「えっと、閃那…お誕生日、おめでと。プレゼント、用意したんだけど…」
「…えっ?」
 よかった、とりあえず振り向いてもらえた。
「まず、これなんだけど…」
 テーブルの上に置いた箱を開けると、ケーキが出てくる。
「これ、あたしが作ったんだけど…その、これを作ってたら、こんなに遅くなっちゃって…ごめん」
 そう、ねころ姉さんに教わって作ってみたわけ…料理とかあんまり得意じゃないから、ずいぶん苦戦してしまった。
「か、形とか、よくないし、閃那の口に合うかも解んないんだけど…」
 特に、彼女は身近な人の関係で舌が肥えてるっていうし…だからこそ何度か作り直したんだけど、でもまだまだよね…。
「今日は叡那さんの誕生日…で、閃那の誕生日でもあるって知って、何とかあたしがケーキを焼いて祝ってあげたいって思ったんだけど、隠してた上にこんな遅くなって、さらにこんな出来で…」
 申し訳なくって、自然とうつむいちゃう。
「…ティナさんっ!」
 って、次の瞬間、抱きつかれたっ?
「ちょっ、せ、閃那っ?」
「ティナさんが私の誕生日のために、こんな…とっても嬉しいですっ」
「…へ? お、怒ってないの?」
「もう、ティナさんがここまでしてくれたのに、何を怒るんです?」
 さらに強く抱きしめられるけど、機嫌が直ったならよかったわ。
「でも、ティナさん、さっき『まず』って言ってましたけど…」
 しばらくして、ゆっくり離れながらそう訊ねられる。
「あ、ああ、えっと、一応こんなものも用意してみたのよ…」
 取り出したのは、『魔法少女リリカルなのはStrikerS』って作品に出てる、あたしに似てるらしいキャラクターのフィギュア。
 閃那はこういうの集めてるから、よく解らないながらよさそうなのを買ってきたんだけど…。
「えっと、もしかして、もう持ってた?」
「はい、でも魔改造してティナさんとしてかわいがりますから大丈夫です…ありがとうございます」
 な、何か怖いんだけど…っていうか、あたしとして?
「と、とにかく、もう一つあるんだけど…」
「えっ、まだあるなんて…私は幸せすぎて死んじゃうかもしれません」
「全く、大げさなんだから…えっと、手を出してもらえる?」
「はい、こうですか?」
 差し出された手の指に、光り輝く指輪をはめてあげる。
「…って、えぇっ? ティ、ティナさん、これは…?」
「えっと、叡那さんに作ってもらったもので、一応あたしも同じのを持ってるのよ。だから…」
「…誓いの指輪ですねっ」
 また強く抱きしめられちゃった。
 しょ、しょうがないわね…でも、こんなに喜んでもらえたなら、いいか。
「ティナさん、その…もう一つ、ほしいものがあるんですけど…」
「…へ、あによ?」
 見つめられちゃうけど…何かしらね?
 あたしで何とかなるものなら、何とかしたいけど…。
「はい…ティナの全てを、私にください」
「…んなっ?」
 その直後、あたしの口は彼女の唇でふさがれてしまった。

 …えっと、あたしがおいしかったかとかそんな恥ずかしくて言えないことは置いといて、一応ケーキも食べてもらえたわよ?
 べた褒めされたけど、それはお世辞よね…喜んでもらえたならほっとしたけど。


    -fin-

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