〜想いはもう止まらない?〜

 ―私、山城すみれは里緒菜ちゃんのことが好き。
 そのことをはっきり意識してからはよりあの子のことを想うときが増えちゃって、夏梛ちゃんと麻美ちゃんの二人みたいなことをあの子と一緒にできたらいいなぁ、って思って密かにダンスの練習しちゃったりしてた。
 今日もまたこっそりそんなことをしようと神社へ向かう途中、公園の中を通りかかる…と。
「…って、わっ、あそこにいるのって、里緒菜ちゃんっ?」
 公園にあるベンチにとっても見覚えのある子の姿…もう間違いなくって、一気に胸が高鳴っちゃう。
「あっ、え〜と、り、里緒菜ちゃん…こ、こんにちは」
 彼女の前へ歩み寄って声をかけるけど…うぅ、この想いに気づいてから里緒菜ちゃんに会うのってこれがはじめてだし、何だかとってもどきどきする。
「こんにちは…センパイ?」
 あの子は少し眠そうでもあったけど、不思議そうに見つめてくる。
「あわわっ、え、え〜とっ、と、隣、座ってもいいかなっ?」
 うぅ、見つめられただけでどきどきが大きくなってきちゃう…。
「はい…って、いちいち聞いてくるなんて珍しいですね?」
「…へっ? そ、そうかな、そんなことないと思うんだけど…!」
 どきどきが全然収まらなくって、同じベンチだけどちょっと距離を取って座らせてもらう。
「何だか、センパイ…いつもと違いません?」
 そんな私がおかしいのか、あの子はじぃ〜っと見つめてくる…!
「わっ、そ、そそそんなことないって…! ほら、それより、チョコバーあげるからっ」
 誤魔化すかの様に彼女へチョコバーを差し出す。
「…いただきます」
 そしてあの子は…そのままチョコバーに食らいついちゃう?
「わっ、も、もう、里緒菜ちゃんったら、自分で持ってよね」
 でも、そんなあの子はやっぱりとってもかわいい…。
「何です…食べさせてくれないんですか」
「…へっ、そ、そんな、食べさせて、って…里緒菜ちゃん、そうしてほしいのっ?」
 あの子の様子が少し残念そうにも見えたんだけど、とにかくチョコバーを受け取って自分で食べはじめた。
「はぅ…ふぅ、落ち着け、落ち着け、私…!」
 その隙に大きく深呼吸をして、何とか気持ちを落ち着けようと…。
「…センパイ? 本当に様子がおかしいですよ? 熱でもあるんじゃないですか?」
 と、チョコバーを食べ終えちゃったあの子、少し心配げな様子で顔をこちらへ近づけてくる…!
「わっ、だっ、だだ、大丈夫、だよっ? そ、そそ、そんな、えと…!」
 心配をかけちゃいけないのに、とってもどきどきしちゃって言葉がなかなか出なくって、思わず縮こまっちゃう。
「センパイ…私に惚れましたか?」
 そんな私にあの子が一言…?
「…ふぇっ!? なっ、なな、なななな…何言ってるの里緒菜ちゃんっ!? 私は、そそそんなこと…!」
 思わず立ち上がっちゃったけど…私の気持ち、気づかれちゃった…?
「センパイ…動揺しすぎです。どうしたんです…何かあったんですか?」
「な、何かって、え、え〜と…あれっ? 里緒菜ちゃん、さっきの言葉は…?」
「さっき? さっきのとは何でしょうか?」
 何事もなかったかの様に微笑むあの子…。
「…う、ううん、私の気のせいみたいだから、気にしないで、ねっ?」
 多分空耳か何かだったんだと思うし、何とか微笑み返してあげる。
「そうですか…気のせいなら仕方ないですね?」
 一方のあの子は少し残念そうにも見えて、ちょっと引っかかるんだけど…。
「でも、里緒菜ちゃんが私のことを心配してくれるなんて…それだけで、とっても嬉しいことだよね」
 うんうん、私にはもったいないくらい…。
「好きな人を心配するのは、当たり前のことじゃないですか…」
 と、あの子がそんなことを呟いた…?
「…えっ、里緒菜、ちゃん? それって…え、え〜と…」
「まぁ、センパイの好きな様に解釈していただければ結構ですけども…私は待っていますからね?」
 あの子はそう言うと立ち上がって、この場を後にしちゃうんだけど、私は理解が追いつかなくなってしばし固まっちゃう。
「私の、好きな様に、って…でも、里緒菜ちゃん、私のこと、待ってくれる、って…」
 これ、やっぱり、私の想いが知られちゃってるの、かな…?
 それに、さっきの言葉…あの子も、私のこと…?
 でも、そんな…そんな夢みたいなこと、あるのかな…?
「…ううん、どっちにしても、こんな態度、やっぱりダメだよ」
 この想い、抑えようとも思ったけど、あんなこと言われちゃったりしたらもう我慢できない…。
「うん…どう思われても、思い切って伝えなきゃ!」
 色んな不安はある…けど、あの子へのこの想いは、そういうことを考えてももう抑えられそうになくって、私は公園を飛び出した。


    -fin-

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