〜お昼休みは…〜
―あたし、雪乃ティナは私立天姫学園って学校に通ってる。
ここは学生寮も完備されてて、叡那さんみたいに自宅とかから通ってる人もいるけど、だいたいの子は学生寮に入ってる。
あたしもそんな中の一人で、ときどき叡那さんの社のほうで泊まったりすることもあるけど、だいたいは学生寮のほうでの生活になってるわ。
「んっ…もう、朝か…」
朝、自分の部屋で目が覚める…学生寮は一人部屋だからベッドも一つしかないんだけど、そのベッドにはあたしの他にもう一人、あたしと寄り添う様にして眠ってる一人の少女の姿があった。
「全く、相変わらず気持ちよさそうに眠って…」
思わず頭をなでてしまうくらい愛しいその子は九条閃那っていって、あたしとの関係は…まぁ、言わなくっても解るわよね?
まだ眠ってる彼女を起こさない様に、ゆっくりとベッドから出る…あたしは学校に行かなきゃいけないんだけど、彼女は今の時代の学校には通わなくってもいいから、はやく起きる理由はないのよね。
「…閃那、朝よ? 起きなさい?」
でも、朝はちゃんと起きたほうがいいとは思うし、他にも色々あって結局は起こしてみようとする…んだけど。
「う〜ん、ティナ、大好き…」
「…って、な、何言ってんのよっ? そ、そんなことより起きなさいっ?」
「むにゃむにゃ…」
…ダメね、やっぱり全然起きないし、諦めましょう。
「もうっ、ティナさんったらひどいです。どうして起こしてくれなかったんですかっ?」
で、閃那が起きたのはあたしが朝食や準備も終えて学校に行く直前だったんだけど、いきなり怒られてしまった。
「い、いや、だって起こしても起きなかったし…」
「それはティナさんの起こしかたが悪かったんですっ」
…そ、そうなのかしら、普通に起こしたつもりだったんだけど…。
「起こすときはあつい口づけを交わして、って決まってますのに…」
「…って、そ、そんなの決まってないわよっ」
「もう、ティナさんったら相変わらず恥ずかしがりやさんなんですから。昨日の夜は口づけよりもっと…」
「ちょっ、あ、朝から何言い出すのよ…!」
「そうやって慌てるティナさんもかわいいです」
「う、うっさいっ!」
全く、部屋には他に誰もいないとはいっても、よく恥ずかしげもなくあんなこと言えるわね…!
ま、まぁ、そんなことがあった、ってのは本当なんだけど…って、も、もうっ。
「とっ、とにかく、あんたはさっさと服を着なさいっ」
「もっと見てもいいんですよ?」
「ばっ、馬鹿なこと言わないのっ」
もう、余計に意識してどきどきしてきちゃったじゃないの…!
「でも、やっぱり朝はティナさんと一緒に起きたいです」
ようやく下着を身につけはじめてくれた閃那が口を開く。
「一緒に朝ごはんも食べたいですし、それにティナさんのツインテールを私が結ってあげたいですし…」
「い、いや、髪くらい自分でするから、気にしなくってもいいわよ」
「いいえっ、髪を結うときに猫耳を触りたい放題じゃないですか。それに、そんなかわいい猫耳、わざわざ髪型で誤魔化そうとしなくってもいいと思うんですけど…ねころさんやティセちゃんとかは普通にしてるんですし」
「う、うっさいわねっ、そんなことしなくってもいいし、かわいくもないわよっ」
こんなのついてても恥ずかしいだけだっていうのに、全く…。
「ティナさんの髪をストレートにした姿も凛々しくて素敵なのに…まぁ、今は私の前でしか髪を下ろさないですから、私がそれを独り占めしてるってことですよね」
「そ、そんなこと、嬉しそうに言うことじゃないでしょ…」
そもそも、あたしなんかより閃那のほうがずっと素敵だっていうのに…。
「と、とにかく、あたしだって閃那と一緒に朝食は取りたいんだから、そうしたいんならちゃんと起きなさいよね?」
「う〜ん、ティナさんがちゃんとした方法で起こしてくれたら、ちゃんと起きられると思うんですけど…」
いやいや、そんなこと真剣な様子で言われても、あんなことできないんだからね?
「全く、もう…あたしはもう時間だから学校に行ってくるけど、閃那もちゃんと朝食取っときなさいよね?」
「あ…はい、いってらっしゃい、ティナさん」
ちょっとさみしそうにされちゃったけど、あたしだってさみしいんだから…。
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