公園であの子に会えるなんてとっても幸せなことだったけど、外で会えるのなら、やっぱり学園内でも会いたくなっちゃう。
だから、中等部の教室へ行ってみようと考えたのだけれど、その前にカフェテリアで一息入れていくことにしたの。
学校にカフェがあるとか、いいものよね…と、落ち着いた雰囲気の店内へ入った瞬間、私が中等部へ行く理由はなくなっちゃった。
「うふふっ…こんなところで会えるなんて、嬉しいっ」
だって、店内のテーブルの一つに、一人で座っている彼女の姿を見つけたのだもの。
「これはやっぱり偶然じゃなくって、運命ねっ」
嬉しさのあまり、彼女の席へ歩み寄ると、そのまま抱きしめちゃった。
「…ふ、ふぇっ!? ど、どどどど…」
「あぁ、やっぱりとってもかわいい…」
あたふたしちゃうあの子をさらにぎゅっとしちゃう。
「え、えっと…席空いてますから、座ってください!」
「あら、せっかく会えた喜びを表したのに、淡白な反応ね…ま、そういう奥ゆかしさがまたいいのよね」
あまりあたふたさせ続けるのもよくないし、ここは大人しく席へつかせてもらった。
「えっと…何かご用ですか?」
「いえ、たまたまカフェへきてみたら貴女がいたものだから、運命だって思って」
「同じ学園にいるんですし、会うこともありますよ? 私も何回か雪野先輩見かけましたし」
あら、つれない…って、何だか聞き捨てならないことを言わなかった?
「…えっ、私を見かけた? もう、それならどうして声をかけてくれなかったの?」
「いえ、その…さすがに下級生から上級生にお声をかけるのはためらわれますし…」
その奥ゆかしさが彼女らしいところ、といえばそうなのだけれども…。
「もう、そんなこと、気にしなくってもいいのよ? 私は少しでもたくさん貴女と一緒にいたりお話ししたりしたいのだもの」
「え、えっと、その…」
私が微笑むと彼女はあたふたしちゃう。
「…ふふっ、やっぱりかわいい。本当、素敵な子よね…」
「か、かわいくなんてないんですからね?」
しかも、赤くなってそんなこと言ったりして…ツンデレ、というものなのかしら。
その幸菜さん、カフェテリアでは授業の予習をしていたの…真面目でえらいわよね。
どういう内容なのか見せてもらおうと、彼女のすぐ隣へ寄ってみる。
「…って、ち、近すぎますし」
「あら、問題あった?」
赤くなるあの子に私は首をかしげちゃう。
「いえ、雪野先輩きれいなんで目立つかなぁ…って」
「まぁ、そんなこと…外国人だから目立つ、といった程度じゃないかしら」
名前は真綾としても、外見は変えられないし、これは仕方のないところかしら。
「それに、私が目立つとしたら幸菜ちゃんにとって何か問題?」
「いえ、人の視線が少し苦手なんです」
「えっ、そうなの?」
私がいるとそばにいる自分にも視線が、って気にしちゃってるのね…。
「だ、大丈夫よ、この学校には留学生とかも結構いるみたいだし、私なんて珍しくも何ともないはずだから、ねっ?」
「あ、えっと…ありがとうございます?」
「いえいえ、そんな」
お礼を言われるのも不思議だけど、不安にさせたりしてはいけないから微笑み返してあげる。
「でも、それなら…私に見つめられるのも、ダメ?」
試しにじぃ〜っと見つめてみる…と、あの子からも見つめ返してくれた?
さらに見つめてみると、彼女は恥ずかしそうになるものの、でもまだ見つめてくれて…かわいすぎる。
「…もう、そんな熱い視線を向けられたら、我慢できなくなっちゃうじゃない」
「ふぇっ!? なっ、我慢って何ですか!?」
あら、われにかえったみたいであたふたしちゃった。
「そんなの、決まってるじゃない。でも、今の反応…私に見つめられるのは、大丈夫みたいね」
「といいますか普通に恥ずかしいですよぅ」
「ふふっ、そんなこと言いながら、どうして見つめ返してくれたのかしら」
「そ、それは…知りません!」
あら、ぷいってされちゃった。
「あら、かわいい。私はもちろんそんな貴女をずっと見ていたいから見つめていたの」
そうして見つめているとどきどきしちゃって、気持ちが抑えられなくなりそうになる…。
「も、もう…私の負けです。好きにしてください…」
と、あの子、そんなことを言ってきた…?
う〜ん、何に負けたのかは解らないけれど、とにかく…。
「…えっ、いいの? じゃあ遠慮なく…えいっ」
お言葉に甘えて、ぎゅって抱きしめさせてもらっちゃった。
私の視線を受け止めてくれたり、こんなことさせてくれたり…この子も、私のことを特別に感じてくれているのかしら。
もしそうなら…うふふっ、この先、どうしようかしら。
-fin-
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