〜Happy birthday〜

 もうすぐあの日がやってくる。
 あたしには、その日までにやっておきたいことがあった。
 二つはもう済ませたんだけど、問題はあと一つ。
「えっと、ねころ姉さんにちょっとお願いしたいことがあるんだけど…」
「はい、ティナさん、どうかなさいましたか?」
「ちょっと、教えてもらいたいことがあって…」
 にわか仕込みで間に合えばいいんだけど…。

「ティナさん、最近帰りが遅いですけど、どこ行ってるんですか?」
 夜、あたしの生活してる学園の学生寮の一室に戻ると、そこにはすでに一人の少女の姿があった。
 彼女は九条閃那といい、未来からやってきた叡那さんとエリスさんの子供で、そして…あたしの恋人でもある。
「べっ、別に何でもないわよっ?」
「本当ですか? それなら、明日は私もご一緒していいですか?」
「そ、それはダメよ」
 今やってることは彼女には秘密…ねころ姉さんとかにも口止めしてる。
「そんな…」
 悲しげな顔をされるとこっちもつらくなるけど…。
「も、もうちょっとしたら解ることだから、ね?」
 今のあたしにはそう言うことしかできなかった。

 で、今日は十二月二十四日。
 学校ももう冬休み…気持ちよさそうに眠ってる閃那を残してあたしは出かける。
「あの、ねころもお手伝いいたしましょうか…?」
「いや、いいわよ。これだけは、あたしが作りたいから」
 でも、やっぱりなかなかうまくいかなくって、納得のいくものができたときにはもう夜になっちゃってた。
「…って、やばっ、もうこんな時間っ?」
 あたしは慌てて学生寮に向かうのだった。

 学生寮へ戻ってこれたのは、もう日付が変わる直前。
「ご、ごめん、遅くなって…ただいまっ」
 慌てて部屋に入るあたしだけど…中は真っ暗?
 でも、誰もいないってわけじゃなくって…。
「せ、閃那…?」
 明かりをつけると、彼女は膝を抱えてた…明らかにいじけてる感じ。
「ティナさんのバカ…もう二十四日が終わっちゃうじゃないですか…」
 …えっ、閃那ってもしかしてクリスマスとか気にしてた?
 叡那さんもねころ姉さんも気にしてなかったし、あたしもあんな関係ない宗教の行事がさらにミーハーになったやつなんてどうでもいいって考えてたんだけど…しまったわね。
「せ、閃那、聞いて?」
「…知りませんっ」
 うっ、背中を向けられてしまった。
 そんなことしてる間に、日付は二十五日になっちゃう。

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