―そうして迎えた七月七日。
 七夕は本来の暦で行わねば意味が薄いとはいったものの、一般の人にはこの日のほうがなじみがあるでしょうから、日の沈む頃に形式的な儀式を行い、それから家へ入る。
 その一室には私やねころ、ヘキサさんなどが作った料理、シャルトさんのケーキなどが並べられていて、それを囲むかたちで、閃那などはきていないもののそれでも見知った皆が集まっている。
「え、えっと、今日は私のために、わざわざありがと…」
 その中で照れた様子で顔を赤くしている少女がエリス…そう、これは彼女の誕生日を祝う集まり。
 顔を赤らめたまま、ケーキに立てられた蝋燭の火を吹き消す彼女に皆で拍手…こういうのも、悪くないか。
「誕生日おめでとう、エリス。では、私から贈り物を渡しましょう」
「えっ、叡那からプレゼント? な、何かな?」
 とても期待をされているけれど、大丈夫かしら…こちらが不安になるけれど、その様なことを思っても仕方がないので、用意したものを手にする。
「ええ、一つは私が著した魔導書を。エリスには簡単すぎるかもしれないけれど、少しでも役に立てば幸い」
 少し厚めの書籍を手渡した。
「えっ、叡那が書いたのっ? す、すごいけど『一つは』って…もしかして、まだあるの?」
「ええ、もう一つは、これを…」
 どちらかといえば、こちらのほうが不安か…全く解らない分野だけに的外れなものなのではないか、と。
 そうして次に私が手渡したのは、小さめな二枚の紙。
「エリスはこうしたものに興味があるみたいだから、声優のかたがたのコンサートチケットを用意してみたのだけれど…」
 そう、こちらはあの日の閃那の意見を参考にしたものなのだけれど、どうなのかしら…。
「えっ、こ、これって今売り出し中のかな様とアサミーナのユニットのライブチケットじゃないっ。しかも二枚ってことは…叡那も一緒に行ってくれるのっ?」
「え、ええ、エリスが望むならばそれもよいし、他の人と行っても…」
「そんなの、叡那と一緒に行くに決まってるでしょ。ありがとっ」
 と、エリスはそのまま私に抱きついてきてしまった。
 全く、皆の前であるというのに、仕方のないこと…私はそんな彼女をやさしく抱きとめた。
 でも、ここまで喜んでもらえて、本当によかった…後で、閃那には礼を言わねばならないわね。


    -fin-

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