〜アサミーナとファンのかたと〜

 ―今日は私のパートナー、そして大切な人な夏梛ちゃんがお仕事のために遠くの町に行っちゃってていません。
 とってもさみしいですけれど、さみしがってばかりじゃいけませんし…今日は私のほうにはお仕事がないこともあって、私の母校でもある私立天姫学園へ一人でやってきました。
 ここの設備は整っていますから、こうやって一人時間のあるときはそこをお借りして、練習をしているんです。
 でも、その前にちょっと一息つこうかな…ということで、まずは学園内にあるカフェテリアへ向かいました。
「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」
 学園自体は現在授業中ですからカフェテリアも他にお客さんはいなくって、出迎えてくださった店員さんのお言葉に甘えて窓際の席につきました。
 学生時代はここを利用したことはなかったと思いますし、何を注文しましょう…とメニューへ目を移そうとしますけれど、その前にあることに気がつきました。
「あ…あの、どうかなさいましたか…?」
 店員さん…私よりも年下と思う、でもかっこいい雰囲気の女の子が、なぜか私をじっと見てきていて、少し戸惑っちゃいました。
「あ、失礼しました…えっと、学園のかたじゃないなぁ、と思いまして…」
 そういうことでしたか…学園の制服を着てきたほうがよかったかな。
「は、はい、一応この学園の卒業生ですけれど、今はそうじゃないことには違いないですね…」
「…やっぱり」
「今日は夏梛ちゃ…あっ、ううん、一緒のお仕事してる子が単独のお仕事でいないから、この学園の設備を借りようかな、って」
「そ、そそ、そうなんですかぁ」
「はい、ここの学園の設備はとても整ってますから、ときどきそうして…って、ご、ごめんなさい、関係のないお話をしちゃって…」
「わはっ!?」
 …きゃっ、な、何だかご様子がおかしい…?
「い、いいえいいえ、とっても興味がありますから…だだ大丈夫です」
「あ、あの、どうしたんですか…?」
 ものすごく緊張された様子にも見えますし…それに、興味がある、って…?
「えっと、あの、その…アサミーナさん、ですよね?」
 そう訊ねてきた彼女、恥ずかしそうに顔を両手で隠しちゃいました…と、その様子は何だか微笑ましいのですけれど…。
「は、はい、私は石川麻美といいますけれど…私のことを知っているかただったんですね」
「は…はひっ! ふぁ…ファンなんですっ!」
「…えっ?」
 恥ずかしそうに顔を隠しながらの彼女の言葉に、こちらが固まっちゃいました。
 だ、だって、私がこういうことを言われるなんて…!
「あ、あの、私のファンだなんて、ありがとうございます…その、本当に嬉しいです…」
 こんなプライベートの場ではっきりファンだと言われたのなんて、これまで月嶋朔夜さんにお会いしたときくらいしかなかったですよね…さらにここまでの反応をされたのはもちろんはじめてのことで、こちらが恥ずかしくなってきちゃいました。
「い、いえ…思ってた以上に美人さんで、目を見てお話が…」
「えっ、そ、そんな、私なんて全然…あ、貴女のほうがきれいだと思いますし…!」
 お互いに真っ赤になっちゃいました…うぅ、何とか落ち着かないと…。
「で、でも、私と夏梛ちゃんのことを知ってくれてる人、やっぱり少しはいるんですね…先日も、お社でお会いした巫女さんが夏梛ちゃんのことに気づいたっていうし…」
 ふと先日の、雪の積もった日のことを思い出して独り言を言っちゃいます。
「はぅ…多分それは、ティナさんですね。私も話を聞いてました」
 そうでした、確かそんなお名前…って?
「わ、あの巫女さんの御知り合いなんですか? ちょっとびっくりしちゃいました」
「知り合い、といいますかいい仲といいますか…アサミーナとかな様の間柄みたいな…」
「…えっ? あ、あの、それってつまり…」
 もじもじされてしまった彼女ですけれど、さらにびっくりしちゃいました。
 あの日の巫女さんのお知り合いにここでお会いできただけでもすごい偶然ですのに、その人が私たちの大ファンで、さらにそんな…。
「その、お幸せに…」
 そんな言葉しか口から出ませんでしたけれど、本当にそう思います。
「はい…幸せにしてみせます!」
 強い口調でお返事してもらえましたけれど…うん、お似合いのお二人ですよね。
「アサミーナさんたちも、その…応援しています」
「わっ、ありがとうございます…あの、お名前を聞かせてもらっていいですか…?」
「は、はひっ、閃那といいます…え、えっと、握手をしてもらっても…」
「あっ、も、もちろん大丈夫です…その、閃那さん、私たちのファンだなんて、本当にありがとうございます」
 こんなに応援してくださるファンがいるんですから、もっと頑張らなきゃ…その思いもあらたに、強く握手を交わしたのでした。


    -fin-

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