはわっ! え、えとえと…!」
それを目にした夏梛ちゃん、顔を真っ赤にしちゃいました。
「も、もうもう、そんなものを買って、麻美はどうするつもりですっ?」
「どうするつもり、って…もちろん、見て楽しむんだよ? 本当はあと何冊か買っておこうかな、とも思ったんだけど…」
「そ、そんなそんなことしなくってもいいですっ」
保存用とかそういうもの、ですね…それはまたいずれ考えて改めて買おうかな、って思っています。
「だ、第一第一、そばに私がちゃんといるのに、そんなもの買って…私じゃ何か何か不満なんですっ?」
あっ、夏梛ちゃんったら、やきもちをやいてるのかな…相手も自分なのに、かわいいんだから。
「もう、そんなわけあるはずないよ…やっぱり、実物の夏梛ちゃんが一番です」
そう言って、私はあの子をぎゅってしちゃうのでした。
私が夏梛ちゃんへ見せたのは、今日発売したばかりの写真集です。
そういう類のものを買うのはこれがはじめてですし、それに普通でしたら買うこともないのですけれど、これだけは特別です。
「うふふっ、夏梛ちゃんの写真集が出るなんて…」
ソファに座ってそれを開く私ですけれど…そう、それはあの子の写真集なんです。
一部の声優さんがこうして写真集を出していますけれど、やっぱり知名度が高くないと出ないですし、夏梛ちゃんはすごいです。
「わぁ、やっぱりかわいいです…」
そして何より、やっぱりモデルとしてとっても素敵ですから出るんですよね。
「も、もうもうっ、恥ずかしいです…」
でも、すぐ隣でそうして顔を赤くしてる夏梛ちゃんのほうがやっぱりとってもかわいいですよね…そうした表情はさすがに写真集にはありません。
「うふふっ、よかった」
一通り目を通した写真集をゆっくり閉じました。
「よ、よかったって、何がですっ?」
夏梛ちゃんはそんな私のことをずっと恥ずかしそうに見守ってきていました。
「うん、もちろん夏梛ちゃんがかわいくって」
「は、はわはわ…!」
「それに…ちょっと、安心もしちゃって」
「安心…って、どういうことです?」
「うん、夏梛ちゃんの写真集が出て、とっても嬉しくもあったんだけど、同時に不安…なのかな。さみしい、かもしれないけど、とにかくそんな気持ちにもなっちゃったの」
そんな私の言葉にあの子は首をかしげちゃいました。
「えっとね、そばにいる私しか見ることのできない様な、夏梛ちゃんの普段見せてくれるとってもかわいい表情とか載ってたら、私だけが見れる素敵な夏梛ちゃんを他の人も見られる様になっちゃってさみしいな、って思ったの。でも、そういうのはないみたいで、安心しちゃった」
うん、夏梛ちゃんってお仕事の場だとそういう表情は出さないものね…私と一緒にするお仕事だとときどき出ちゃうときもありますけど。
「は、はわはわ、な、何を言うかと思ったら、もうもう…そっ、そんなのそんなの当たり前ですっ」
と、また真っ赤になった彼女…私に抱きついてきちゃいます?
「わ、私の全部を見せられるのは…あ、麻美にだけ、なんですから」
「うん、ありがと、夏梛ちゃん…私も、だよ」
「…本当本当、です?」
「もう、そんなの…もちろん、です」
愛しい気持ちがあふれてきて、思わずぎゅっと抱きしめ返すのでした。
「う〜ん、それにしても…」
しばらく抱き合った後も、二人ソファに寄り添っているんですけど、あの子が何か考え込んだ様子になってます。
「どうしたの、夏梛ちゃん?」
「…麻美の写真集はいつ出るんでしょう?
「…えっ? も、もう、夏梛ちゃんったら…そんなの、出るわけないですよ?」
突然の冗談に少し驚きながらもお返事します…と。
「どうしてどうしてです? 私のが出るなら麻美のも出ておかしくないと思いますよ?」
夏梛ちゃんはいたって真面目な様子…?
「だって、私は目立たない、夏梛ちゃんみたいにかわいくも…」
「麻美はとってもとってもかわいいですし、それにスタイルもとってもとってもいいんですから、何も何もおかしくありませんっ」
「わ…か、夏梛ちゃん…」
彼女の強い口調に、私は赤くなって固まってしまいました。
「え、えとえと…と、とにかくとにかく、麻美のが出たら私も買いますのに…」
「わっ、そ、それは恥ずかしいよ…」
「…それは私も同じ同じことです」
あっ、そういえば私は実際に買ってきちゃってたんでしたっけ…。
それがおかしかったりして二人で微笑み合ったりしましたけれど、写真集ですか…。
私のものが出る、なんてことはやっぱり考えられませんけれど、でも…ユニットを組んでいることですし、夏梛ちゃんと二人一緒でのものが出たらそれはとっても幸せかも。
-fin-
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