〜涼平なずなと探検部の戦場〜
―私立天姫学園探検部。
現在、部員はあたし、つまり涼平なずな一人しかいないけど、まぁいいわ。
色んなとこ探検するのに足手まといがいても、邪魔になるだけだものね。
幸い、あたしの通う、そして変人の集う学校の周りには大きな森とか色々探検する場所があるから退屈しなくていい。
あたしの大好きな冬が過ぎ、これからどんどん嫌な時期になってくる過程にある四月のある日。
「ねぇ、みんな、このチラシ見た?」「うん、見た見た」
クラスのみんながある話題で盛り上がってた。
あたしもその話題についての告知は知ってるけど、別に興味ない…っていうか、このクラスの奴らには無縁のことなんじゃないの?
「あっ、なっちゃんはこれに参加しないのかなっ?」
「って、あによ、どうして最強のあたしがそんなのに参加しなきゃいけないのよっ」
「わっ、だって、なっちゃんは強いから優勝できるんじゃないかな、って…」
なぜかあたしに声をかけてきた、同じクラスの猫耳した雪乃ティセって子の言ってるのは、もちろんクラスで話題になってるもののこと。
『プリンセス・ブレイド』っていう、どっかの国が主催する武闘大会があるらしい…優勝した者はその国の王女になれて、さらにずいぶんなお金も手に入るらしい。
「ふん、あたしはそんなのに参加してるほどひまじゃないのよ」
「わっ、そうなんだ?」
まだまだ色々探検できそうなとことかありそうだしね、あたしにとってはこっちのほうが楽しいんだから。
「あらあら、まあまあ、皆さんはそんな危ないイベントに参加しちゃダメですよ〜?」
…って、担任にあんなこと言われると参加したくなるけど、まぁいいわ。
放課後は探検部の活動時間。
「じゃ、まぁ行ってみようかしらね」
一人屋上にやってきたあたしは脚にとあるユニットを装着…空へ舞い上がる。
「ふん、今日も調子は悪くないみたいね」
このまま空を飛び続けるってのも悪くはないわね。
「おっ、涼平じゃない。今日はどこ行くの?」
って、いきなり上空で近寄ってくる奴がいるしっ。
「きゅ、きゅーっ、どこだっていいでしょっ?」
「あははっ、ま、あんまり危ないとこ行っちゃダメだよ? 私はパトロールがあるから、またね?」
そいつはそんなこと言うと急加速して飛び去ってったけど、あの風紀委員に負けないためにももっと練習しないとね。
だから、空でのスピードをもっと上げる練習にしてもよかったんだけど、この日は町の外れにある遺跡に行くことにした。
ま、探検っていったら遺跡、ってのは常識でしょ。
それに、その遺跡で今あたしが空を飛ぶのに使ってるユニットを見つけたんだし、探せばまだ何か出てくるかもしれないもんね。
っていうことで、何の遺構なのかよく解んない遺跡にやってきた。
ここはあの学校の奴らが探検部じゃないくせに結構探検にくるそうだ…でも、あたしと違って初心者にすぎないから迷子とかになってしまうとか、このユニットを整備してくれた教師が言ってたわね。
表層はそういう連中でも行けるけど何か残ってるわけないし、あたしはずっと奥を目指す。
そこってどんどん地下にのびてってる感じなんだけど、奥に進むと変な化け物とか罠とかがあったりするのよね。
でも、その日は特に何かに遭遇するってこともなく進んでいけて、拍子抜けね。
「…って、ん?」
ユニットで飛びながら奥へ進むあたしの前に、変な空間が現れた。
今までここにきた中で一番奥にまできたと思うんだけど、そこは妙に広い空間…しかもずいぶんな瓦礫の山ね。
何かすっごい爆発でもあったみたいな感じだけど、ここで行き止まりみたいね。
「…って、そんなのこのたしが信用するわけないでしょ?」
空間の中心で止まるあたし、氷の嵐を放って周囲の瓦礫を吹き飛ばしてく。
すると、瓦礫の下に埋もれてた床に切れ目を発見…そこに氷柱を投げつけると床に穴が開いた。
「ふふんっ、やっぱり何かあったわね…って、ずいぶん深い穴ね」
結構時間がたってるけど、こんな明らかにあたしがはじめて発見したところ、行かないわけにはいかないわよね。
「…ふぅん、明らかに今までとは違う感じね?」
長い長い穴を降りきった先は、何か別世界。
金属でできた通路がずっとのびてるし、なかなか面白いじゃない…空気もあるみたいだし。
そんな通路をずっとまっすぐ行った先は土砂で埋まってたけど、逆側を進むと金属でできた扉にぶつかった。
「あによ、吹き飛ばすしかない?」
そう思ったけど、扉に軽く触ったら勝手に開いちゃった。
その先はあんまり広くない部屋になってたけど、よく解んない機械とかがたくさん並んでた。
ガラス越しにさらに隣の部屋もあるみたいだけど、暗くてよく見えないわね。
でも、そのガラス窓の手前にボタンみたいなのがたくさんついた台があった……よく解んないけど、こういうの見たら押したくなっちゃうわよね。
「ってことで、適当に押しちゃえ…って、きゅーっ?」
さすがあたしで押したボタンが当たりだったのか、部屋に明かりがついた。
これでガラスの向こうも見える様になったけど、向こうはずいぶん広い空間ね。
変な機会とかがあって、あと中心には…よく解んないけど結構大きい箱みたいなのがある。
向こうの部屋に行ってみようかとも思ったけど、やっぱボタンも気になる。
明かりがついたからボタンのとこに何か色々書いてあるのも見えるんだけど、全然見たこともない文字で読めない。
「ま、適当でいいわよね…っと」
もう一回、今度は他のボタンより大きくて色も違うやつも押してみた。
「…きゅーっ?」
まわりの機械たちが低い音をあげはじめて、それに…窓の向こうの部屋の中が光りはじめた?
「トリガーハート・サリサディア、起動します」
って、そんな機械のアナウンスみたいな声が部屋に響いたかと思うと、窓の向こうがまばゆい光に包まれちゃった。
「きゅ、きゅーっ、あによっ?」
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