〜おせっかい焼きのクリスマス〜

 ―はやいもので今年もあとわずか。
 すっかり寒くなっちゃったけど、そんな中でも外を歩く私…藤枝美亜の心の中はあったかい。
「やっぱり、この時期はいいわね…」
 街をのんびり歩きながら周囲を見てみると、幸せそうな女の子たちの姿が多い。
 ここはあの学園が近いから、百合な関係の子が多い…そしてもうすぐクリスマスだから、そんな素敵なカップルがよりよく見られる、というわけ。
 そんな子たちを見ていると、私のほうもとっても幸せになっちゃう。
「もうすぐクリスマス、皆さん幸せなひとときを過せるといいわね…」
 心からそう願うとともに、ある気持ちも浮かんできちゃう。
「それに…まだ結ばれていない子たちも、結ばれるといいわね」
 ええ、片想いのままで過すなんて、やっぱりさみしいもの。
 そう思うといても立ってもいられなくって、よりまわりのことを見ちゃう。
 クリスマスまではあと数日あるし、そういう子の背中を少しでも押してあげることができれば…。
 そう、私は見た雰囲気だけで百合な恋をしているか、それにまだ結ばれていないかもう結ばれているかまで解っちゃって、それは外れたことないんだもの、力になってあげなきゃ。

「…あら、あそこにいるのって…」
 少し街を歩くと、視線の先に見知った子の姿が留まった。
「アサミーナちゃん、こんにちは。今日はお一人?」
「きゃっ…あっ、み、美亜さん、こんにちは。はい、夏梛ちゃんは東京のほうでお仕事ですから…」
 こちらから歩み寄って声をかけると少しびくっとしてしまいながらも、でもすぐ笑顔になってそう答えるのは、石川麻美さん。
 長くてさらさらのきれいな髪をした、そしてスタイルのいい清楚なお嬢さま、といった感じのほわほわした子…アサミーナ、というのは彼女が声優やアイドルとして活動しているときの呼び名。
 この子はよく私の喫茶店へきてくれて、そして今お名前の出た灯月夏梛さんとはすでに結ばれて幸せな関係。
「そう、それは残念ね…でも、その割にはあまりさみしそうではなさそうね?」
 恋人さんと離れ離れでいる割に、今の彼女からはそうした様子は感じられなくって、むしろ幸せオーラすら感じ取れる。
「はい、離れていても気持ちは繋がってますし、それにもうすぐ帰ってきてくれますから…クリスマスは一緒に過ごせます」
「ふふっ、それならよかったわ」
「プレゼントも用意しましたし、これから一緒に過ごすときのお料理やケーキの材料を買いに行くんです…夏梛ちゃん、喜んでくれるかな」
「あら、アサミーナちゃんが作るのね…それはもちろん、喜んでくれると思うわ」
「はい、ありがとうございます…それじゃ、行ってきますね」
 笑顔で去っていく彼女を私も笑顔で見送る…あの子たちは何の心配もいらないし、幸せな時間を一緒に過ごせそうね。

「…あら? あの子…」
 それからしばらく市街地を行き交う人々を見ていると、私の直感に引っかかる子が目に留まった。
 それは雑貨屋さんの前にいた、あの学園の制服姿の、そして長い金髪がとっても目立つスタイル抜群な女の子。
「幸菜ちゃんにこれ似合いそう…あっ、でもこっちもいいかも」
 和風な小物を色々見比べている彼女、確実に百合な恋をしているわね。
「…ん、決めた、これにしよう。うふふっ、あの子、喜んでくれるといいんだけど」
 どうやらクリスマスプレゼントを選んでいたみたい…まだそのお相手とははっきり結ばれたわけではなさそうだけど、でももう両想いなのも確かみたいね。
 あれなら、私が何かする必要もなさそう…うふふっ、お幸せに。


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